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常識破りの長射程、精密射撃で飛躍的に伸びた中距離ミサイル装備で、米陸軍は敵侵攻を食い止める抑止効果も狙う。統合武器作戦構想の一環となる。この実現を可能にしたのがロシアのINF破りという皮肉な事実。



ロッキード・マーチン(NYSE: LMT)は、陸軍の精密打撃ミサイル(PrSM)となる次世代長距離ミサイルの試射にニューメキシコ州ホワイトサンズ・ミサイル発射場で成功した。

Lockheed Martin

 

 

 

 

「米陸軍ミサイルの長期目標は海上、陸上を問わず全ドメインでの攻撃能力の実現であり、PrSMがその答えだ」

 

陸軍は、アリゾナ砂漠で行われた戦闘ネットワーク実験「プロジェクト・コンバージェンス21」で新型精密打撃ミサイルPrecision Strike Missile (PrSM)を試射し、マルチドメイン対応可能兵器の確立への取り組みを進めた。今年初めの実験で射程の新記録を樹立したPrSMは、陸上・海上の目標を破壊できる長距離精密攻撃兵器として構想されたものであり、アリゾナ州ユマ試験場での実験ではこの機能が評価された。

 

精密打撃ミサイル(PrSM) 

PrSMは、バンデンバーグ宇宙空軍基地(カリフォルニア州)での試射で新記録を更新した。同ミサイルは、敵の地上施設、防空施設、指揮統制機能、さらに移動目標へ新たな有効範囲と精度をもたらして地上戦のパラダイムを一変させる効果をねらう。

 

当初は、敵を「アウトレンジ」し、前例のない距離で敵を破壊する陸上攻撃兵器として構想されたが、PrSMは、陸上発射で敵水上艦艇への海上攻撃システムとしても重要となってきた。

 

「陸軍の長期的なミサイル・ソリューションは、海上陸上を含むすべての領域を攻撃することであり、PrSMはそのためのもの」(陸軍将来コマンド、長距離精密火力機能横断チームのジョン・ラファティ准将Brig. Gen. John Rafferty

 

PrSMメーカーのロッキード・マーチンは、バンデンバーグでの試射で400km以上と従来の射程距離を超えたとの声明をThe National Interestに伝えてきた。現在同兵器は2023年の配備に向け試験・開発段階にある。

 

「将来的には、発射装置をさらに多く導入し、拡大したい。そして、ネットワークをどこまで広げられるか。発射装置をどこまで増やせるか?センサーをどこまで増やせるか?いずれ上限が見えてくるとしても上限はどこにあるのか?そして、紛争が絶えない環境下で機能するのか」と米陸軍未来コマンドのジョン・マーレイ大将Gen. John Murrayは、Warrior誌に語っている。

 

マルチドメインネットワーク技術の向上と強化が進めば、ロシアのINF条約違反で誕生したPrSMに新たな用途と標的対象の可能性を、陸軍が見つけていくだろう。

 

中距離ミサイルを制限していたINF条約にロシアが違反したのを受け、米軍は長射程攻撃可能な地上発射型兵器の試験・開発を重ねてきた。

 

 

PrSMは、ロシアの違反行為により中距離核戦力条約(INF条約)が破棄されたことを受け、従来の射程制限を超える取り組みとマレー大将は指摘する。約500キロ射程の兵器は中距離攻撃用で、米同盟国多数が存在するヨーロッパ大陸などで特に重要な意味を持つ。敵の攻撃や反撃のリスクを抑えつつ、敵の接近を抑止することが、同ミサイルの戦略的意図だ。

 

陸軍の長距離精密射撃技術は戦闘戦術や戦略に変化をもたらしており、新世代の大国の脅威に対応するべく新しい統合武器作戦Combined Arms Maneuverの構築が急がれている。

 

前例を超える射程と進化 

精密打撃ミサイル(PrSM)は、前例のない射程距離を達成し、新しい精密誘導シーカー技術によって、障壁を打ち破っている。攻撃範囲における画期的なデモンストレーションに新たな誘導方式と精密照準が加わることで、敵の防空施設、施設、さらには移動標的への長距離攻撃でパラダイムの変化が実現する。

 

今年初め、陸軍副参謀長ジョセフ・マーティン大将Gen. Joseph Martinは、陸軍がPrSM用の新しい「シーカー」技術を開発していると述べており、陸軍はジェネラル・アトミックス・エレクトロマグネティック・システムズ(GA-EMS)にデジタル誘導ミサイルDigital Guided Missile(DGM)システムのコンセプトプロトタイプの設計、製造、試験を委託している。

 

同コンセプトは、陸軍のノンライン・オブ・サイトNon-Line-of-Sight (NLOS)機能のミサイルで新次元の標的捕捉能力を実現するもので、PrSMが射程の新記録を達成したことを考えると、非常に大きな意味がある。新しいレンジダイナミクスとNLOSターゲティング技術を組み合わせることで、陸軍地上部隊の標的捕捉と攻撃オプションにまったく新しい領域が生まれる。GA-EMS の DGM は、より多くの子弾を発射することで、「コストパーキル」を大幅に最適化可能となり、このコスト面での利点は、標的の自動認識能力により、殺傷力が大幅に改善され強化される。子弾は、「リフトボディに翼をつけ、さらに滑空させる」ことで、PrSMの射程を超える機動性をめざす設計と、開発者は説明している。

 

将来型垂直上昇機と次世代戦闘機

デジタル誘導弾システムの最初の用途はPrSMの改良だが、陸軍と業界では、陸軍がめざす将来型垂直上昇機および次世代戦闘機プログラムでの使用など、さらなる用途の可能性を想定している。

 

GA-EMS社は、デジタル誘導弾システムを、プラットフォーム間で容易に移行でき、必要に応じてアップグレード可能とする技術標準で構築しているようだ。理由の1つとして、GA-EMSが自社資金で研究開発とデジタルエンジニアリングミサイルの設計をすすめていることがある。

 

GA-EMS社長スコット・フォーニーScott Forneyは、同社声明文で以下述べている。「当社には10年以上にわたる各軍向け極超音速兵器技術の開発、発展の実績があります。当社は、検証済みモデリングとシミュレーションのインフラストラクチャに基づくデジタルモデルでミサイルを開発しています」

 

PrSMはGPSと慣性計測技術を利用しているが、照準精度、誘導、データリンク通信、"ハードニング "に関する各種革新的技術が裏にあることは確実だ。このため、陸軍がGA-EMSの技術に注目し誘導ネットワークのハード化を図り、さらにGPSを使わず妨害を受けにくい標的捕捉技術を模索していても不思議ではない。

 

今年初めに行われたPrSMに関する議論で、ラフェティ准将は、長距離攻撃兵器は実際に、統合武器作戦の高度化に役立つとWarriorに説明している。

 

「長距離射撃で、敵の統合防空網を制圧・無力化し、統合兵器の機動力を発揮できる。統合武器体系は、敵に接近し破壊することを可能にできる。そのためには、装甲車、歩兵、戦闘航空隊が同期して協力することが必要となる。同期できないと、攻撃効果ははるかに少なくなってしまう。敵に大射程距離があれば、こちらの複合武器チームが分断される。敵はわが方を見て、戦い方を学んできた。彼らは我々の優位性を相殺できる分野に投資してきた」とラファティ准将は語っている。■

 

 

New Army Precision Strike Missile to Attack Enemy Ships at Sea, Achieves Breakthrough Range - Warrior Maven: Military and defense news

UPDATED:DEC 16, 2021ORIGINAL:DEC 16, 2021

KRIS OSBORN, WARRIOR MAVEN


 

 

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest and President of Warrior Maven -the Center for Military Modernization. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.


 

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