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クアッドは軍事同盟のみの存在ではない。中国の技術覇権に対抗すべく、今や単独では中国の後塵を拝する米国が各国と組んで技術戦略を展開するしくみづくりへ。

 

 

 

 

iStock illustration

 

 

戦布告なき技術戦争が米国と中国の間で始まっており、米国の懸念事項は多い。重要分野で米国側の手詰まり状態がある。

 

 

米国に挑戦する中国は産業諜報活動に長け、数十億ドル相当の知的財産を盗み出している。中国は統制経済と長期展望での技術開発を目指している。予算の遅れや意見の相違に煩わされることはない。また限界がないほどの資金を新技術につぎ込み、軍用化を目指しており、強い経済で優位に立っている。

 

ただし、中国にないものが米国に豊富にある。同盟国、友邦国の多さだ。米軍首脳部はよく米国単独で戦争開始することはないと発言している。

 

今回は軍事研究開発部門でも同じ方法論を採用すべきとの論調で記事をまとめた。同盟各国との共同作業で先端技術を開発委s中国が目標とするインド太平洋での覇権確保を阻止するのである。

 

防衛問題を扱うのが本誌の趣旨だが、中国への対抗を軍事技術のみで捉えるのは近視眼的だ。中国は民生技術、軍民両用技術の数々を開発し、戦場と商業の双方を制するのが目的と明言しており、世界各国の指導層、民間産業が米国を見限り、どの同盟国とたもとを分かつことを狙っている。

 

これまで米中競合関係は分野別に見てきた。海洋技術、人工知能、極超音速技術、戦略鉱物資源などだ。今回は「クアッド」加盟国が軍事研究開発アライアンスに発展する可能性に着眼し、中国の豊かな人的資源に対抗できるか検証する。

 

日米豪印戦略対話の四か国は共通の権益つまり「自由で開かれたインド太平洋という共通ビジョン」のもと結集している。四か国は「クアッドプラス」と呼ぶヴェトナム、ニュージーランド、南朝鮮も加え、9月にワシントンDCで会談した。

 

共同声明で四か国の目指す技術協力の行動予定が示された。クアッドが目指す第一の分野としてCOVID-19ワクチン生産の新規製造拠点をインドに

設ける。次に四各国はクリーンエナジーの実現で協力する。また、半導体含む重要技術や原材料のサプライチェーンを確立する。また重要技術向けで復元力にあふれ、安全なサプライチェーンを確保し、政府による支援策、政策の重要性にかんがみ、透明性と市場重視を貫く、と声明文にある。

 

その他の技術協力の分野として宇宙空間の持続的利用や衛星を介したリモートセンシングを気候変動の監視に応用することがある。

 

また、中国を意識したクアッドは5G通信技術の応用推進を前面に押し出し、中国企業の独占状態を打破する。また四か国はサイバーセキュリティ分野での協力を確認した。

 

クアッドでは「人材確保の戦い」への関与を目指し、理学、工学、数学の理系学卒者100名に研究職を与える。

 

また、さらなる技術協力の枠組みも作った。クアッド原則を技術、設計、開発、ガバナンス、利用に関し制定し、対象各国のみならず世界規模での応用を通じ、責任ある、開かれた、高度のイノベーションを実現すると声明文にある。

 

一方で2021年に中国の研究開発支出が米国を上回る予想がある。中国は2021年に6215億ドルを研究開発に投じ、次世代の経済社会の実現を目指しているが米国は5987億ドルで二位となると調査会社Statistaは見ている。

 

ただし、クアッド加盟国をここに加えると、合計額は中国を上回る。

 

その他インド太平洋諸国の台湾、南朝鮮、カナダ等が中国との競合を強く意識しているため、中国には不利な状況に見える。ただしこの構図は実際には単純でなく、各国とも中国と交易関係があり、中国は各国に投資活動を展開している。米国も例外ではない。

 

また落とし穴になりそうな側面もある。クアッド四か国それぞれに官僚組織や政策があり、国際協力に抵抗する場面が想定される。特に機微情報の共有への反対が出よう。例えば米国は武器国際取引規制を厳しく適用しているため、多国間あるいは合同による事業の支障になりそうだ。

 

四か国はすべて自国経済の構築と自国民の雇用機会創出を目指している。例としてオーストラリアは国内防衛産業を整備することで米国等外国との提携への依存を減らそうとしている。

 

日本は民生技術イノベーションで世界のリーダーの座を1980年代は守っていたが、今は二十年間に及ぶ不況を脱しようと懸命だ。昨今の政策方針の変更で日本は世界的な兵器市場に参入することが可能となった。

 

インドは国境線をめぐり実際に中国と対立する唯一の存在で、軍事技術の向上を目指すものの、冷戦時のロシア製装備の全廃に踏み切っておらず、米国との間でリスク要因になっている。

 

中国にも同盟関係はある。一帯一路政策で開発途上国を巻き込み、重要な天然資源もあわせ自国の影響下に置こうとしている。さらに独占供給状態を作り、他国を中国サプライチェーンに依存させようとしている。

 

クアッド加盟国が知恵を合わせ結果を出せればいい。新型ジェットエンジンが例となる。だが中国が世界のコバルト供給を独占すれば思惑通りに進めなくなる。

 

今回の特別記事の論点はクアッド加盟国でどんな協力分野があるのか、また乗り越えるべき障壁は何かにハイライトをあてる。また米国防産業から残る三国に何が提供できるかも探る。

 

技術戦争の勝者が戦場のみならずこれからの経済も支配することになるだけに大きなリスクが潜んでいるのである。■

 

Part 2: U.S., Japan Set to Enhance Cooperation on Military R&D

Part 3 - India Manages Diverse Arms Sources for Military Modernization

Part 4: to come

Topics: Global Defense Market

 

The Quad: Creating a Defense Tech Alliance to Stand Against China

By Stew Magnuson

12/7/2021



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