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米海兵隊・海軍の対中戦略は「スタンドイン」で、第一列島線からの撤退を拒否。中国をじわじわと苦しめる「潰瘍」戦術を展開する。ホームズ教授の解説。

  

イヴィッド・バーガー大将David Bergerが目指すのは習近平に潰瘍の苦しみを与えることだ。今月初めに米海兵隊総監のバーガーがサインしたのが「スタンドイン部隊構想」Concept for Stand-in Forcesで戦略指針として小規模海兵部隊をアジアの第一列島線沿いに展開し、米海軍と連携し、中国の人民解放軍海軍(PLAN)を苦しめようという構想で、東シナ海、台湾海峡、南シナ海での実施を目指す。

 

同構想は、米中戦略競争の武力論争における声明文としてとらえてみよう。戦略的競合では、各競争相手が軍事装備を開発し、誇示することで、有事に自国が勝者になると納得させようとするものである。

 

成功した側は敵対勢力を抑止または強要し、敵対勢力の同盟国協力国を説得して、敗北が明らかな大義を捨てさせ、同盟者協力国を説得し、勝利が明らかな大義の側に集結させる。

 

中国は米中間の競争で先行し、接近阻止領域拒否構想(A2/D2)を開発し、実現のため軍備を整備してきた。これが軍事論争におけるPLAの冒頭陳述だ。すなわち、PLAロケット部隊、航空部隊、艦艇は、前方展開する米軍を開戦時に打撃し、米本土から太平洋を西進する援軍の合流を阻止するはずだ。

 

その過程で、PLAは台湾を制圧するなど、他国が武力介入できないうちに目的を果たす時間を稼げる。そして、米軍は一時期、A2/ADの前提、有事に地域から撤退し、再び戦場に戻るという構想を受け入れていたようである。ペンタゴンで短命に終わった「エアシーバトル」構想も、この考え方に基づくものであったようだ。

 

ただし、第二次世界大戦の再演は中国に狙い通りの時間を与えることになる。日本軍による真珠湾攻撃から東京湾の戦艦ミズーリでの降伏式典まで4年近くが経過した。台湾、日本、その他中国のライバル国が、アメリカの援助なしに長く持ちこたえられる可能性はほとんどないといってよい。

 

戦力を温存すべく西太平洋から撤退すれば降伏に等しい。それゆえ、米海兵隊は近年、A2/ADに対抗し地域にとどまり、中国を阻止する方法を探求している。海兵隊・海軍は、艦隊と地上軍を小規模、安価で、より多くの部隊に分割し、新技術を装備し、威力を維持しようとしている。

 

海軍は、小型戦闘艦の大群を「分散」して戦わせ、また宇宙空間でも分散させアクセス拒否の矛先を回避しようとする。艦隊の戦闘力では、艦隊は戦闘で損失を出しても、勝利のために戦い続ける戦闘力を保持することができる。

 

結局、ここにポイントがある。

海兵隊も同じく部隊を分割して、ミサイルや高度なセンサーを装備した、軽量かつ高機動編成を実現したいとする。小型水陸両用艦は、必要に応じ部隊を島から島へ移動させる。偵察と反撃で艦隊を助けつつ、一撃を加える能力も備えている。

 

要するに、力づくで状態を変えようとする中国に対抗するため海軍部隊が近海で作戦を展開し、遠隔地に撤退することはない。近海作戦部隊と関連する一連の作戦構想により海軍海兵隊は、PLAのA2/ADへ反撃を加える。

 

この手法にはナポレオン戦争時の英陸軍と英海軍に先例がある。1807年、アーサー・ウェルズリー卿(後のウェリントン卿)は、小部隊軍隊を率いポルトガルに上陸した。その後7年にわたり、ウェリントン軍は海から支援を受けながら、ポルトガルやスペインのパルチザンとともに戦った。

 

同盟国側の目的はフランスを苦しめることにあったが、遠征に明確な目的はなかった。ロンドン当局は、ウェリントンに一定の資源を与え、騒乱の種をまくため送り出したのである。ナポレオンは、フランスの東側で大規模戦闘が進行中で、西側で戦争する気はさらさらなかったが、イベリア半島での脅威を容認せざるを得なかった。

 

そこにポイントがあった。

イベリア半島の作戦は、ナポレオンの主要な関心領域から兵力を吸い上げると同時に、重要事項からナポレオンの注意をそらす効果を生んだ。海事史家のジュリアン・コーベットJulian Corbettは、この戦争形態を「偶発性に限定された戦争」、つまり、特定の目的ではなく、指揮官に割り当てられた手段で支配される戦闘だとした。戦略家は目的、方法、手段の観点で通常は思考する。求められる目標により、資源の配分と使用方法が決まる。

 

実際に偶発戦争は、通常、最重要要素となる目的を戦略的定式から排除し、方法と手段を当事者にまかかせることになる。作戦や戦術で敵を苦しめればよいのである。

 

偶発戦争は、悩ましい戦略である。ナポレオンは、この解釈でコルベットを凌駕していた。小皇帝は半島戦争を 「スペインの潰瘍 」と呼んだ。潰瘍は致命的ではないが、常に悩実のタネとなる。気が散り、衰弱していく。コルベットにとって潰瘍戦略とは、「敵が我々の介入を許さず立案した戦争計画に侵入し、敵がその開始時の動きによって取り返しのつかないことになる」、つまり「敵から勝利の果実を奪うための介入」を意味する。

 

こうした戦略は、より大きな闘争の中で敵にちょっかいを出し、投入資源以上の戦果を生み、敵指導部は高い代償で対応せざるを得なくなる。この戦略は、海から遠い戦域で最も効果的に機能する。陸海空統合の「処分部隊」を展開するのだ。本隊から切り離されていても敵に損害を与えるに十分な戦力を有する水陸両用部隊を指す。

 

ナポレオンはスペイン潰瘍になった。今度は習近平が太平洋潰瘍になる番だ。■

 

The 'Ulcer' Strategy: How the US Military Could Wage War on China - 19FortyFive

DR. JAMES HOLMES: THE NAVAL DIPLOMAT

ByJames Holmes

 

Dr. James Holmes holds the J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and served on the faculty of the University of Georgia School of Public and International Affairs. A former U.S. Navy surface-warfare officer, he was the last gunnery officer in history to fire a battleship’s big guns in anger, during the first Gulf War in 1991. He earned the Naval War College Foundation Award in 1994, signifying the top graduate in his class. His books include Red Star over the Pacific, an Atlantic Monthly Best Book of 2010 and a fixture on the Navy Professional Reading List. General James Mattis deems him “troublesome.”

In this article:A2/AD, China, Concept for Stand-in Forces, featured, Ulcer Strategy, US Marines, US Navy

 


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