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日英共同での新型エンジン開発はF-Xがテンペスト開発に合流する一歩となるのか、それともF-Xは日本独自の事業として残るのか。IHIのXF9はどうなるのか。答えは来年以降に出てくるでしょう。

 

BAE SYSTEMS


今回の合意でF-Xはさらにチームテンペストに近づく効果が出そうだ。


日両国から戦闘機用エンジン試作型の共同開発構想が発表され、次世代機を英国はテンペスト、日本はF-Xとして実現を目指している。今回の合意は広範な両国間防衛関係の一環で、空対空ミサイル技術の共有も含む。


英国防省(MOD)が合意に関し詳細内容を発表しており、エンジン開発を英日防衛協力の最上段に位置付けた。試作エンジン開発は年明け早々に始まり、英側は30百万ポンドを「企画、デジタル設計、革新的製造方法の開発」に投じる。



MODによれば別途200百万ポンド(およそ266.6百万ドル)で実寸大実証用エンジンシステムを製作するとあり、ロールスロイスのフルトン工場(ブリストル市)が担当する。さらに三菱重工業(MHI)、IHIBAEシステムズもここに加わる。


エンジンの性能面で詳細発表は出ていないが、実証エンジンが試験機に搭載されるのか、地上試験専用なのかは不明だ。またテンペスト、F-X両機が計画通りの開発となり、エンジンを共通化するのかも不明だ。両機とも双発エンジン機の想定だ。

 

「日本とはウィンウィンの形で世界最高峰のエンジン技術を開発できる」と将来型戦闘航空戦力の開発を英国で統括するリチャード・バーソンRichard Berthonは述べている。「共同投資で作業することで高性能エンジンシステムを通じそれぞれの国内産業を活性化し、最先端の防衛能力を立案できる。早く作業を開始し、さらなる協力について協議したい」


今回の協力合意書で英国と日本は英国がめざす戦闘航空戦略関連のその他技術要素についても共同作業を行う。同戦略の中心が有人戦闘機テンペストだ。そのテンペスト開発チームにはイタリアの国防企業レオナルド、ヨーロッパのミサイル共同事業体MBDA、英空軍、ロールスロイスで構成している。


「英日両国の産業界で総合的に技術を応用しクリーンな次世代推進方式をそれぞれが開発する戦闘機の要求に合わせ実現していく」とロールスロイスの業務開拓部長アレックス・ジーノAlex Zinoが解説している。「共同でエンジン実証を行えば世界最高水準の航空戦力の実現につながり、革新的かつ重要なエンジン技術の開発で今後の防衛部門の航空宇宙産業の基礎が生まれるので大きな意義があります」

 

テンペスト用エンジンではロールスロイスの構想は若干ながら判明している。すでに同社技術陣は高性能エンジン技術の評価作業を開始している。これまで同社は新型エンジンについて燃焼が高温化することで高効率化を目指すと説明している。同社はレオナルドとも協力し各種センサーやエイビオニクスが出す排熱をエンジンに戻し冷却効果を実現する方法を検討している。チームテンペストは合成航空燃料により排熱温度を下げながら持続可能性を高める策も検討している。

ROLLS-ROYCE


これに対し日本では自国向け戦闘機の推進手段で課題が浮上する。MHIはX-2心神実験機を製造し次世代戦闘機技術を実証した。

 

X-2はIHIのXF5ターボファンを二基搭載し、推力11千ポンドで推力偏向機構を備え、機体操縦性能を引き上げた。F-XもIHIが開発中のXF9エンジンを採用すると見られていた。IHIがロールスロイスと進める共同開発でXF9エンジンの位置づけがはっきりしない。

 

英国はテンペスト開発を戦闘航空戦略の一環としてすすめており、20億ポンド(およそ26億ドル)を今後4年間に計上する。将来型戦闘航空システムズの実機としてはタイフーン後継機も含め2030年代中ごろの供用開始をもくろんでいる。


BAE SYSTEMS

 

今年初めに将来型戦闘航空システムズの構想評価段階が開始されており、契約規模は250百万ポンド(およそ333百万ドル)だ。テンペスト戦闘機とともに英国の目指す将来型戦闘航空システムズ(ヨーロッパで進む同名の事業と別)には無人機、センサー、兵装、高性能データシステム等を含む。


同時に日本もF-X次世代戦闘機開発を目指しており、三菱F-2後継機をほぼ同じ大日程で実現しようとしている。


新型戦闘機の開発は相当の作業量となり、英国、日本が単独で開発できるのか疑問を呈する向きがあった。このことを念頭に技術産業力を両国が共有するのは健全な方向に写る。


日英両国でそれぞれの新型戦闘機用のエンジン開発を開始するというのはより広範な両国間の防衛協力につながる。英国は防衛戦略の軸足をアジア太平洋に大きく切り替えようとしており、中国の領土拡張、軍事力増強の野望に警戒心を隠していない。


「両国間協力をインド太平洋に広げるのが戦略上で優先事項となり、日本はアジアで最大の安全保障上のパートナーとなる」とベン・ウォーレスBen Wallace英国防相がエンジン関連合意に関し声明文を発表している。

 

「日本国内で技術開発が相当進んでおり、我が国の技術を応用すれば両国の防衛力は革新的な技術で前面に立てる」と英国防調達相ジェレミー・クインJeremy Quinもコメントを出した。


英日防衛協力拡大は今年初めに公表された国防衛政策ペーパーで概略が述べられている。その後、英海軍旗艦HMSクイーン・エリザベスが空母打撃群21(CSG21)としてアジア太平洋に展開し、日本とも共同行動をとった。


英国は10月に日本と円滑化協定(相互アクセス協定、RAA)の締結に向け協議開始に合意し、両国間の防衛関係の深化をめざす。


将来の航空戦闘技術面での二国間協力に関連し、日本がめざす共同新型空対空ミサイルJNAAMの実現に英MODが支援している。同ミサイルは英国の保有するMBDAミーテイア視界外空対空ミサイル(BVRAAM) 技術に日本が開発した高性能無線周波数(RF)応用のシーカーを組み合わせるものだ。


日本以外にも英国はチームテンペストに加わる国を模索している。これまで合意所はイタリア、スウェーデンと取り交わしており、将来型戦闘航空システムズ関連技術の協力をめざす。


これまで英国主導、フランス‐ドイツ‐スペインがめざす時期戦闘航空機開発が合体するとの観測があった。

 

「両事業が一つになるのが自然だろう」とイタリア空軍参謀総長ルカ・ゴレッティ大将General Luca Gorettiが同国議会で発言している。「巨額を投じる事業が二つ同時に存在するほうが不自然だ」

だが、英国で将来型戦闘航空事業を担当するジョニー・モレトン空軍准将は「仏独西事業の将来型戦闘航空システムズ事業に加わることは絶対にない」と断言している。


日本にはテンペストとF-Xでエンジン以外に「空気取り入れ口周りや排気口付近」でも共用化を進めるとの報道が出ており、ともにステルス効果の最適化に不可欠な要素だ。

 

最終的にはF-Xが英主導のテンペストに合体することも考えられなくもない。日本からはMHIを主契約企業としてF-Xを進めると発表しているが、同時に海外パートナー一社が加わっている。そのパートナー企業が英企業なのか米企業なのかにより、関与する分野がエンジン以外にも広がりそうだ。


新型エンジンについて不明な点が残るが、日本はテンペストのパートナーとしてさらに踏み込む姿勢であることは確かなようだ。■



United Kingdom Details Plans To Build Future Fighter Jet Engine With Japan

BY THOMAS NEWDICK DECEMBER 22, 2021



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