2021年の米海軍は再び多方面作戦のバランス確保に努め、アフガニスタン撤退の一方でインド太平洋地区の重視を強めた。
米同盟国複数が今年は艦艇をインド太平洋へ派遣し、米艦艇は各地で演習を展開できた。
中東へは米海軍艦艇を派遣が続いたが、ここ数年で初めて航空母艦を一隻も米中央軍隷下に派遣しなかった。
今年は新型CMV-22Bオスプレイ艦載輸送機、F-35CライトニングII共用打撃戦闘機が海軍で初めて配備された年にもなった。
COVID-19ワクチンにより艦艇乗員の配転前制限が緩和されたり、寄港が以前のように復活した。また旧USSホンノムリシャー(LHD-6)の艦内火災事故の後処理ならびに海軍工廠での補修作業の積み残しが顕在化した都市にもなった。
インド太平洋方面
インド太平洋では空母プレゼンスを維持した。バイデン政権誕生で同地域と太平洋への重視が続くことが明らかになった。
USSセオドア・ローズヴェルト(CVN-71)は今年二回の出動となり、年初数カ月はインド太平洋司令部隷下で各地に展開した。
セオドア・ローズヴェルト空母打撃群がマキンアイランド揚陸即応群と南シナ海を航行した。April 9, 2021. US Navy Photo
4月にTR空母打撃群はマキンアイランド揚陸即応群と南シナ海とフィリピンで演習を展開した。その時点で中国海上民兵舟艇がフィリピンのウィットサン礁付近に集結し、ペンタゴンが懸念を表明していた。その後6月にフィリピンは米国との相互防衛条約破棄の作業を中断した。
他方で米海軍は台湾海峡航行をほぼ毎月行ってきた。中国はこれに対し抗議している。航行を繰り返すことで米国は台湾と中国の緊張激化への懸念を示しており、中国は台湾防空識別圏へ繰り返し侵入した。
海軍は南シナ海でも航行の自由作戦を数回にわたり実施した。
日本へ前方配備中のUSSロナルド・レーガン(CVN-76)は2021年春季パトロールでインド太平洋に出動し、その後中東方面に進出した。
8月からカール・ヴィンソン空母打撃群がインド太平洋で活動を展開し、海上自衛隊や英海軍空母打撃群21、ドイツ海軍、オーストラリア海軍との共同訓練を行った。
ヴィンソンCSGでは海軍最高戦力の航空団を展開し、第五世代F-35Cと新型CMV-22Bオスプレイがともに供用開始された。
中東方面
ニミッツ空母打撃群が今年初めに北アラビア海に展開し、同部隊の展開は終了する予定だった。米国とイランの緊張は二年越しで高いままとなっている。当初、同艦は帰国予定だったが、ペンタゴンはイランのイスラム革命防衛隊クッズ部隊司令カセム・スレイマニ殺害の一周年を警戒し、USSニミッツ(CVN-68) を1月いっぱい同地に残すこととした。
ニミッツが1月末に同地を去ると、マキンアイランド揚陸即応群がペルシア湾に入り、中央軍隷下で次の空母が到着するまで任務に就いた。
ドワイト・D・アイゼンハワー空母打撃群がその後中央軍に派遣されたが、同艦及び護衛部隊USSヴェラ・ガルフ(CG-72)が同年中に二回展開されたのは空母部隊に負担をかけざるを得ない海軍の実情を示している。
アイゼンハワーは2月に展開に出動し、乗組員はCOVID-19ワクチン接種を受け手からノーフォーク軍港を出港した。同じ頃、配備前の乗組員への新しいガイダンスとしてワクチンの入手可能性を考慮した。当時、海軍は、配備前乗組員のCOVID-19感染防止として、バブル方式と移動制限(ROM)を実施していた。しかし、2月のガイダンスでワクチン接種済み乗組員は、配備前2週間はホテルなど外部施設ではなく、自宅滞在が可能になった。
アイクは6月末まで中東地区に残り、ロナルド・レーガン空母打撃群の到着を待った。レーガンCSGがアフガニスタン撤退の支援にあたり、日本配備の空母が中東に展開したのは2003年USSキティ・ホーク (CV-63) がイラク侵攻支援についた時以来だ。
夏にはイオージマ揚陸即応群も中央軍隷下に入り、アフガニスタンからの米軍撤退を支援した。
撤退作戦が8月末に終了するとレーガンは中央軍から離れ、中東でほぼ3カ月展開した。イオージマも9月に同地を離れた。その後、エセックス揚陸即応群が中東に残っている。
大西洋方面
USS ザサリバンズ (DDG-68) はCSG21を離れ帰国の途についた。October 19, 2021. Royal Navy Photo
今年は英海軍の新鋭空母HMSクイーン・エリザベス (R08)が初の作戦展開をし、多国間空母打撃群となり、米海軍は駆逐艦USSザサリバンズ (DDG-68)、オランダはフリゲート艦HNLMSエヴァーツェンン(F805)を派遣した。
5月に英CSG21は北大西洋でイオージマARGと演習を展開し、その他NATO加盟国も加わった。
同じ5月にNATO加盟国はSteadfast Defender 2021演習の第一段階を大西洋で展開した。
米海軍は Large Scale Exercise 2021大規模演習を展開し、大西洋から太平洋にわたり、作戦構想の点検を各地で同時進行で行った。同演習は二週間にわたり、USSキアサージ(LHD-3)が大西洋上でUSSゴンザレス(DDG-66)への燃料補給を試行した。
艦艇の補修関連
ボンノムリシャーの艦体が解体工事のためテキサス州ブラウンズビルへ曳航された。Screenshot of YouTube video from May 31, 2021
海軍は2020年7月発生した旧USSボノムリシャー (LHD-6)の後処理に追われた。同艦は2021年初頭に除籍されテキサス企業にスクラップとして売却された。
同艦で火災が発生した時点で同艦はサンディエゴ海軍基地で保守整備作業の最終段階にあり、F-35BライトニングII共用打撃戦闘機運用に向け改修中だった。
7月に水兵見習いライアン・メイズRyan Maysが起訴され、事故当時同艦でメイズは放火により艦を危機に陥れたとされた。同名の第32条による聴聞会が先週介され、米第三艦隊司令スティーブン・コーヒア大将Adm. Stephen Koehlerが今後の審理を決定する。
整備作業で入港中の誘導ミサイル巡洋艦USSゲティスバーグ(CG-64)でも7月に火災事故が発生した。ヴァージニア州ノーフォークのBAEシステムズ修理施設で小規模の火災事故が発生した。修理中の艦艇では高温作業や溶接作業のため艦内火災が発生するリスクが高い。
こうした火災事故は海軍にとって新しい事案ではなく、今月初め海軍海上システムズ本部(NAVSEA)が艦内火災安全策確立グループIndustrial Fire Safety Assurance Group (IFSAG)を発足しており、艦艇整備中、建造中の火災事故防止をめざす。
USS コネティカット (SSN-22)はサンディエゴを出港した。 Dec. 15, 2021. San Diego WebCam Photo
他方でシーウルフ級攻撃型潜水艦USSコネティカット(SSN-722)が海図にない海嶺に南シナ海で衝突した事故が10月に発生し、海軍の保守整備部門にさらにストレスが加わっている。衝突でバラストタンクおよび艦首部分が損傷を受けた。
同艦は今週はじめに母港ブレマートン(ワシントン州)に帰還しており、同地で修理を受ける。だが海軍管理下の施設では潜水艦向け作業の日程が多数たまっており、研究開発調達担当の海軍次官補代理は議会にて1同艦を海軍施設で修理すると他の作業に影響が出ると0月に発言している。
艦艇修理の作業残には議会筋も関心を示しており、海軍策定の海軍工廠近代化20年計画への影響を危惧している。これに対しNAVSEAを率いるビル・ガリニス中将Vice Adm. Bill Galinisは施設インフラ最適化計画Shipyard Infrastructure Optimization Plan (SIOP) を10年から15年に加速化できないか検討中と述べていた。
Top Stories 2021: US Navy Operations - USNI News
December 23, 2021 10:06 AM
About Mallory Shelbourne
Mallory Shelbourne is a reporter for USNI News. She previously covered the Navy for Inside Defense and reported on politics for The Hill.
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