ホームズ教授の講義ですが、随所にあれと思う点があるのはエッセイが出たのが前の北京オリンピックのころのためです。そして時が巡り再び北京で冬季オリンピックが開かれる2022年ですでに中国海軍は規模の点で米海軍を追い越しており、変化があまりにも激しいのが気になります。
Naval History and Heritage Command
海洋戦略思想家アルフレッド・セイヤー・マハン Alfred Thayer Mahan が死去し久しいが、今日でも世界を引き続き形成しているのがその根本思想だ。ただし、本人の予想と異なる形で影響を与えている。19世紀末のアメリカによるアジア進出を推進し、近代アメリカ海軍の祖の一人であるマハンの理論は、著作『The Influence of Sea Power upon History』や『The Problem of Asia』が伝えているが、中国などアジアの台頭で逆にアメリカが被害を被る可能性もある。
中国海軍にマハン思想が根付き、東アジアで米国の安全保障上の利益が損なわれる前に、ワシントンは北京と海洋戦略の議論を今すぐ始めるべきだ。
著者はこの問題を自ら体験した。北京でフォード財団主催の「シーレーン安全保障」会議で論文発表したが、中国のパネリストたちは数え切れないほどマハンに言及していた。また、必ずと言っていいほど、マハンの教えの中で最も好戦的に聞こえる、海上大規模交戦の想定を引用していた。
マハンの言う「海上指揮」とは、「敵の旗を追い払うか、逃亡させる海上での威圧的な武力」であり、「敵沿岸を往来する商業航路を閉鎖すること」だと中国側は指摘した。装甲戦艦は、この「威圧的な力」を具現化した。この力は、ライバル海洋国家の海軍を粉砕し、戦略的水路の支配権を奪うために使うべきだとマハンは暗示していた。
中国の経済力、軍事力が高まる中で、こうした思考は、南シナ海や台湾海峡など戦略的水路多数がある東アジアで緊張を煽りかねない。第一次世界大戦以前にも、新興ドイツが大英帝国にシーレーンの支配と帝国の「有利な地位」に挑戦したことがあった。
マハン理論は、世界大戦の勃発に間接的に貢献した。同様に、今日の中国の戦略家に武力行使を選択させている可能性もある。
影響力を及ぼすドイツ人ではカイザー・ヴィルヘルム2世、アルフレッド・フォン・ティルピッツ提督、そしてドイツ各大学の「艦隊教授」が、強力な戦闘艦隊整備を正当化するべくマハン理論を取り上げた。「私は今、マハン大佐の著作を単に読むのではなく、むさぼるように目を通し、暗記しようとしている」と、カイザーが言い放っていた。「この本は帝国海軍の全艦に導入し、艦長や士官が常に引用している」。
ドイツにとって困ったことに、ドイツ北部の港と大西洋を結ぶ「狭い海」、さらに1880年代から1890年代にかけ獲得したささやかな帝国にイギリス海軍が立ちふさがっていた。そこでドイツの海軍戦略は海上貿易に依存する島国であり、海上支配権を軽々に譲れないイギリスへの海軍戦略として戦艦建造を進めた。
英独海軍の軍拡競争は避けるべきだった。両国は友好関係を長く維持し、その海洋上の権益はほぼ一致していた。もしドイツがアフリカやアジアへのアクセスを確保しようと思えば、シーレーン警備に適した長距離軽武装の巡洋艦を大量建造したはずだ。これに対し、戦艦は燃料補給に縛られ、ドイツから遠く離れ活動できない。イギリスにとってドイツ戦闘艦隊は脅威にしか映らなかった。
そこで現在だ。今のところ、中国の戦略家がマハンをどう解釈したところで変わりは皆無に近い。中国は経済発展に夢中で、石油や原材料の自由な流れを危うくしたくないはずだ。中国の商船隊は急増し、新しい造船所が何十カ所も建設されている中で、海軍の拡張はこれからだ。
だがこれは変わる。中国の経済成長は、帝政ドイツの経済成長が海軍整備を支えたように、強力な海軍を構築するだけの資源を供給し始めている。中国の海軍士官が今日、海洋戦略についてどのように考えているかによって、中国海軍の戦略が形成される。マハンの弟子たちは、アメリカの「脅威」に対抗するべく強力な海軍の建造を選択するかもしれない。
北京が帝政ドイツの破滅を繰り返さないためにも、ワシントンは以下のポイント3点を指摘する必要がある。第一に、西側の海洋戦略はマハンから自由になっている。つまり、北京は中国の裏庭での米海軍作戦を過度に心配する必要はない。第二に、終末論的な艦隊交戦と同様に平和的な通商を強調したマハンを、つまみ食いで読むのは危険である。
最後に、米中両国は、東アジア全域の海上貿易を脅かす海賊やテロなどの脅威の排除で利益を共有する。不必要な海軍の軍拡競争に乗り出すのではなく、海洋国家たる両国は共通の利益のため協力すべきなのである。■
Is Alfred Thayer Mahan Driving Today's US-China Naval Interactions? | The National Interest
by James Holmes
December 18, 2021 Topic: Chinese Navy Blog Brand: The Reboot Tags: ChinaChinese NavyU.S. NavyAlfred Thayer MahanMilitary
James Holmes is a senior research associate at the University of Georgia Center for International Trade and Security and an adjunct professor of strategy at the U.S. Naval War College.
This article is being republished due to reader interest.
ホームズ先生の平和的期待とは異なり、CCPは増々猛々しく吠え、PLANは増強され、挑発的行為を強めている。このままでは、米中はいずれ戦火を交えることになるかもしれない。その場合、PLANは、第1次世界大戦の英海軍に立ち向かう独海軍のようになると予測する。
返信削除独海軍が、先ずバルト海と北海での制海権を目指すと同様に、PLANは、東・南シナ海での海上覇権を目指しているように見えるが、これら狭い海域の覇権でも十分に確立できなかったし、これからもできないだろう。
独海軍、及びPLANの進出を阻む地政学的障壁は大き過ぎ、独中両国の海軍は、まるで虚像に向かうドン・キホーテのようである。
PLANは、独創性に欠け、マハンにかぶれて米海軍のコピーに血道を上げているが、真似をする限り米海軍を越えられないだろう。過去を見ると、第1次、及び第2次世界大戦の独海軍のUボートや、日本海軍の空母機動部隊のように現在まで残るような戦略・戦術の独創性をPLANは見せてはいないし、これからも無理だろう。
結論として、世界覇権獲得に制海権が不可欠と考えれば、PLANに制海権確保は困難であり、CCPの覇権獲得も無理と言うことだろう。