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防衛技術開発:日米二国間さらにクアッド時代の日本の役割を展望。軍民両用技術で日本は非通常型防衛装備品の開発で大きな力を発揮しそう。

  

Concept art for the Japanese F-X fighter

Japan MoD concept

 

 

国にとって日本はすでに親密な軍事同盟国であるが、両国関係はここにきて一層堅固になっている。両国が防衛関連の研究開発の協力案件を増やしているためだ。

 

ここにオーストラリア、インドが加わりクアッドとしても技術提携が強まる方向に向かっている。

 

米国は長きにわたり日本への防衛装備輸出でトップの座を守り、2016年から2020年でみると97%の圧倒的シェアを達成している。

 

また両国部隊は合同演習を頻繁に実施しており、日本には米軍50千名超が駐留している。

 

「日米の防衛関係が日本防衛で最も重要な要素だと新アメリカ安全保障センター主任研究員ジェイコブ・ストークスJacob Stokesは評している。

 

中国の軍事力近代化と域内で示す強硬態度の高まりが日本の防衛力整備の背景にあるというのだ。

 

日本が導入を目指す米製装備品の筆頭にF-35のA型B型、V-22オスプレイ、イージス艦載システム、PAC-3迎撃ミサイル、E-2D高性能ホークアイ指揮統制機、RQ-4グローバルホーク、SM-6ミサイル等がある。

 

防衛装備庁も米製装備品の大量導入に加え、高度技術に関し米国依存を認める。

 

ただし、中国が技術面で格差を埋めようと軍用技術の研究開発に注力している現状は要注意だ。

 

技術面の優位性を失っては大変なので、日米両国は今以上にR&Dへの出費を増やす必要がある。米国は同盟国協力国との協力が不可欠と見ている。

 

2022年度の防衛予算要求では28億ドルを研究開発に充て、前年比50%増とする。そのうち相当部分を「ゲームチェンジャー」となる技術、すなわち、宇宙、サイバー、電子戦、人工知能、指向性エナジーに充てる。

 

さらに防衛装備庁は外部人材を取り入れ技術開発を目指す。

 

日米の防衛装備開発ではSM-3ブロックIIA迎撃ミサイルでレイセオン、三菱重工業の共同生産等があるが、日本政府はこうした成功事例をもとにペンタゴンの研究開発部門との共同事業を特に先端技術分野でさらに推進したいとする。

 

ペンタゴンも中国軍事力をいわゆる「忍び寄る脅威」ととらえ、日本との共同事業に一層関心を示している。

 

研究及び技術推進担当国防次官補ハイディ・シューHeidi Shyuはこれまでを上回る国際協力が目標の一つとする。「この方向に今向かっている。研究での提携で技術を迅速に発展させる。同盟国に同等の実力、製品があれば共同運用力が向上する。これからの戦闘は米国単独ではなく、同盟国協力国と一緒に戦う。このため新型装備の開発では初期段階から各国と共同作業することに意味がある」と述べている。シューはNational Defenseに対し、日本との協議を開始していると述べ、「日本側の関心領域は広範囲」とし、極超音速技術、量子技術の例を挙げた。

 

今後のフォローアップ会議が予定されており、科学技術面の共同開発の可能性を模索する。

 

米航空宇宙大手ロッキード・マーティンは日本の目指す次世代戦闘機F-Xへの技術支援を展開しており、ノースロップ・グラマンも関与している。昨年末に三菱重工業が主契約企業に選定され、防衛省はその後国際協力なかんずく米国企業との共同開発を旨とする構想を発表した。

 

防衛省はシステムレベルで英国との共同開発にも言及し、エンジン、エイビオニクスでの費用逓減とリスク回避を目指すとも発表した。

 

三菱重工のパートナーにロッキード・マーティンが選定されたことでF-XとF-35の共同運用力が高まる期待が生まれたと国際戦略研究所で航空宇宙分野の主任研究員ダグラス・バリーDouglas Barrieが見ている。「日米の安全保障、防衛産業のつながりがさらに強化される。両国は中国の軍事力増強に対応していく」とし、「ただし、日本が米国以外と二次レベルの防衛技術開発協力国を模索する可能性はある」とした。

 

戦略国際研究所で日本関連部門次長のニコラス・スゼチェニNicholas Szechenyi,は日米両国には限られた財源をどの分野に集中投入するかという課題とともに新技術を迅速に実用化する課題があると指摘している。「日米同盟が重要な時期になっている。両国とも中国の脅威に対応すべく防衛力整備の必要を痛感しているからだ。両国政府で広範囲の防衛協力の課題を解決するしくみ、いわゆるツープラスツー会合で同盟協力の次の段階を実現していく」と、日米の外交防衛部門閣僚の協議に言及した。

 

両国の協力関係ではミサイル防衛の実績が大きいと指摘し、SM-3ブロックIIAが好例だという。だが日本国内には今後の進め方でまだコンセンサスができていないという。今後の協力分野では状況認識機能があるのではないかというのが本人の意見だ。

 

「同盟関係の活力を維持し抑止力を今後も機能させるには共通の作戦構想で域内の事態に対応することがカギとなる。このため技術協力が必要だが、情報共有、情報活動共有も必要だ。これが同盟関係で優先事項になる」

 

つまり、今後の両国ではこうした分野が重要視されるという意見だ。

 

一方で、ここ数年の日本政府の方針転換で日本は従来より攻撃的性格の強い「スタンドオフ」機能の装備品を導入する可能性が増えてきた。ペンタゴンは米防衛産業とともに長距離性能を有する新型装備品の開発を進めている。

 

日本が打撃機能すなわちミサイルを導入することでは広く議論が政界で活発になっており、日本が国産で装備品を開発するのか、日米同盟の傘の下で共同作戦や合同運用構想に資する形で開発するのかの議論になる」とスゼチェニは見ている。

 

軍事技術に関する限り、日本指導層は国産技術と米国支援への期待のバランスを取る姿勢が見られるとも指摘。

 

「日本が国産技術を開発する余地は大きいが、優先順位をどこに置くかの議論は始まったばかり」とし、「最終的には既存の米国技術を迅速に入手することとともに日本独自に開発し防衛力を整備する課題の二つを組み合わせるのではないか。ただこの議論は極めて流動的であり、結論に達するまで時間がかかりそうだ」

 

前出のストークスも日米防衛協力で最大の阻害要因は政治、財政であり、既成の障壁はないと断言する。米国は概して日本への高性能防衛装備品の販売に前向きだというのだ。

 

「日本国内の憲法論議が政治面で大きな障壁となっており、個別具体的にはミッションと能力の問題がある」「財政上の障害が日本の比較的小規模な防衛予算の拡大を難しくしているが、流れは変わりつつあると思う。現在の日本の防衛予算は500億ドルだが、ペンタゴンは2021年に7000億ドル予算を得ている」

 

日本は米国以外にもオーストラリア、インドとの関係強化に乗り出している。米国と合わせ四か国安全保障対話すなわちクアッドの構成国だ。

 

限定的ながらオーストラリア、インド両国と日本は共同研究を行っており、今後の移転対象となる「候補分野」を模索している。

 

重要かつこれから登場する新技術がクアッド協力の柱となり、純然たる軍事技術というより民生技術に大きな焦点が当てられているとストークスは評し、クアッドは軍事同盟ではないと指摘した。

 

スゼチェニはクアッドは今後防衛産業虚力にっ発展する可能性があるが、実現してもかなり先の将来の話だろうとする。他方で米国政府は二国間安全保障条約を日豪両国と締結済みで、さらに三国間軍事ネットワークの形成で「機が熟している」という。

 「三国間の戦略対話が長く続いており、防衛協力分野以外にアジア太平洋での問題解決方法を模索しているので潜在的な可能性が高い」とストークスは見ている。

 

軍民両用技術で日本に強み

 

 

日本は防衛力の近代化に向かい、防衛装備品の輸出も目指している。同国の民生品や軍民両用技術での強みが大きな効果を上げると関係者、アナリスト双方が見ている。

 

一方で日本はすでに強力な軍事力を有している。

 

「自衛隊の戦力はインド太平洋でずば抜けた規模になっている」と米中を除き日本の実力を評価するのがストークスだ。「日本は島しょ地形を生かし、強力な対潜戦力を整備し、海洋ドメインでの探知能力を磨き、海洋安全保障を広く整備してきた」

 

自衛隊部隊は米軍他の有志国との共同演習に頻繁に参加しており、共同運用を高いレベルで行う態勢を維持している。中国特に人民解放軍の戦力整備を意識し、防衛省は戦力強化をねらいつつも財源の制約がのしかかる。

 

そこで民生技術の進んだ成果を取り入れ対というのが防衛装備庁の考えだ。政府内外から広く人材を集め、技術トレンドに詳しく防衛装備への応用を考える。

 

Jane'sでインド太平洋の研究分析にあたるジョン・グラベットJon Gravettは日本が通常型防衛装備品の輸出を目指していることに着目している。

 

ただし、「今後10年たてば中心は非通常型の装備品、技術、軍民両用技術、人工知能、サイバー、データ解析技術に移行していくと見ている」とし、「こうした技術は民生分野で生まれつつあり、日本はこれから域内各国に対して強い立場になる」とした。

 

日本の防衛部門が享受できる民生技術には大規模予算出費は不要となるとRAND Corp.も指摘している。

 

「こうした分野で必要な投資はヒトであり、設計開発にあたる人材でAI、ビッグデータ、自律運用、サイバー、EWの開発にあたる。さらに民間部門が主要技術分野に大きく関心を示し投資しているのも日本の強みで、開発・実用化が進む」

 

日本は長く続いた武器輸出制限を緩和したが、国際兵器供給国の座を確保したいとの熱望の前に障害が立ちふさがった。日本に防衛装備専門企業がそもそも少ないこともその一つだと指摘する専門家も多い。

 

スゼチェニは「武器輸出は徐々に進んでいるが日本が今後装備品の主要輸出国になるのか予測は難しい」とみている。ただし、防衛装備品の共同開発国なら軍民両用技術を活用する潜在力を秘めていると指摘した。

 

ペンタゴンも巨額予算を民生分野技術に投入し次世代システムの実現を狙う点で防衛省と同じ姿勢だ。

 

ストークスは日本が技術大国であり各種分野で世界クラスだとし、衛星技術やロボット工学の例を挙げる。

 

「軍民双方で重要な新技術が米日同盟のこれからで大きな柱になる」とし、「両国が協力すれば相乗効果を上げる」と述べた。

 

ペンタゴンには海外協力テスト事業があり、外国製技術で米軍の戦力に「相当以上の効果があるか」試している。

 

このチームが日本を初めて訪問したのは日本政府が憲法解釈を変更し、他国との共同開発に前向きになったためだ。「以後関係が続いている」と国防削総省は認めている。また同省の国際技術センターは東京にもあり、米軍関係者が日本側と新技術の探求を続けている。

 

バイデン政権は中国との長期にわたる競合で日本を最重要パートナーとみており、笹川財団の渡辺恒雄主任研究員は今年初めに「日米サミットの戦略的意義、対中経済安全保障について」とのレポートを著している。その中で自衛隊と米軍の共同作戦運用が高いレベルになっているとし、「シナジー効果が生まれる」と指摘した。日米両国は民主体制の価値観も共有しているとも指摘している。

 

「日本を米国が長期にわたる同盟国とみなしていることに疑いなく日本は中国との対決の時代で最前線国になる」■

 

US, Japan Set to Enhance Cooperation on Military R&D

 

GLOBAL DEFENSE MARKET

SPECIAL REPORT: U.S., Japan Set to Enhance Cooperation on Military R&D

12/8/2021

By Jon Harper

 

Topics: Global Defense Market


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