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ロシア軍のウクライナ侵攻が迫っているとの観測の根拠。NATOはロシアに反発しているが、バイデン政権では効果的な対応ができない心配。

もし軍事侵攻となれば、世界経済への影響が心配されます。原油高、インフレが一気に現れかねませんが、ロシアではCOVIDの流行に歯止めが利かず、国内の不安を一気に隣国ウクライナや西側への怒りにすり替えようとしているのかもしれませんね。本件、あまり日本では真剣に取り扱われていないようなのでThe War Zone記事からご紹介します。








情報活動でロシア軍がウクライナ国境沿いに燃料他の補給線を確保し、医療部隊も展開中と明らかになったとCNNが伝えている。重装甲部隊、砲兵隊、長距離ミサイル部隊の集結で注目が集まっていたが、兵たん部隊さらに医療部隊はウクライナへの大規模侵攻作戦に必須の存在だ。

 

 

ロシアがウクライナ侵攻の準備に入っており、1月にも実行に移すとの観測がここ数週間あるが、ウクライナは非加盟だがNATOはロシア大統領ウラジミール・プーチンが「レッドライン」発言を繰り返していることに反発しており、NATOが危機を作っているとの大統領発言を否定している。ロシアとウクライナは2014年から対立したままで、同年にクリミア半島を併合し、その後、ウクライナ中央政府に反抗する「分離主義勢力」を支援すべく兵力を展開している。

 

CNNは「現在の配備状況は第一線部隊の作戦を7日ないし10日間維持できる規模と事情に詳しい筋が見ている」と伝え、ジョー・バイデン政権の高官も米政府が「ロシア軍増強がここ数日国境地帯で続いているのを確認している」とも伝えたが詳細には触れていない。

 

「ロシア軍は現代版電撃戦の実施が可能だ」と下院情報委員会のマイク・クイグレイ議員(イリノイ、民主)がCNNで語り、さらにロシアは「好きな時に」ウクライナ侵攻ができる位置に展開していると付け加えた。

 

今週に入り機密情報の説明が米下院議員対象に少なくとも一回行われている。「先週から対ロシア姿勢に変更はない」とCNNのケイティ・ボーリリスは出席した議員からの感触でツイート投稿した。新たに兵たん部隊医療部隊が加わったのが説明会の後なのかは不明だ。

 

支援部隊が国境付近に加わったのは大きな変化だ。公表されている現在の内容と今年はじめのロシア軍の大量配備の状況とは大きなちがいがある。前回の展開でクレムリンが大規模軍事行動を隣国に向け開始するとの懸念が高まっていた。

 

「ペンタゴン関係者によれば直近情報では地上部隊に攻勢を数日以内に開始する兆候はなく、補給兵たん活動、予備部品、燃料、医療支援の展開が見られないためとしていた」とCNNは今年4月に報じていた。その時点でも緊張が急増していた。「だがロシア軍が展開を減らし緊張緩和の姿勢が見られない中で懸念は残ったままだ。また地上の展開が急変することもあり得ると関係者は警戒しており、情報評価は事態の発生の数日前にしか状況を把握できないことがあるとしている」

 

今春は結局武力衝突は発生しなかったが、ロシア軍は相当量の装甲車両や重装備を現地に残し多ママとし、現地展開した部隊も原隊に復帰しないものが見られた。今月に入り、ウクライナ大統領ヴォロジミール・ゼレンスキーVolodymyr Zelenskiy は国境地帯にロシア軍10万近くが展開中と発言した。

 

ウクライナ政府は米政府等同様にウクライナでロシア軍事行動展開の明白な証は見られないと強調している。同時に米政府はNATOとクレムリンに大っぴらに警告を与えており、反発は避けられない。

 

「プーチン氏に心配される事態を簡単に実行に移せなくするよう最大限に包括的かつ実効性のある行動をとる」とバイデン大統領は本日発言した。ただし、内容に触れなかったが、米政府はウクライナ侵攻の場合さらに厳しい制裁を科すと警告したとの報道がある。

 

バイデン=プーチン会談が来週早々にもありそうとの観測も出ている。

 

「ロシアによる大規模情報操作にもかかわらず、ウクライナはロシアにとって脅威でも何でもない」と米国長官アントニー・ブリンケンが昨日の欧州安全保障協力機構(OSCE)の第28回大臣級会合で述べている。「ロシアがウクライナ侵攻の姿勢を示していることこそ脅威だ」

 

これまでロシア側はウクライナさらにNATOが緊張の発生源との説を広めようとして来た自らへの批判をかわすための。クレムリンの常套手段であり、国際社会が軍事行動他を懸念する中で計算した動きなのだろう。

 

ブリンケン長官はロシア外相セルゲイ・ラヴロフとOSCEで会談し、ウクライナ情勢に触れたものの意味のある結果は出ていない。

 

「クレムリンに断固たる対応を取ると明確に伝えており、これまで行使してこなかった高い効果の経済措置も含まれる」とブリンケンはラトビアでのNATO外交団会合の席上で述べている。またNATOは「ロシアのウクライナ侵攻には手痛い代償を与える準備ができている」とし、「東部戦線の防衛体制強化の準備もしている」と付け加えた。

 

これはすべてプーチンがロシアの考えるウクライナでの最新のレッドラインと関連しており、NATO部隊のウクライナ展開に釘を刺したことで発生している。NATO事務局長イエンス・ストルテンベルグはロシア発言を拒絶しているが、NATO加盟国にはウクライナ国内に軍事プレゼンスを展開する検討の兆候はない。

 

NATO加盟国特に米国がウクライナ軍支援で別の形を検討しているとの報道が出ている。武器弾薬類等の供与がその一つだ。米国は沿岸警備隊で供用を終えた監視艇二隻をウクライナ海軍に届けたところで、弾薬類の補給も既存合意の枠内で続けている。

 

「米国は対戦車兵器のジェベリンミサイルの追加送付も検討している」とCNNが本日伝えている。ウクライナ国内には同ミサイルの在庫があるが、ウクライナ関係者はロシア支援を受ける東部分離勢力を相手に同ミサイルを使用し始めていると語っている。ジェベリンは高性能誘導方式の対戦車兵器でソシアがウクライナ侵攻に動けば真価を発揮するといわれてきた。

 

ただし、米国は「地対空ミサイルなどの供与には及び腰」で、スティンガーミサイルはロシアから見て挑発的と受け止めれるとCNNは伝えている。ウクライナの防空ミサイル防衛体制は限定的であることが知られており、今後ロシアとの対戦となれば弱点を露呈しかねない。米国内にもウクライナ軍に新型地対空ミサイル装備を供与して弱点の補強をすべきとの声が出ている。

 

軍事援助の強化、制裁の脅かし、その他の動きで抑止効果が生まれるのか注目される。抑止を狙う動きと関係なくクレムリンは何らかの動きに出る兆候が濃くなってきたと考えるべきだ。

 

ロシアには非軍事オプションもあり、ウクライナ政府を揺さぶり、現政権を打倒し親ロシア姿勢の新政権を樹立しようとするだろう。侵攻の脅威は現実だが、実行されない場合もあり、ウクライナ当局への圧力以外に国際社会へも脅しをかけてくるはずだ。軍事行動を連続実施することで、侵攻が迫っていると見せても、実行に移さないことで警戒感を鈍くさせる効果も生まれる。

 

ワシントンポスト紙は米情報活動のつかんだところでロシアが大規模ウクライナ侵攻のため少なくとも175千名を展開していると伝えており、また国境地帯には70千名が位置についているとし、ウクライナ政府発表より小規模になっている。ただしクレムリンはあえて不安定さを作るため部隊規模を不明瞭にしているおそれがあるという。

 

「ロシアの作戦案では軍事攻勢を早ければ2022年初頭に実行し、今春の軍事演習の規模の二倍の兵力を動員する」とバイデン政権関係者がワシントンポストに語っている。「100個連隊を動員する総勢175千名が展開し、装甲車両砲兵その他が投入される」

 

今年初めに「ロシア軍は国境付近で突撃部隊を編成し、動員をかけ、兵たん支援を展開した」とウクライナ政府関係者がワシントンポストに述べている。「さらに先月に入りわが方の情報によればロシアの代理勢力やメディアがウクライナやNATOを名指しで非難しはじめ、ウクライナ情勢の悪化でロシア軍の増強が必要になったと喧伝した」

 

「最近の情報でもロシア側はウクライナ向けのロシア情報活動を調整し、ウクライナ現政権は西側の画策で発足し、『ロシア世界』への敵意をあおり、ウクライナ国民の利益に逆行する行動をとっていると宣伝している」

 

とはいえ米国はウクライナ関係者とともにロシア大統領ウラジミール・プーチンが作戦実施に踏み切る意向なのかはっきりしないと公けの場で発言している。クレムリンが侵攻に踏み切る意向なら、さらに100千名程度の追加が必要になると米政府は推計している。ロシアでは予備役の招集が始まったとの報道もある。ロシアが本気で侵攻するなら175千名では足りないはずだ。

 

プーチンの構想が何であれ、政策目標が何であれ、展開中の動きは大規模軍事行動の選択肢が有効であり、実行可能であることを示している。明白になってきたのは補給部隊医療班がウクライナ国境付近に加わったことでクレムリンが侵攻作戦の実施もオプションに加えたことだ。■

 

Russia Bolsters Supply Lines, Deploys Medical Units Near Ukraine As Invasion Fears Grow: Report

 

Logistical and medical capabilities would be critical for Russia to sustain any future major operation in Ukraine that could last weeks or more.

BY JOSEPH TREVITHICK DECEMBER 3, 2021


 

コメント

  1. ぼたんのちから2021年12月6日 9:35

    ウクライナは正念場を迎えつつある。米国やNATOは、支援はすれども、介入はしないだろう。隙を見せればプーチンが咬みつくことになる。
    ロシアは、ウクライナ国内の親露勢力の呼びかけを工作できれば、ウクライナ全土を掌握するつもりかもしれない。
    ウクライナのクーデタ未遂で、ロシアの意図は先ず挫かれた。次にプーチンに打つ手がなく、グルジアやポーランド等の他方面に緊張関係を生み出さなければ、今回は終了となるのだろう。そしてプーチンは、米軍とNATOに対抗できたとの自己満足に浸ることになる。
    だがロシアの実体は、極めて苦しい。ロシア経済はエネルギー価格次第であり、財政は火の車だ。自慢の軍事兵器も、ソ連時代の遺産を食い潰している。このままならプーチン時代は、ロシアの失われた20年になりそうだ。

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