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英海軍 クイーンエリザベス発艦に失敗したF-35Bは人為ミスでの喪失か、事故の様子を伝えるビデオが流出。一方、海中の機体を回収するのは米海軍。

 

1117日に英軍のF-35共用打撃戦闘機が英旗艦空母HMSクイーンエリザベスから発艦直後に海面へ墜落したが、その後ネットに上がった映像では同機は完全に発艦しないまま太平洋に墜落していたのがわかる。

[事故時のビデオは下をクリック]

https://twitter.com/i/status/1465351592018956295

同機は空母のランプ最先端に接近したものの、最悪のタイミングで減速したようだ。ランプ最上部に到達した段階で前方へ進む勢いがほぼ全部失われており、パイロットは機体が海に飲み込まれる前に射出脱出している。

今回の映像はスマートフォンで同艦の艦内カメラ映像を撮影したもののようで、今回の事故の原因となった飛行前に除去すべき空気取り入れ口のカバーがついたままであったことを示している。映像は本物のようで報じられる失態を裏付けるもののようだが、英海軍は本記事執筆の時点で真偽を確認していない。

パイロットは無事脱出できたが、英国保有のF-3524機のうち一機を喪失したのは英海軍にとって痛い結果となった。ときあたかも英国では今後のF-35発注を減らそうとしており、同機の運行経費が高水準なのを理由としている。

英国政府検査院による分析では今回喪失したF-35Bは機体価格134百万ドルとF-35ファミリーで最も高価な機体とある。

The Sunの報道では(真偽は疑う必要があるが)匿名筋の情報として今回の事故で機体がランプを移動する段階で誰が見ても何かおかしいと思ったとある。

「発艦前にエンジンカバーとブランクを外しておくことになっている。これは厳格に地上要員が行っている。パイロットも機体周りを点検する」と匿名筋は説明している。

ところが同筋によれば今回のF-35墜落は「人的ミス」だという。未確認だが、なんらかの不具合があれば英軍のその他のF-35のみならず世界各地の同型機の運行を止めていたはずだが、これは発生していない。また事故直後に英空母で運用は再開されている。

F-35にも空気取り入れ口のカバーに加え安全ピンがつき、稼働していない間のエンジン他敏感な部品を異物混入や天候条件から保護する。安全ピンは常時正しい位置にあり、「飛行前に取り外せ」との赤色タグがつく。

「海兵隊機材のフライトラインでは『レッドギア』と呼ばれ、視認性が高く、空気取り入れ口をふさぐぐらい大きな発泡剤製ピローになっているので地上要員が吸い込まれることはない」と海兵隊での経験が長いSandboxx News編集のトロイ・リッチが解説してくれた。リッチはF-35Bの前身マクダネルダグラスAV-8BハリアーII整備を担当していた。

飛行前作業としてこうしたカバーやピンをすべて取り外し、さらに重要なのは全部取り外したかをチェックすることだ。最終的にパイロットが機体周囲を歩きフライト前点検を行う。

「レッドギアが飛行中に吸い込まれたらと思うと動揺する。空気取り入れ口カバーが吸い込まれたら、これも想像するだに恐ろしいが、フライトでこれが発生したことはない」とリッチが回想した。「FOD(異物)に整備陣は気を遣う。この予防をたたきこまれている。偏執狂のようにこの原則に忠実に動く」

防雨カバーなどがそのままで空気取り入れ口に残っていたとしたら今回の墜落の説明がつく。カバーを吸い込んでしまったら、エンジン内部で深刻な損傷が発生し、単発の同機は推力を十分得られず、離陸に支障をきたす。同様に大型リフトファンが作動しなければF-35は高度を稼げなくなる。

「フライトラインでFODをチェックするのは行動の前提となる。チェックは何度も行い、事故の発生がないことを確実にする。そう言われても信じられないと思うが」(リッチ)

残念ながら、F-35一機の喪失だけで英海軍の苦境は終わらない。今回の墜落を受けてF-35事業全体への影響を最小限にしたいという。

ランプ前方からそのまま落下したため、空母艦首に損傷が発生した可能性がある。排水量65千トンのHMSクイーンエリザベスにすぐ危害が及ぶわけではないが、修理には多額の経費がかかる。

「機体が艦首すぐそばに落下したため、また発艦時の艦の速力を考慮すると、水面下で艦首に当たった可能性が排除できない」と英海軍にいたトム・シャープ中佐がSky Newsに語っている。

「軍艦の艦体は実は厚くなく、機体と艦の重量が大きく異なるが、艦首付近の区画は直ちに点検すべきだと思う。その後、艦体を潜水調査して安全を確認すべきだろう」

英海軍は艦体に損傷は発生していないと見ているが、現在の展開が終了次第、完全点検を行うとしている。

これと別の懸念材料はロシア潜水艦が海中の機体の位置を突き止め回収し、リバースエンジニアリングや戦術評価されることだ。公表されていが米国中心で回収作業が展開しており、英海軍には回収手段がない。

ロシアも同様に回収作業に踏み切るだろうか。断言できない。またロシアが正確な位置をつきとめたとしても海中の機体回収を実施する能力があるかも不明だが、可能性は消えていない。

What leaked footage tells us about the British F-35 crash

Alex Hollings | November 30, 2021

  

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