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真珠湾攻撃から80年、ホームズ教授が帝国海軍による攻撃は失敗だったと言い切る三つの理由。

  

 

本帝国海軍が航空攻撃で米戦艦群を真珠湾で沈め80年になる。作戦は救いがたい失策だった。


 

矛盾して聞こえるだろうか。そんなことはない。日本の機動部隊は空母中心の打撃部隊で遠距離移動し、荒天をものともせず、450機を搭載し、その他戦艦、巡洋艦、駆逐艦、補助艦が空母部隊を護衛し補給支援を行った。

 

日本近海からハワイ沖までこれだけの部隊を移動させるのは大変な任務だった。艦隊は広い海面に広がったが任務は戦術的には完遂した。艦載機二波にわかれ1941年12月7日朝にハワイへ来襲し、フランクリン・ロウズヴェルト大統領は「不名誉の日」と名付けた。米海軍では94名の戦死者が生まれたが、日本軍の攻撃の優先順位は湾内中央部フォード島に係留した戦艦8隻だった。

 

サミュエル・エリオット・モリソンがハーヴァード大歴史学教授としてまとめた第二次大戦時の米海軍戦闘記録で書き残した。「戦闘開始30分でアリゾナは燃えさかり、オクラホマは転覆、ウェストヴァージニアは沈没し、カリフォーニアは沈みつつあった。戦艦は乾ドックにいたペンシルヴァニアを除き、大損傷を受けた」(幸いにも米空母部隊は航空機輸送用に使われ12月7日は海上にあった)

 

8:25までに第一波攻撃は終わった。その時点でモリソンは「日本軍はおよそ9割の目標の攻撃を終え、太平洋艦隊の戦艦部隊が壊滅した」と記述した。また日本軍機はオアフ島内の戦闘航空機をほぼ全数破壊した。

 

10:00に戦闘は終了した。モリソンは以下述べている。「緒戦でここまで決定的な勝利を収めて始まった戦争は近代史になかった」 

 

ただ筆者は真珠湾攻撃が日本帝国にとって大惨事になった理由を以下三点あげたい。まず、機動部隊は本国からはるか遠隔地まで遠征したため、戦略原則である「継続性」を実行できなかった。軍事大家カール・フォン・クラウゼビッツも敵の「重心点」つまり敵の軍事、社会双方の集合地点を把握すべしと指揮官に説いていた。これが見つかれば、効果的に攻撃し、「攻撃に次ぐ攻撃を同じ方向に向け」敵の抵抗が下火になる、もう抵抗できなくなるまで続けるべしとした。

 

ボクシングも同じだ。相手ボクサーをふらつかせる一撃を加えたら、連打を加え相手をノックアウトさせるまで手を緩めてはいけない。

 

筆者は太平洋艦隊を米海軍力の重心ととらえた帝国海軍の判断に合意する。日本の補給線は伸びきっており、機動部隊はオアフ島付近に留まれず、連続攻撃がままならなくなっていた。また機動部隊に残る燃料が少なく洋上の米空母を索敵攻撃する余裕もなかった。

 

日本は12月にワンツーパンチを叩いたが、ノックアウトは取れなかった。米戦艦部隊は損傷を受け、修理不能となった艦もあった。米空母戦力は残ったが、当面は攻撃を恐れ逃げ回っていた。

 

そこで真珠湾攻撃が失敗だったという二番目の理由だ。チェスター・ニミッツ海軍大将が12月末にハワイに赴任し太平洋艦隊の指揮を執ったが、モリソンは日本の攻撃目標を間違えたとした。「戦艦部隊と航空部隊は大きく損傷させたが、真珠湾の恒久施設は無視した。修理施設では早速損傷度の低い艦艇の修理作業が始まっていた」。(当日に損傷を受けた戦艦の大部分がその後現役復帰し、1944年には復讐とばかりにスリガオ海峡海戦で活躍している)また、日本軍は発電所や燃料施設にも攻撃を加えなかった。また実際の死傷者も予想より少なくなった。日曜日早朝とあり、艦艇乗組員の多くが上陸して自由時間を楽しんでいたためで、日本側の想定は外れた。

 

乾ドック、修理施設、燃料、電気供給がなければ艦隊は機能しない。ブラドリー・フィスク少将が一世紀前に基地機能の重要性に気づいていた。またトーマス・C・ハート海軍大将が真珠湾攻撃後に指摘したように、基地施設が破壊されていたら太平洋での米軍活動は長期化していただろう。

 

となると日本側の標的設定に誤りがあったことになる。米海軍の重心点は艦隊としても、海軍基地がなければ艦隊行動は維持できなくなる。

 

三番目に真珠湾攻撃が与えた政治面の影響がある。映画トラ・トラ・トラ!(1970年)、さらにミッドウェイ(2019年)でハリウッド版の連合艦隊司令長官山本五十六大将が真珠湾攻撃で「眠れる巨人を起こしてしまい、恐るべき決意を与えてしまった」と悲しく語るシーンがある。史実の山本はここまで詩的表現で発言していないが、著作で同じ意味を述べている。映画製作者は記憶に残る表現にしたかったのだろう。

 

真意を考えてみよう。米国は当時海外の戦争に巻き込まれたくない姿勢だったが、膨大な天然資源と産業力を有する巨人で、軍事大国になる潜在力も秘めていた。潜在力を実際の軍事力にするのは決意だ。米経済力は日本の9倍10倍の規模だった。圧倒的な軍事優位性を秘めた相手を挑発したいとは思わないはずだ。それでも日本は真珠湾を攻撃した。これにより米国民が動員され社会も同調し本当に軍事大国になってしまった。米国民の怒りは太平洋の向こうにある帝国に向けられた。

 

戦時中の感情は1945年終戦後にも長く残った。筆者の家族は軍人の系譜で第二次大戦中は海軍一家だった。祖父両名は下士官でうち一人の乗った護衛空母は沈没したが幸い本人は生き残った。1987年に筆者が初めての自分の車、真紅のホンダで祖父宅を訪問した際は気まずい場面になったのを想像してもらいたい。

 

日本が真珠湾で犯したまちがいの主な理由は筋肉隆々の敵を相手にしたことだ。日本は代りに何をすべきだったのか。日本は別の標的を攻撃できたはずだ。そうであれば、史実より相当長い期間にわたり、軍事優位性を発揮できたはずだ。

 

あるいは戦前の軍事演習の想定どおりにしていたらどうなるか。山本が真珠湾攻撃を主張したのは1941年のことだった。それまで帝国海軍の戦略構想は何十年を費やし磨いたもので、まず米領だったフィリピン攻略の後出動する米太平洋艦隊を待ち、これを撃破するものだった。潜水艦、軍用機を太平洋内の島しょから出撃させ米艦隊が西方に移動するのを反復攻撃し、戦力を消耗させたのちに日本艦隊が交戦し西太平洋で撃破するシナリオだった。これは健全な戦略だった。

 

反対に日本軍指導層はモリソンが「知的愚鈍」と呼ぶ主張に同意してしまった。戦術面では日本は輝かしい戦果をあげても、上層部の戦略無教養の埋め合わせにならなかった。

 

これが日本による真珠湾攻撃は失敗だったと言い切る理由だ。■

 

 

Japan’s Attack on Pearl Harbor Was a Colossal Mistake

ByJames Holmes

 

Dr. James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the US Naval War College and a Nonresident Fellow at the Brute Krulak Center, Marine Corps University. He is slated to present these remarks on board the battleship Massachusetts, Fall River, Massachusetts, this December 7. The views voiced here are his alone.

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