今回ご紹介する記事はオーストラリア国防記者によるものですが、かなり調子のいい話だと思いました。ただ、いくらAUKUSで原子力潜水艦を調達するといってもまだまだ先の話ですし、その間にオーストラリアの安全保障を考えるとプランBが必要なのでしょうね。しかし、この通りにおやしお級をオーストラリアに譲渡できるのか、オーストラリア海軍で同級潜水艦を運用できるのか、疑問はいろいろあるのですが....
Oyashio-class from Japan.
オーストラリアの潜水艦部隊を非常に安上がりに整備する方法がある。2020年代中にディーゼル潜水艦を整備しながらその先の原子力潜水艦を待つ方法だ。
答えは日本から使用済み潜水艦を購入することだ。実行に移せば問題に直面し、実現しないかもしれないが、オーストラリアが目指す目標が実現する可能性があるのはたしかだ。
突飛な発想だ、実施しても管理できないと簡単に決めつけるべきでない理由がある。
オーストラリア向けの原子力潜水艦を国内アデレードで建造すれば、供用開始は2040年になる。出来合いの原子力潜水艦を輸入すればこれを2031年いや2030年になりそうだ。だが、それでは現行の不十分な潜水艦戦力のままで危険だ。
原子力潜水艦運用には乗組員の確保も課題となる。今後潜水艦隻数が増えれば、ディーゼル動力艦であろうと乗組員確保しておけばあとが楽になる。そこで提案だが、つなぎ用に新造ディーゼル動力潜水艦を購入し、現行のコリンズ級を元とする艦なら最適だ。
ただしこのやり方に深刻な欠点がある。コリンズ級派生型でも納入は2030年代になる。建造は相当の費用が必要だし、少数建造では経済性も劣る。オーストラリアは不適当と判定した艦をそろえることになる。
これに対し、日本で供用済みの艦を導入すれば早く、安く、しかも艦寿命が7年は残ったまま手に入る。
日本の海上自衛隊は毎年一隻の新造潜水艦を導入している。潜水艦が30年間の供用に耐えるとしたら、30隻の潜水艦部隊が生まれる。だがそれだけの隻数を運用する予算がないため、早期退役させているのが現実だ。
海上自衛隊潜水艦部隊は数年前まで18隻で構成していたが、今は23隻になっており、さらに24隻とし、訓練艦2隻をここに含む。
対象艦はコリンズ級と同世代のおやしお級で1998年から2008年にかけ就役している。
水上排水量2,800トンとコリンズ級3,100トンに近く、航続距離と作戦日数はオーストラリアの求めるミッションに十分だろう。静粛化とセンサー性能はまだまだ旧式と言えない。ただし、乗組員が70名と多い。
おやしお級がオーストラリアに移籍されれば、オーストラリア近海運用となろう。オーストラリアへのアクセスとなる海峡部分で敵を待ち伏せる。コリンズ級各艦は航続性能を生かし、遠隔地へ展開できる。
日本では最古のおやしお級二隻を訓練艦に改装している。あと9隻が第一線に残っており、完全な戦闘能力を備えたまま、艦齢23年目で退役となる。
このうち7隻は2018年に延命化改修を施し、そうりゅう級並みの技術を搭載することが決まっている。そうりゅう級は一度はコリンズ級後継艦候補になっていた。残るおやしお級二隻は同様の改装を実施している。
日本の潜水艦部隊は毎年一隻建造を続けているが、新造艦が就役してもおやしお級の退役は2022年には発生しないと見る。逆に最古参の現役艦うずしおが2023年に購入可能になりそうだ。
うずしお他8隻のおやしお級が毎年現役を離れるたびにオーストラリアは日本に購入を打診すればよい。購入価格はスクラップ価格を大幅に増えることはないだろう。
日本も中古艦譲渡を通じ両国間の防衛関係強化になれば喜ぶはずだ。
良い状態の中古艦を運用する国は多い。多くは元英米の海軍艦艇だ。オーストラリアも多くの中古艦を運用しており、最近はチリにフリゲート艦二隻を売却している。
オーストラリアのおやしお級部隊は2029年に7隻になり、そのまま2031年まですぎれば、艦齢が30年に達する艦が出てくる。その後、隻数は毎年一隻ずつ減り、原子力潜水艦輸入を待つ。一隻就役し、一隻退役させる。
この案でオーストラリアはディーゼル潜水艦13隻を25年間供用可能となり、取り消しとなったアタック級通常型潜水艦12隻で想定した供用期間より短くなる。
使用済みおやしお級の稼働率はコリンズ級を上回る。コリンズ級では二年間の大規模整備が前提となっているからだ。
なじみのない級の艦をそろえるのは魅力に乏しい選択肢といわれるかもしれないが、不可能なことではない。コリンズ級の装備品兵装も独特のものである。
日本が各艦で示した保守整備の熟達度を利用することで艦の整備維持問題は大きく緩和されよう。必要に応じ日本に送り、整備すればよい。同級を長年扱ってきた技術陣の手で信頼度は高まり、長期間運用に道が開く。
またこの方法なら大いに経済効果を上げる。オーストラリアは建造施設も乗組員養成でも投資不要で複雑な国内支援体制を構築する必要がない。軽微な整備なら日本国内の造船施設や支援企業がオーストラリアに人員を派遣すればよい。
この構想で日本が信頼に足るパートナーになるのは間違いない。両国には共通の戦略問題がある。中国だ。
この提案で不明なのは日本製潜水艦が艦齢23年以降に維持するのが困難な作業になるか不明な点だ。
海上自衛隊から退役した時点で艦の状態は問題にならない。日本は生産と合わせ保守管理でも定評がある。日下元大使は2016年に日本式の保守管理を実行すればそうりゅう級潜水艦は「長期間」オーストラリアで活躍できると発言していた。
それでもおやしお級各艦は退役の日までまだ活用されることを前提に整備計画が組まれているはずとはいえ、各艦が王立オーストラリア海軍に編入されるまでに再整備が必要だろう。
ひとつ障害になりそうなのは建造後30年たっても艦内の電子装備やソフトウェアでサポートが得られるかだ。ひとえに各艦の近代化改修にかかってくる。アップデートで解決するとしても、その費用と艦価格を比較する必要がある。
運用開始にあたり、日本に乗組員全員の提供を依頼すればよい。英語力が前提だが日本側乗員がオーストラリア側を訓練し、段階的に現地の理解が深まれば日本へ帰国する。日本側には潜水艦多数があるので、訓練要員の確保はむずかしくないはずだ。
各種マニュアルも英語翻訳が必要だが、電子系はあえて翻訳が必要だろうか。不必要にややこしくなるだけな気がする。
オーストラリア側が見守る中で日本語表示の戦闘システムメニューを理解するのはやっかいだが、世界各国の軍組織要員は英語を使い輸入装備品を使いこなしている。オーストラリア海軍人員が簡単な日本語を学んでもいいのではないか。
おやしお級が2023年ごろからオーストラリアに到着しても訓練にあてる時間は短い。ただし、各艦の到着予定をにらめば、訓練の習熟が遅くても許される。
オーストラリア政府は急いでこの構想の可能性を検討すべきだろう。その際はオーストラリア海軍、国防省ともに日本から使用済み潜水艦を導入する際の困難点に着目すべきではなく、解決策を真剣に検討すべきだ。■
How Australia Could Expand Its Submarine Force: Buy Used Japanese Subs? - 19FortyFive
ByBradley PerrettPublished2 days ago
Bradley Perrett is a defense and aerospace journalist. He was based in Beijing from 2004 to 2020. This first appeared in ASPIs the Strategist.
In this article:AUKUS, Australia, Collins-class, Japan, Oyashio-class, Submarine
十分使える中古品を、なんでスクラップ価格で変えると思ってるんだ
返信削除