投票数で勝っても選挙人で多数を獲得できなければトランプ候補は当選できないのですが、ここに来て同候補に明らかに勢いがついており予想外の結果が生まれそうな気配です。トランプ大統領になって国防政策はどうなるのか、共和党の重鎮の考え方に耳を傾けてみましょう。このとおりならかなり期待できる国防政策が期待できそうです。選挙戦は人格攻撃など低劣になっていますが、冷静な思考が裏で動いいていることにホッとします。日本も一層の防衛支出を求められるのは避けられないでしょう。
Top Trump Military Advisers Detail GOP Candidate's Defense Plan
2016年大統領選挙で国防問題は主要争点になっていない。予算制限法の制約が予算強制削減措置とともに解除された場合を想定し、両陣営ともに国防政策では一般的な言及にとどめているのが現状で、その中でクリントン候補が政策面にやや詳しく触れている程度だ。トランプ候補は本人が軍の「惨状」と呼ぶ状況の再建に重点を置いている。だが両候補ともに各論となるとわずかしか明らかにしていない。
一般投票まで一週間となった今、共和党の軍事問題政策の重鎮二名からトランプ当選で国防がどうなるかが見えてきた。アラバマ州選出上院議員ジェフ・セッションズは上院軍事委員会に所属しトランプ政権誕生の暁には国防長官就任が濃厚と言われている。ランディ・フォーブス下院議員はヴァージニア州選出で下院海洋権力小委員会委員長だが来年1月で議員を退く。予備選に勝てなかったためだ。だがフォーブスは海軍問題での知見の豊かさで知られ、海軍長官候補のひとりた。
先週金曜日にこの両名がDefense Newsへトランプ政権のペンタゴン方針について語った。
政権発足早速とりかかる主要政策は何か
セッションズ:トランプは米国は力による平和を推し進めるべきとする。軍の戦力が低下していると見ており、再建が必要だ。予算強制削減がその原因だ。アメリカの国益を第一におくべきだ。
国益の中核部分に焦点を合わせる。同盟関係の再構築、新規友邦国もあり、外交政策はもっと現実的にして、頭の中だけで有効な政策目標は求めていかない。結果が悪くなるだけで人命が犠牲となり、財源にも悪い。これまで巨額の投入をしながら肝心の我が国や我が国が助けるべき人々に恩恵がなかった。
軍関係でトランプがまず最初に行うのはISIS撃滅だ。就任30日以内に軍に作戦案を作らせるといっている。軍事行動以外にサイバー、金融、情報宣伝、外交の各手段を駆使しISISを壊滅させる。ISISは米国にとって直接の脅威だ。わが国を攻撃すると公言している。また攻撃を実施したものを祝福している。真正面から対決して敗退させるべき敵だ。
トランプは繰り返しアメリカの道を誇らしく思うと発言している。世界に対して謝罪こそしないが、成果は祝う。移民問題は安全保障問題との認識で、米国に脅威となる人物は入国させないと発言した。
また国内エネルギー生産を拡大すると発言しており、雇用を作るだけでなく、富の海外流出を防ぐ。また危険な海外地帯への依存度を減らす。
サイバー能力をてこ入れし向上させると具体的に発言している。わが方には防御、攻撃双方の手段がある。サイバー攻撃を受けるだけの立場に甘んじ反撃しないままというのは受け入れがたい。
国防総省の主な支出項目を検討している。トランプの提案は陸軍の増強だ。現在の48万名体制を54万名に拡大する。
その理由は?
セッションズ; まだお話しできる段階ではないが海軍に現在の水準より引き上げる余地がある。トランプはアメリカのプレゼンスを各地で示すべく海軍力拡張を主張している。ランディ、君はコメントしたいだろう
フォーブス: 質問は「当選翌日になにをするのか」だったよね。
全体的な話だ。合衆国大統領は単に案を実施する立場ではない。大統領は議会とともに、政策立案者とともに案を前進させるのが役目だ。なぜこのことが重要かというとクリントン候補はオバマの取った道筋と同じ方向を目指すといっている。つまり若干手直しするものの路線を継承するということだ。
だがトランプ大統領は最初の数日間で国際国防戦略を国防総省の下で、国家安全保障会議の下でなく作るといっている。明らかに仕事の進め方が変わる。世界各地で活動は、この八年間は国家安全保障会議が筋書きを書いてきた。八年前と比較して今の方がよくなっている国はどこにもない。
二番目に誰が当選するにせよ、安全保障会議では戦略が生まれてこない。 アイゼンハワー大統領除き、これができた大統領はない。だが次の大統領が誰にせよ、現在の想定を超えた規模の危険や脅威に直面するはずだ。そこでペンタゴンが選択肢を示す戦略を大統領に示すことが鍵となる。
トランプ大統領とクリントン大統領の違いはトランプなら我が国の能力や装備を元の方向に戻し大統領としての選択の幅が広がることだ。クリントン候補の言葉をそのまま受ければ、基本的にオバマ政権を継承すると言っているので、こう聞きたい。2007年には戦闘司令官の求める兵力艦船数の90%を充足していたのが今年は42%しか実現していないのを継続するのだろうか。歴史始まって以来の小規模かつ高機齢の空軍でいいのか。陸軍が45万人体制に縮小するのを認めるのか。トランプ大統領は軍の能力、勢力を再建する。
346ないし350隻が必要だ。なぜなら隻数、戦力をともに増やすことで脅威発生時の次期大統領に選択肢が広がれば、単に成功するだけでなく、アメリカ国民の生命を保護することができるからだ。
セッションズ: 海兵隊は18万名まで縮小しており、トランプは20万名まで拡充する提案だ。米大統領の信頼度が歴史的な水準まで減少している今日では米国が国防支出を放棄していると見られてもおかしくない。言葉だけでこの流れを変えるのは不可能だ。
トランプ構想では艦船数を増やし、兵力や機数を高水準で維持する。言葉だけでなく世界に対して米国の力を理解させる。平和の維持につながる。
2012年大統領選のロムニー候補には海軍拡充案が詳細な内容であったと記憶している。今、350隻と言ったが、どんな艦種を想定しているのか。現在は272隻で合計308隻規模だ。では追加する42隻はどんな構成になるのか。航空母艦はもっと必要なのか。
フォーブス:まず発言を思い出してもらいたい。米国には新国防戦略を国防総省主体で必要だ。ここからご質問の内容に答える。現政権が手がけてこなかった内容だ。現政権が生んだのは12ページの国防戦略指針だけだ。バカげた話だ。.
つぎに方向性の違いがおわかりだろう。トランプ候補は巡洋艦の重要性を強調している。現政権は11隻ある巡洋艦をすべて撤去しようとしている。巡洋艦、駆逐艦を十分揃えて360度全方位の対応が可能だ。巡洋艦の近代化改装は続けるべきだ。トランプ大統領は現在の大統領と反対のことを口にしている。巡洋艦が必要だ。
空母がもっと必要なのか反対なのかを断言できる人はいないと思う。だが潜水艦はもっと必要だ。10年間で41隻まで縮小すれば中国の半分となり、受け入れられない。20201年に攻撃型潜水艦が一隻加わるが、トランプ大統領は明らかに潜水艦を強化していくだろう。
セッションズ:フォーブス議員のいうように、巡洋艦の近代化とくにミサイル防衛能力は必須だ。トランプ候補が予算強制削減措置は国防総省では停止すべきと発言していることに注意喚起したい。世界が数年前よりずっと危険な場所になっていることを認めるべきだ。我が方も増強すべきだ。
トランプ候補はイラン、北朝鮮へのミサイル防衛措置の強化もはっきり主張している。また北朝鮮が核爆弾を有し、イランも短期間で核兵器開発する能力がある。両国はミサイル開発も進めている。米国のミサイル防衛の性能と有効性を向上していくべきだ。
U.S. Rep. Randy Forbes, R-Va., speaks to a reporter after a news conference March 1, 2013 on Capitol Hill in Washington, DC.Photo Credit: Photo by Alex Wong/Getty Images
予算強制削減措置に触れているが、予算管理法と議会内の政治力学で連邦予算の支出規模が宣言されているはず。今後どうすべきと見ているのか。350隻、ミサイル防衛、海兵隊増員、戦闘機追加を言及している。すべて実現すれば相当の支出増になる。
セッションズ: 支出増の必要は疑う余地はない。予算に関連してきた当事者としては断腸の思いだが、予算強制削減の水準のままではいられないのだ。トランプ大統領はオバマ大統領やヒラリー・クリントンと違う選択をする。国防支出を増やしながら他の費目も同様に増額させるのは賢明な策ではない。
世界規模で危機状況にあるのだ。世界各地で自体は悪化している。だからこそ強くあるべきで支出を増やす必要がある。国家安全保障にそれほど関係しない費目に支出する必要はない。全費目を増額する必要もない。新大統領は現政権の政策方向とは全く違う立場を明確に示すだろう。
矛盾しないか。一方で強力な軍事力を主張し、他方で例えばロシアに強硬態度を取らないとし同盟各国への要求を増やすという。トランプ大統領は太平洋重視の姿勢を守らないのか。
セッションズ:ロシアとの関係は現政権下で著しく悪化したのであって、ヒラリー・クリントンが国務長官だった時点の話だ。逆転できるかわからない。努力はする。わが国の国益の観点で見る。米ロ両国は今より協調できるはずだ。中国は大幅に自己主張を強めている。日本は中国機の侵入に対応して航空機を発進させている。両大国がともに世界尾の大きな懸念材料になっている。
国防支出増はこれから出現する脅威に対応するもので、次から次に脅威が生まれているようにみえる。こちらが想定したとおりにはならない。また同盟各国も応分の負担増は必要だ。各国の支出内容を指示するのは容易ではないが、重要なことは確かだ。GDP比2%台の国防支出をしているNATO加盟国は五カ国にすぎない。これに対し米国は3.6%でもっと増えるかもしれないのだ。
各国に要望するのは当然だ。真剣な議論が必要となる。ドナルド・トランプはこのやり方を熟知している。しっかりと腰を下ろして要求する。これでわが国の予算以外でも必要な措置がとれる。
フォーブス: 二つの点で対立が生まれないようにする必要がある。一つはトランプ候補には自国の国防力は他国の意図の上に構築するべきものではないとわかっていることた。そんな意向など48時間もあればすぐ変わる。なんといっても軍の能力と装備の上に構築すべきものである。
このことを主張するのはトランプ候補だけではない。統合参謀本部議長があり、前の統合参謀本部議長や上下両院の軍事委員会の過去の委員長も同じ意見だ。米国がこれ以上の軍事力削減に進めば、ロシアや中国のような国が元気づくだけでこちらに追いつけると感じる。トランプ候補の政見は各国との協調を狙う。強い国防力と国防装備、能力の拡充は一層協調的な関係につながり競合勢力は国防体制の支出追加ができなくなる。
セッションズ: もう一つの争点は核兵器だ。あまりにも急激に削減すれば他国は米国と同等に競合できると過信しかねない。このことを心配している。世界は米国が二級軍事力になってほしいとは表いない。他国に先を越されては困る。核兵器で世界の平和を維持することに意味がある。
またこのこともお伝えしたい。ドナルド・トランプは戦争をしたいわけではない。戦争は悪、破壊、死、富の浪費だと見ている。シリアで何が起こったのか、リビアの国民の苦境もみている。エジプトはイスラム同胞団の被害からまだ回復していない。イラクはこれから復興という段階だ。ヒラリー・クリントンは軍の助言を無視して無理やり撤兵を押し通した。今やイラクでは自国領土の奪回に必死になっているがそもそも軍が撤退した後の2011年に平和の元で選出された政府が機能していたときの領土奪回だ。
太平洋重視政策への質問に答えていない。大西洋から太平洋への部隊移動の流れを止めるのか。
セッションズ:太平洋重視に向かうと思う、太平洋での立場を強化することは賛成だ。ランディはこの問題をもっと深く研究していると思うがどうか。
フォーブス:現政権が構造変化に手を付けたといっているが、全く新規の政策ではない。変化は前から始まっていた。世界の貿易量の三分の二が行き交う地域を単純に見ることはできない。世界の有力海軍国や陸軍部隊がこの地域に関心を払っている。
現政権が見過ごしていることがある。アジア太平洋にもう一度焦点を合わせれば良いと見ている。中東やその他地域には力を入れないとする。トランプ候補には米国はバスケットから卵一つだけを抜き取れないとわかっている。世界全体を防衛する能力と装備が必要だ。
アジア太平洋で大規模な軍事力が必要な点では変更ないが、世界の他の地域から能力装備を抜き取って来るのは認められない。その選択肢はだめだ。
一つの問題が核戦力の近代化改修だ。トランプ大統領が誕生すれば核の三本柱の再強化を提唱し、弾道ミサイル潜水艦、大陸間弾道弾、爆撃機の充実に動くのか。ロシアへの姿勢を強硬にする可能性はあるだろうか。核近代化の狙いの一つがロシアへの姿勢だ。2人はロシアとの関係改善を主張されているが。
セッションズ: ロシアは大規模市民防空演習を行い核攻撃での生き残りを訓練している。核兵器近代化で先に行っており、実際の攻撃計画も整備している。きわめて危険で面倒な関係にほかならない。相手側にはこちらが核兵器近代化を断固として進める姿勢を見せつける必要があろう。
オバマ政権はこの点を承知しているが、まだ完了していない。十分な予算をかき集めていない。核兵器の一部にはまだ真空管を使っているような状況だ。対応は必須だ。
トランプ候補は最新鋭ミサイル防衛が必要と訴える。これはどんな意味があるのか。どの装備を更改するのか。
セッションズ; まず弾道ミサイル防衛装備がある。すでに迎撃ミサイルの誘導装置で技術が確立されている。開発は今後も続けて既存のミサイルに取り付ける必要がある。
東海岸に防衛ラインが必要なのか決める必要がある。東海岸にレーダー基地は必要だろう。これは今後も続ける。技術を進歩させて敵より先に立っている必要がある。費用は膨大ではない。予算計上は今後も妥当規模を維持して新型装備の展開の勢いを維持すべきだ。
北朝鮮にどう対応するのか。同国は兵器開発を続け韓国、日本を攻撃する能力を整備中でゆくゆくは米国も標的に入れるだろう。韓国、日本にミサイル防衛装備をもっと設置するのか。
セッションズ: 太平洋の同盟各国と一緒に作業して米国が各国のパートナーであると理解させ、日本、韓国を覆うミサイル防衛の傘には両国の負担を求めるべきだろう。トランプ候補は中国は北朝鮮の危険な状態打開でもっと活躍すべきだと繰り返し主張している。
もう少し哲学的レベルで話をすれば、政治の話題になるのが事実であることは確かだ。韓国の状況はオバマ政権誕生時より悪化している。中国との関係はもっと悪くなった。ロシアはずば抜けて悪い。パキスタンも悪化、イランも悪化している。リピアも同様。リビア難民がヨーロッパを目指している。シリアも大規模な惨状だ。イラクは国土奪回に向かっている。エジプトでは軍が介入して国政選挙になったのは幸いとはいえ脆弱でやはり以前より悪化している。オバマ政権とヒラリー・クリントンは国務長官として状況の回復にほとんど寄与していない。ISISがのさばっている。ほぼ世界の各地で挑戦を受けている状況だ。
ドナルド・トランプがこの状況にどう対応するつもりなのかを紹介してしまったのは間違いだと思う。こぼれたミルクは相当の量でわが国の信用度を回復して安定した世界を取り戻す方法を見つけなくてはならない。
国防産業が考慮すべき点はなんだろうか。ドナルド・トランプは大企業は覚悟しておけと述べている。大企業の利益を減らして成果を実現しようとしているのか。
セッションズ:間違いない。米国政府は最低価格で調達して不良欠陥もないことを期待している。国防契約企業各社が納期どおりで予算通りに製造することを監視していく必要がある。
フォーブス: 覚えておいてもらいたいのは国防契約企業各社の予測可能性だ。戦略さえ与えれば守る様になる。予測可能性が生まれれば必要な事業を展開できるはずだ。
もうひとつ学んでいるのは相手は国家だけではないことだ。非国家勢力がどんな兵器を入手しているかが気になる。米国への脅威となるからだ。■
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