シリアで何が起きているのか正確に把握している方は日本では少ないのではないでしょうか。なじみがない話ではありますが、遠い地とのんきに構えている余裕は実はないのですが。やりたい放題のロシアに各国はなんら手を売っていないというのが現実です。この事態を生んだのもオバマ政権の失策です。
Does the Russian Air Force Even Know What Is Going On in Syria?
The Kremlin either has poor military intelligence or different — and far more disturbing — priorities in mind
by TOM COOPER
ロシアはシリア介入を始めた昨年から一貫して無差別に住民を標的としている。シリア政府への反抗勢力を一掃する戦略目標なのは明白だ。
- ロシアは同じ戦法をチェチェンで実施ずみで、今度はシリアというわけだ。公共施設、学校、病院、食料貯蔵所、給水施設を巧妙かつ継続して空爆し、敵対勢力の統治効果を減衰させ、地元住民に恐怖感を煽り居住地を離れさせ、反乱勢力の力を下げるねらいがある。
- ただしロシアの「価値減衰」戦術が2016年10月ほど激烈に行ってきたことはなかった。
- 同月にアルカイダ系列のジャバト・アル・ファタ(JAF)勢力がアレッポに移動してきた。さらにJAF勢力が補給品をトルコ国境付近から運送してきたがロシア機の姿はどこにもなかった。
- 10月25日になり自由シリア軍の中央師団がイドリブからアレッポに移動したが空爆はさして心配でなかった。
- 一方、ロシア航空宇宙軍VKSはアレッポ東方やイドリブの市町村を集中爆撃し、市民に多数の死傷者が発生した。
- 10月26日、JAFがアレッポ西方のシリア軍陣地を攻撃しはじめ、275千名の一般市民、11千名の戦闘員の包囲状況を解放しようとすると、ロシア機がイドリブで学校を空爆し、少なくとも22名の学童、教員6名が死亡する一回の空爆でシリア最悪の記録となった。
A Russian air force Su-24M over Hass, Oct. 26, 2016.
- シリアアラブ共和国の空軍はこれとはちがう行動をしている。小学校爆撃の同日にSyAAFは自由シリア軍集団の司令部をホム自治区で空爆している。
- その結果、自由シリア軍のショキ・アヨブ・アボ・イブラヒム大佐、副官ファイサル・アウド中佐も含む指導層が死亡した。
- 10月26日には興味深い写真がインターネット上で浮上し、アサド派のアレッポ軍区司令官ザイド・サレ少将が悪名高い民兵組織砂漠のタカの指揮官モハマド・ジャバと写っている。
- 二人の背後には地図があり、シリア軍がJAFの現在位置とアレッポ西方からアルアサド地区への展開作戦を情報収集しているのが分かる。
- ロシア軍はどこまで正確で有益な戦場の状況の情報収集をシリアで行っているのだろうか。
- 正しく信頼できる情報こそいかなる戦闘で成功要件となる。そのためロシアも努力している。
- まずロシアは偵察衛星を使い、シリアの戦場を監視していると公表している。ロシア軍の日刊紙ではシリアではロシア軍は「ネットワーク中心の戦闘」として情報収集と高度通信技術を応用して迅速に敵を突き止め撃破する原則で実施しているとする。
- ロシアが構築したシリア内の「ネットワーク」にはイリューシンIl-20M偵察機一機がまずフメイミン基地にあり、70機近くの偵察ドローンが大きいものはヤコブレフ・プチェラ-1から小型のオリアン-10、エレコン-3SVやグラナット-4まで配備されている。
- またスパイ機としてツボレフTu-214Rがあり、ロシア最高性能の偵察機といわれる。クレムリンが地上配備の前線航空指揮官を配備しているのはまちがいない。
- だが問題がある。VKSが繰り返し、シリア反抗勢力の指揮命令所や司令官の排除に失敗している。ジャバト・アル・ファタやイスラム国対象の作戦も失敗している。
- 2016年2月にはTu-214Rがアレッポ上空を飛行したが、イスラム国の大部隊が砂漠を横断しカン・ナシルとアレッポを結ぶ道路に近づくのを探知できなかった。
- この失敗により聖戦主義武装勢力が政府軍少数部隊を壊滅させ、その他2万名のシリア政府軍部隊やイラン革命防衛隊向けの補給線が一週間近く切断された。
- 一方でシリア政権に近い筋は反乱勢力指導部への空爆はSyAAFが実施しているのであり、ロシアVKSの関与はないと強調している。
- シリア空軍情報部は空爆実施に先駆け情報を入手し無線で爆撃機乗員に伝えているがVKS機は目標を変更していない。
- 同筋によればロシア情報集能力はシリア国内で不足しており、SyAAFへSu-22M-4Kに使用後40年経過のKKR-1カメラポッドを搭載して送るようロシア空軍が要望しているという。
- このためロシアの情報収集能力への疑問が生まれている。ロシアはシリアで何の情報を集めているのか。イスラム国については大した情報は集めていないようで空爆実施は2016年10月は十数回にも満たない。■
- シリア国内の主要反乱勢力についての情報収集力が十分でないことは明らかだし、アルカイダ系列のJFSでも同様だ。
- クレムリンが考えるネットワーク中心戦はこれから姿をあらわすのかもしれないが、実は全く違う意味に解釈しているのかもしれない。■
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