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いまだに大統領を乗せて飛行できない新型マリーンワン、VH-92Aは何が問題なのか。

 次期大統領専用ヘリコプターとして実機は完成しているものの、供用が遅れているVH-92Aは国家緊急時への投入がまだできない状態にあるとして、いまだに供用開始時期が決まらない。The Warzoneが以下伝えています。60年代から稼働中のVH-3の退役も待ったなしの中、どうするのでしょうか。



AP

 

 

ョー・バイデン大統領が新型大統領専用ヘリコプター、シコースキーVH-92Aに搭乗する機会は当面発生しない。同機事業はさらに遅延し、「ホワイトトップ」塗装のマリーンワンとしての要求事項を満たしていない。中でも国家の存亡にかかわる緊急対応時フライトを十分な信頼性をもって実施できないとの指摘がある。

 

ブルームバーグの本日の記事では米政府関係者が匿名を条件にバイデン政権がVH-92Aが第一海兵ヘリコプター飛行隊 (HMX-1)での運用で安全性を確認できていないとある

 

ブルームバーグは米海軍航空システムズ本部(NAVAIR)の9月28日付内部評価を入手し、VH-92Aを「信頼性、稼働率、整備性のいずれでも最低限の要求水準を満たしていない」との内容を伝えている。

 

同書類ではVH-92Aを「運用に適している」とは評価しておらず、政府機能の継続を緊急時に確実にする点で懸念を呼ぶとしている。大きな危機が発生した場合に大統領を移動させる手段としては致命的欠陥となる。

 

VH-92Aで安心して重要な運航ができない理由としてブルームバーグ記事ではミッション通信装備(MCS)の問題を取り上げているが、全体像は不明だ。試験評価部門の総括によれば、MCSは「緊急時ミッション開始時に重要な通信で遅延が生じ、適時かつ連続した安全な交信が確立できなかった」とある。

 

このMCS問題が発生したものの、整備陣に診断能力がなく、修理が必要な部分へのアクセスに時間がかかりすぎたという。

 

MCS問題は2020年度に出た運用テスト評価部門長 (DOT&E) によるレポートで登場したもので、MCSバージョン3.0のテストを2020年1月に開始している。同バージョンはDOT&EによるVH-92A運用評価OT-B1レポート(2019年5月28日付)の提言を採用し、評価作業中に発覚した欠陥事項に対応している」

 

BLEND QATIPI

VH-92Aが首都上空を編隊飛行した 

 

MCS 3.0についてDOT&Eレポートでは「ハードウェア設計の変更、とくに機内通信システムのコードを変更し、機内各座席間の交信機能を向上すべき」と記載がある。

 

また同じDまた同じレポートではMCS3.1ソフトウェアもテストしたとあり、NAVAIRの設計陣が「改良にとりくんでいる」とし、MCS3.2テストが2021年1月に始まるとある。

 

危機緊急時に大統領を迅速かつ安全に移動させる際に信頼できる通信の確立が最高重要事項になるのは言うまでもない。通信系統で欠陥があれば大統領が最高司令官として機能できなくなる。また米国の核抑止力の信頼性、実効性にも影響が出る。さらに信頼できる通信の維持が大統領による危機時の指揮統制で絶対必要条件となる。


AP

マリーンワンVH-3Dから空軍将校が「フットボール」と呼ばれるブリーフケースを携行している。中には核兵器使用に使う遠隔指揮装置が入っている。

 

ブルームバーグが入手したテスト内容ではさらに「不安定かつ客室内装に欠陥があり、点検頻度の増加、後部エアステア部品」の組み合わせで点検作業に時間がかかり、結果として機体稼働性が低下しているとある。

 

ヘリコプター特有の問題も未解決だ。2018年9月時点でVH-92Aのエンジン排気とローターによりホワイトハウスでマリーンワンが離発着するサウスローンに損傷が発生しているのが見つかっていた。テスト結果総括ではこの問題は未解決とあり、その後も同じ問題が何度も指摘されている。

 

「エンジン排気とともに液体漏出により離着陸地点で損傷が発生しており、利用可能な離着陸地点が限定されている」とあり、さらに海兵隊に「エンジン排気および液体漏出の影響を抑える工夫を継続する」よう求めている。ただし、この点が実行されているかは明らかではない。

 

U.S. MARINE CORPS/SGT. HUNTER HELIS

ホワイトハウスのサウスローンにVH-92Aが2018年9月に初めて着陸した。

 

このためか、ホワイトハウス軍事事務局はVH-92Aでの大統領移動実施を承認していない。

 

VH-92Aは長年稼働しているVH-3Dの後継機として7月に初期作戦能力を獲得のはずだったが、いまだこれは実現していない。ブラックホーク原型のVH-60Nの交代も2023年に迫り、新型ヘリコプター23機を調達する構想だった。IOCは2020年6月の当初予定が今年1月に先送りになっていた。

 

ただし、VH-92Aにも朗報がある。同上のテストレポートでは同機が通常の政府向けミッションに適合していると評価している。例としてキャンプデイヴィッドへの往復移動やエアフォースワン大統領専用機が待機するワシントン郊外アンドリュース共用基地への大統領移動がある。

 

これにより「運用上の効果」はある程度認められるものの、50億ドルを投じたVH-92でペンタゴンがホワイトハウスが想定した内容には到底届かない。

 

また、同機事業の詳細の公表がここまで遅れた理由も不明だ。DOT&Eによるテストは今年4月に終了しており、5月初めに海兵隊のグレッグ・マシエロ少将Major General Greg MasielloがNAVAIR特殊ミッション事業の責任者として「同飛行隊及び同機事業は本日任務実行の準備が整った」と述べていた。

 

ブルームバーグはテスト担当部門に接触し、三カ月に及ぶ試用期間の結果を求めたが、結果は「公開情報ながら統制下にある」との回答を得ただけだった。テスト部門の報道官かはらVH-92Aが「大統領、副大統領、閣僚、国家機関の長の移動任務実施を効果的かつ適度に行えるかを評価した」との回答を得た。

 

他方で海兵隊航空部門報道官はブルームバーグに同報告書では提示された問題点が解決していないとの指摘事項は記載されていないと伝えてきた。ただし、同報道官はVH-92Aが大統領を乗せてのフライトミッションをいつ開始できるか見通しを述べていない。

 

VH-92A製造にあたるロッキードのシコースキー航空機部門の広報は「弊社顧客と同機が運用上の要求内容を達成できるよう努力している」と述べた。

 

そのため、VH-92Aがマリーンワンとして投入されるのがいつになるのか見通しがつかない。海軍がVH-92A合計23機分として15億ドルを支出ずみだが、各種問題を解決しないと同機はミッションの完全実施ができない。VH-3DおよびVH-60Nの後継機種が必要な中、これ以上の遅延は望ましくない。■



Future Marine One Helicopter Is Struggling To Meet Requirements For Emergency Missions: Report

 

BY THOMAS NEWDICK NOVEMBER 23, 2021

https://www.thedrive.com/the-war-zone/43260/future-marine-one-helicopter-is-struggling-to-meet-requirements-for-emergency-missions


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