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野心的な英国ステルス戦闘機テンペストに実現の芽はあるのか

ンペストは英国が2030年代の供用開始をねらう国産双発ステルス戦闘機だ。同機には第6世代機の技術が盛り込まれ、無人飛行、極超音速兵器、指向性エナジー兵器、小型無人機の大群の運用が可能となる。だが、ブレグジット後の防衛協力としてドイツ、フランスとの連携も想定する。

英政府は「チームテンペスト」に20億ボンド(26億ドル)で初期開発作業を進めさせる。主契約企業BAEシステムズが中心となり、英空軍、ロールスロイス(エンジン)、MBDA(兵装)、レオナルド(センサー、エイビオニクス)が参画する。

 設計は2020年代始めに完成し、試作機が2025年に飛行し、2035年に第一線に投入される。RAFでは第4世代機タイフーン戦闘機の後継機となり、F-35ステルスジェット戦闘機を補完する。開発期間の17年という設定はステルス戦闘機の複雑さと高価格を考えれば野心的と言える。
  テンペストのモックアップは大型単座双発の機体でデルタ翼で尾翼はF-22並に内側に傾斜している。飛行制御に資する設計でステルスよりも動的性能を重視しているとみるアナリストもいる。大型機体は航続距離とともに兵装搭載量でテルスモードのF-35がスより有利だ。だが、最高速度、航続距離、レーダー断面積などの性能諸元は非公表だ。
 ロールスロイスはテンペストのエンジンは適合サイクルターボファンで軽量複合材で作るという。タービンコアの磁石で大容量発電を実現する。
 余裕ある発電容量は指向性エナジー兵器の動力源に最適で、レーザーから高周波まで各種が想定されているのだろう。テンペストでは指向性エナジー兵器を「非運動性」用途に使う想定のようで、敵のセンサーを妨害または破壊するだろう。
 ミーティア長距離空対空ミサイル、SPEAR-3巡航ミサイルがモックアップと合わせて展示され、次世代「深部攻撃」ミサイル(音速の5倍で飛翔する極超音速兵器で迎撃は極めて困難)、さらに大量の小型無人機を攻撃手段とする。パイロットの負担軽減のため、基地には人工知能を搭載し、無人機の制御を最適化するようマシンが学習していく。
 F-35同様にテンペストはパッシブ、アクティブ双方の各種センサーを搭載し、パイロットはヘルメットを通じ状況把握し、これまでのコックピットディスプレイパネルはなくなるかもしれない。「協調型交戦」技術でテンペストはセンサーデータを友軍の機材艦船あるいは地上部隊と共有し、「設定可能」通信装置やデータリンクを使う。これにより一機のセンサーデータが共有され、敵に探知されず別の機体がミサイルを発射できる。
 ただし、F-35のネットワーク接続コンピュータでハッキングの恐れがあらわれたため、テンペストの発表では「サイバーアタックへの対応」が特に強調されていた。テンペストが「有人操縦を選択」した場合にこれが課題となる。つまり同機は遠隔操縦で飛行可能で、パイロットが搭乗する必要はない。無人航空戦闘機材がこれからの航空戦で重要となると見られ、有人操縦は必要な場合に実施される。危険なミッションでパイロットの生命を守る効果が生まれる反面、価格面や性能で有人機より不利となる。
 テンペストが思惑通りに実現するか予断を許さない。テンペストの前にBAEには複座スルス戦闘機構想レプリカがあったが、2005年に打ち切りとなった。そこでの技術的知見からBAEはF-35事業で重要な事業者になった。英国はF-35Bの48機受領をめざし、クィーンエリザベス級空母での運用を予定している。英空軍向けにF-35を90機別途調達する予定もある。テンペストでF-35調達に影響はないと英空軍は強調するものの予算動向は予測し難い。
 ただし、現時点のテンペストはブレグジットで欧州市場から締め出される英国には政治ゲームの駒だ。わずか数ヶ月前にドイツとフランスがダッソーエアバスの共同作業で第6世代ステルス戦闘機「次世代戦闘航空システム」(FCAS)を提唱し、英国企業の参加も呼びかけていた。
 ともに他国へ売り込みが実現しないと高額すぎる事業になる。20億ポンドは大金だが、テンペスト開発が順調に進んだ場合の費用の1割相当に過ぎない。望ましいシナリオは「欧州型」ステルス戦闘機として両事業の統合だ。FCASの想定性能を見るとテンペストに近いことがわかる。
 そうなるとテンペストとは英国の航空宇宙産業にステルス戦闘機を製造する基盤を残しながら、EU加盟国に次期戦闘機開発に加わる誘いの手段となる。現にエアバス・ディフェンスCEOダーク・ホークはテンペスト事業を「歓迎する」と述べている。英国がスウェーデンと提携する可能性の観測が度々でており、BAEがトルコのTAIと提携し同国のTF-Xステルス戦闘機の生産に協力する合意をしたことに注目だ。
 英国、フランス、ドイツが同時に第6世代ステルス戦闘機の実現に向かう格好だが、各国政府が長期に渡る財政支出に耐えられるのか、国際協力のゆくえ、ヨーロッパ初のステルスジェット戦闘機開発との技術課題に応えられるかは時がたたないと答がでない。■

この記事は以下を再構成したものです。

Why Britain's Tempest, And Not The F-35, Is The Future Of Air Combat

Drone swarms, lasers, and more.
April 16, 2020  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: MilitaryTechnologyWeaponsWarJetsF-35Tempest


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