スキップしてメイン コンテンツに移動

F-35よりグリペンに魅力を感じる国とは....

Saab Gripen

空宇宙産業の大手企業で Saab AB ほど特異な存在はない。共同開発が当たり前の現代の戦闘機開発で、小国スウェーデンが自力で輸出競争力のある戦闘機を生産している。JAS 39グリペンは数カ国が供用中でさらに十数カ国で採用の検討対象となっている。

開発の経緯
グリペンの誕生は1979年で、スウェーデン政府がそれまで供用してきたドラケン、ヴィゲンの後継機を国内で開発する決定をしたことが出発点だ。高性能ジェット戦闘機開発の能力を有する航空宇宙産業がある国でもスウェーデンは最小規模で、グリペンは同国の産業基盤を健全に保つ効果も生んだ。▶グリペンは第4世代機 (F-14、F-15、 F-16、F/A-18、 MiG-29、 Su-27) の全盛期に誕生し、各機の開発過程で得られた教訓を盛り込んだ。スウェーデンは意図的にステルス性能を付与しなかった。各国で購入可能な価格帯を実現するためだ。▶初飛行は1988年12月で初期作戦能力を1996年に獲得した。生産実績は306機で、事故で10機喪失している。

特徴 
グリペンの特徴は機体サイズの小ささと第4+世代の他機より低い価格だ。グリペンの単価は60百万ドル未満とされる。Jane’sの報道では運行経費で同機を下回る機種はないとある。▶グリペンはパイロットに優しい設計で有名で、画面表示が簡単に把握でき、インターフェイスが比較的単純だ。武装面ではメテオ空対空ミサイルを世界で初めて搭載し、視界距離外(BVR)兵装として最大80マイルまで敵機を追尾し破壊する。グリペンCではメテオを4発搭載し、グリペンEでは7発になる。▶グリペンEの最大離陸重量は16.5トンで、最大速力はマッハ2かつスーパークルーズを実現。航続距離は1500kmだ。BVR戦とドッグファイトで各機に劣らない。

供用国・検討中の国
Saabがグリペン輸出に成功したのはハンガリー、チェコ、タイ、ブラジル、南アフリカで、入札中はフィンランド、カナダ、ボツワナ、コロンビア、クロアチア、インド、インドネシア、フィリピンの各国だ。その他同機に関心を示す国は多い。▶Saabは技術移転に比較的寛容で、現地企業に一部部品製造を任せている。防衛支出の国内説明がつくので各国政府にグリペンは訴求力のある選択となる。▶ただし英国にグリペン輸出の拒否権があることに注目だ。これはBAEシステムズの関与が理由だ。このためアルゼンチンは同機を取得不能となった。▶グリペンの商業的成功は本質的な性能水準が理由ではないという向きがある。Saabをめぐり賄賂提供の噂が度々出ているが、訴追まで至った例は少ない。ブラジルではグリペン取得から当時の大統領ルーラ・ダ・シルバが窮地に追い込まれた。大統領の息子へ資金が流れたとされ、真相は未解明だ。▶スイスではグリペン22機の導入をめぐり住民投票騒動になり、清廉さを誇るオーストリア、チェコでも贈賄捜査がスキャンダルに発展している。

今後
各国の需要からグリペン生産ラインは今後も安泰だろう。グリペンを「戦闘機の将来像」と表現する向きがあるのは同機の価格帯と相当の性能さらにアップグレードが容易なためだ。「ソフトウェア第一」の姿勢で他機種よりもアップグレードが容易かつ安価に可能となる。▶とくにグリペンEは長期に渡り防空戦闘機として活躍するだろう。

まとめ 
グリペンの実戦投入例はまだない。グリペンは二級空軍部隊の主力で、実戦が現実になっていない各国で低価格から選択肢となっている。とはいえ、そうした各国でも実戦となればグリペンの性能を発揮する場となろう。低価格とあわせ整備が簡単なグリペンは戦闘投入の備えができている。■


Image: Saab.
この記事は以下を再構成したものです。

Not an F-35, But a Beast: Sweeden's Gripen Fighter Is One Heck of a Fighter Jet

Cheap, at least in this case, does not mean bad--or non lethal.
April 3, 2020  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: SaabJAS-39 GripenSwedenFighterCorruption

Robert Farley, a frequent contributor to TNI, is a Visiting Professor at the United States Army War College. The views expressed are those of the author and do not necessarily reflect the official policy or position of the Department of the Army, Department of Defense, or the U.S. Government.

コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ