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★LRS-B事業に適格なのはどちら? 米空軍の選定を前にふたつの主張



LRS-Bは先日のCBSA報告(「米空軍の主力機が大型機に統一される日が来る?」)が次世代の主力戦闘用航空機になるとみる重要な機種ですが、依然として秘密のベールの中で空軍は選定の作業を進めている模様です。以下ご紹介の応援文はそれぞれバイアスが露骨で笑えますが、事実がそれぞれ盛り込まれているのも事実です。であれば三社連合で最良のLRS-Bを実現すればいいのではないかと思えますが、選定は真剣にやってもらわないといけません。選定結果いかんで業界を去る企業が出そうというのがこれまでなかった事態ですが、さぞかし空軍関係者も胃が痛いのではないでしょうか。

Differing Views On Who Will Build The Long-Range Strike Bomber

May 1, 2015 Rupa Haria | AviationWeek.com


米空軍はステルス次期爆撃機長距離打撃爆撃機(LRS-B)の開発生産で主契約企業を今年中に選定する。ボーイングはロッキード・マーティンと組みB-2で実績を有するノースロップ・グラマンに対抗するが、勝者はどちらになるだろうか。
Aviation Week & Space Technologyはその行方を占う二つの見方を紹介する。まずローレン・トンプソン(レキシントン研究所最高業務責任理事)はボーイングとロッキード・マーティンが空軍の爆撃機・攻撃機の95%を提供している事実から両社連合が最良の選択だと主張。一方、ロバート・ハッファ(前ノースロップ・グラマン解析センター長)は空軍の要求水準からみてノースロップ・グラマンが圧倒的に有利な立場だという。

Opinion: The Boeing-Lockheed Team Is The Most Qualified

Apr 30, 2015 Loren Thompson | Aviation Week & Space Technology
米空軍は長距離打撃爆撃機の要求性能で事実上何も公表していないが、契約獲得を目指す二大勢力もともに提案内容について沈黙を保っている。外部からどちらの内容が優れているのか知る由もないが、どちらが有利なのかの評価は可能だ。
では選定の任に当たる関係者だとして、爆撃機の設計ではなく爆撃機開発チームを選ぶとして考えてみよう。選択はボーイングが主導し、ロッキード・マーティンが加わる連合とノースロップ・グラマンが率いる事業体の一騎打ちだ。これまでの実績、現在の技術水準、財務能力や業績からどちらが的確だといえるだろうか。
経験値が違う .
過去三十年間でボーイングとロッキード・マーティンは空軍向け爆撃機・攻撃機の95%を提供している。例としてF-15,F-16,F-22やF-35があり、B-1爆撃機もここに加わる。両社の納入実績は1980年以降で3,000機に上る。現在も両社は固定翼機で最大の納入実績を維持しており、2014年だけで戦闘機、輸送機、偵察機を計300機以上納入している。
対照的にノースロップ・グラマンの実績は小規模だ。この数年で同社は年間10機程度の固定翼機を納入しており、ターボプロップ機とグローバルホーク無人機(UAS)が中心だ。同社の軍事用途需要での役割はボーイングまたはロッキード・マーティン向け機体の一次組み立てが中心だ。
現在の実施能力では
ボーイングはセントルイスに戦闘機製造ラインを運営し、大型軍用機はP-8Aポセイドンのようにシアトル周辺で製造している。同社はあわせて民間商用機で世界最大規模のメーカーでもある。ロッキード・マーティンは第五世代戦闘機の量産ラインを有する唯一のメーカーである。同社のフォートワース工場は三軍向けF-35戦闘機を生産中で、その背景にはボーイングがロッキードと共同で作ったF-22の経験がある。
現状で多くの事業を展開していることで、ボーイング、ロッキード両社には技術陣多数があり、世界規模のサプライチェーンと整備ネットワークもある。ロッキード・マーティンは業界唯一の低視認性機材生産能力があり、業界の中でもソフトウェア応用技術は群を抜いている。ボーイングには複合材を使った大型機の生産では業界一の技術を有している。
ノースロップ・グラマンには以上のどれもない。パームデール工場(カリフォーニア)はUAS製造や既存機の改修にあたり、一次組み立て構造品を出荷している。同社は完成機を大量に生産していないので、サプライチェーンやコスト管理でも業界他社よりも見劣りがする。またリスク管理でも不足が目立つ。ロッキードはスカンクワークスでこの点一歩先を行っている。      
財務力はどうか
ボーイング、ロッキード・マーティンの2014年売り上げ総額は1,360億ドル。ノースロップ・グラマンは240億ドルで4年連続の減収。これだけ規模が離れるとボーイング=ロッキード・マーティンのほうが空軍の計画変更への対応に圧倒的に有利だ。空中給油機事業では空軍の度重なる要求変更にボーイングはKC-46で対応したが、ノースロップ・グラマンは撤退している。その理由は利益確保が難しいためとしていた。
実績の違い
ノースロップ・グラマンはB-2爆撃機生産の実績を強調するが、実は同機は大量の既成技術を使っており、その維持管理が大変である事実は無視している。(飛行4時間ごとにステルス性維持のため18時間の作業が必要) またB-2生産ではボーイングが最大規模の事業量を提供したことにも言及していない。ボーイングは1万人を雇用し、同機の主翼、機体後部、こう着装置、燃料系統、兵装運用部分を製造した。ボーイングはその後ロッキード・マーティンと組み第五世代戦闘機第一弾F-22を製造している。
長距離打撃爆撃機はB-2をすべての点で凌駕する性能となるだろう。要求性能の実現には成熟技術を中心に対応し、ボーイングやロッキード・マーティンには他機種の製造工程から開発製造段階に流用できる基盤がすでにある。これに対してノースロップ・グラマンはF-35のような本格ステルス機のソフトウェアを自社開発しておらず、大型機の複合材利用でも製造上のノウハウがなく各方面で相当の遅れを取り戻す必要がある。
こうしてみると結論は明らかだ。が新型爆撃機の製造で的確なのはボーイング=ロッキード・マーティンでノースロップ・グラマンの選定した場合はリスクがはるかに高くなる。
ローレン・トンプソンはレキシントン研究所の最高業務責任者である。同研究所はボーイングとロッキード・マーティンから運営費用を受け取っている。


Opinion: Stealth And Integration Experience Point To Northrop Grumman LRS-B Advantage

Apr 30, 2015 Robert Haffa | Aviation Week & Space Technology
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ステルス長距離打撃爆撃機(LRS-B)の主契約企業の米空軍による選定時期が近づいている。同機は時と場所を問わず我が国の軍事力の行使を確実にするため必須の装備だ。表面だけ見て専門家はボーイングとロッキード・マーティンの連合とノースロップ・グラマンの一騎打ちと表現しているが、空軍の要求内容を詳しく見つつ各チームの能力水準を見れば、ノースロップ・グラマンがLRS-B製造に圧倒的に有利であることがわかる。以下説明する。
真剣に専念できるのはどちらか.
F-35やKC-46給油機の調達で不手際があったことで空軍は新型爆撃機では終始一貫して集中配慮し、必要な資材を投入する責任ある対応ができる業者の選定を求めている。しかるにボーイング/ロッキード・マーティンは空軍の他機種事業で手がいっぱいだ。ボーイングは給油機案件で予想外の負担を迫られており、ロッキード・マーティンはF-35で大きく遅れを発生させておきながら性能は想定以下だ。そうなると両社にとってLRS-Bの優先順位は低くなり、量産段階に入るKC-46とF-35のほうが利益を出しているはずだ。
実績が裏付ける。空軍がF-22の追加調達を求めたところ、F-35の売り上げ減を恐れたロッキード・マーティンはF-22推進の立場を急にひっこめている。同様にLRS-BのためにロッキードがF-35を断念したり、ボーイングがKC-46生産ペースを落とすことはありえない。むしろLRS-Bをトラブル続く事業のしりぬぐいにするのではないか。これに対しノースロップ・グラマンはLRS-Bに専念し、納期予算どおりの納入が可能な体制になっている。
関連した経験則が必要だ.
空軍の調達責任者は議会に対して新型爆撃機の機体単価は2010年の貨幣価値で550百万ドル上限のままの想定と証言しており、提案競争でも据え置きとなるだろう。ノースロップ・グラマンはステルス長距離爆撃機で開発、製造、維持の経験を有する唯一の企業である。B-2では機体維持費用の削減を実現している。維持費用はウェポンシステムとしてのライフサイクルコストの8割を占めるほどだが、B-2では同程度の大きさの空軍他機種より安くなっている。反対にボーイングとロッキード・マーティンはそれぞれ大型民間機や戦闘機生産の実績を強調しているが、高性能爆撃機を製造し維持することは複雑な作業であり、一貫して責任ある体制と技術力が必要とされる。そこで実績が重要となる。B-2の生産は民間機を給油機に改造するよりはるかに複雑な工程だが、それでもボーイングはKC-46の納入に10年以上かけているがまだ実現できていない。
ステルス関連サブシステムの実績があるのはどちらか
空軍の考えるステルスとは技術と戦術の組み合わせに、サブシステム各種を加えて低視認性を実現するものだ。ノースロップはステルス用のサブシステム多数で信頼の実績がある。ロッキードもF-22およびF-35のステルスレーダーでノースロップを頼りにしたほどで、ステルス通信リンクでも同様で、F-35では別に通信航法システム、赤外線センサー、ステルス空気取り入れ口含む機体中央部もノースロップが供給している。国防総省はLRS-B無人機型も推進するが、ノースロップ・グラマンの無人機空軍向けグローバルホークや海軍向けX-47Bでの経験が有利な要素だ。
ノースロップ・グラマンが有利な理由
空軍はLRS-Bの就役を時間内予算内に実現できる契約企業を求めている。ボーイングとロッキードが連合したのは単独ではこれが実現できないからだ。ボーイングにはステルスの実績がなく、ロッキードはF-35で大幅な遅延を招いている。
全方位ステルス性能では設計がすべてだが、ボーイングが主契約企業になってどのように協力企業の設計を承認するつもりなのか。ステルス戦闘機で設計実績のあるロッキードが経験値をわざわざ提供して自らの優位性を譲ったうえで「第六世代」戦闘機競争でボーイングを有利にするはずがない。
ステルス爆撃機製造の経験が欠如していること、ボーイング/ロッキード共同事業の経営リスクならびに両社が空軍の他機種事業に経営資源を投入せざるを得ないことから両社に次世代の長距離打撃爆撃機製造を任せるのは賢明な選択とはいいがたい。ノースロップ・グラマンなら経験、実績、専念の上経済的に新型ステルス爆撃機を開発・製造・配備・維持できる事業をまとめることが可能だ。そのため同社が受注に成功するのは明らかだ。
ロバート・ハッファは退役米空軍大佐でノースロップ・グラマン解析センター長を務めた。



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