ISRの重要性を本ブログは一貫して主張してきましたが、いよいよ望ましい方向に向かってきました。ただしこれはまだハードウェアの世界の話であり、情報を分析、評価するソフトウェア=高度の知識を持った専門スタッフをこれからどれだけ多く養成できるかが鍵であり、省庁の壁を崩す情報流通、情報利用が必要ですね。期待したいところです。
Japan Boosts ISR Abilities Across Domains
By Paul Kallender-Umezu12:42 p.m. EDT May 11, 2015
TOKYO — Japan's defense budget for 2015 prioritizes intelligence, surveillance and reconnaissance (ISR) improvements as the Ministry of Defense attempts to bolster, in particular, its ability to protect Japan's far-flung southwestern island chain, Nansei Shoto.
日本は平成27年度防衛予算で情報収集・監視・偵察(ISR)能力の向上を重要視し、防衛省は特に南西諸島で拡充を図る。
- 新規ISR事業は一部がまだ企画段階だが空中、宇宙空間でのISR活動の他にあらたに海での活用を加えている。
- 「ISR機能拡充はこれまで該当地区で何が起こっているのかよくわからなかったためだ」と日本戦略研究フォーラムのグラント・ニューシャムGrant Newsham 上席研究員は解説する。
- ISRへの考え方が大幅に変わったのは1998年に北朝鮮がテポドンミサイルを日本上空を飛翔させ、日本国内に大きなショックを呼んだことで、これが小規模な情報収集・偵察衛星群の整備につながった。
- しかし2007年に中国が対衛星攻撃実験を行い、また日本領空・領海への侵入が急上昇して政府国民も改めて衝撃を受けた。
- 「中国がこの数年一層強く主張するようになっており、北朝鮮もミサイル開発、核開発を進める中、この地域はこれまでになく危険な状態になっていると日本は見る。そこで情報を明確に把握することが基本となってきた」(ニューシャム)
- 南西諸島の監視体制を維持するべく防衛省はグローバルホークUAV調達を発表し、艦船搭載型のUAV導入の検討も開始した。さらに防衛省は与那国島に沿岸監視部隊を新設する。与那国は台湾に隣接する。
- 「米国のISRに依存しすぎているとの懸念が日本の一部にあり、自国で能力を整備すべきとの意見があるのは特に中国や北朝鮮を意識してのこと」とニューシャムは言う。「与那国の監視部隊は海上自衛隊、航空自衛隊の支援があってこそ実効性を発揮する」
- 同時に宇宙でのISRも増強する。これは1月発表の新宇宙基本計画で出た安全保障関連の戦略方針を反映するもの。情報収集衛星は現在4基だが10年以内に倍増する。また新型複合用途衛星をISRに使うこともも検討中だ。
- 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は防衛省と共同して新型偵察衛星だいち3号ALOS-3に弾道ミサイル早期警戒センサーの搭載をめざし、ゆくゆくは宇宙配備早期警戒体制の構築で米国を支援するかもしれない。JAXAは戦術レベルのISRへ転用可能な衛星開発に資金を投入しており、電波傍受情報集衛星の整備も検討課題に入っている。
- 「宇宙配備ISRは米国にとっても重要な分野で、米国は全世界での防衛義務を果たすのにこれが不可欠」とスコット・ペイス Scott Pace (ジョージ・ワシントン大エリオット国際関係研究センターで宇宙政策研究長)は言う。
- 宇宙空間の状況把握や海洋状況把握が宇宙配備ISRで鍵となると日米で一連の合意ができており、米国は日本に従来より大きな役割を期待しているとペイスは言う。
- 日本が強化を狙う分野に海でのISRがあり、川崎P-1哨戒機20機の調達が目立つ。同機は高性能の探知識別能力、飛行性能、情報処理能力、攻撃力を搭載し、既存のP-3Cでも性能改修が実施中。.
- また港湾など沿岸の重要インフラの防衛のため「近接型」ISRに注目が集まっているとボブ・ニュージェント Bob Nugent (AMIインターナショナルの提携コンサルタント)は語る。防衛省の研究プロジェクトで少なくとも5案件が無人海中ISRシステムをテーマとしており、中には長距離航行「海中グライダー」、水上艦と水中無人機の協調型通信ネットワークがある。
- この一部は横浜で5月に開催のMASTアジア海洋安全保障展示会へ出展される。NECはUUV向け海中無線電気充電ステーションを公開する。
- ニュージェントは「日本は高性能長距離音響水中聴音機で光ファイバーを応用する構想を検討している」という。「防衛省のその他研究内容には海中パッシブソナーアレイの感度を向上案件もある。日本が海中でISRを強化しようとしているのは明らか」
- ニュージェントは高性能ISR機材には蓄電、充電、放電技術の向上が不可欠と見る。「バッテリーを超えた」エネルギー技術の開発に日本企業が取り組んでいるという。
- 日本が次世代装備品で高い要求水準を想定していることでメーカー各社に新しい可能性が生まれる。JSRマイクロ(JSRの米国法人)の社長エリック・ジョンソンEric Johnsonはこう見ている。
- 「新しいエネルギー貯蔵技術として高性能コンデンサを開発中で、非常に高いエネルギーバーストを放出し、急速充電が可能で遠隔地点に設置する水中センサーや無人機、無人水中機や衛星に応用が可能です。日本が特に強い関心を示す分野で将来の海のISR装備への応用を想定しています」
- 「高度ISRで日米防衛協力に日本から一層高い貢献が可能となり、日本には有望なISRハードウェアがありますが、これまでは一貫したISRネットワークを国内に構築しておらず、今後はすべての情報源を活用し、正しく評価し、分類の上エンドユーザーに配信することが必要でしょう」とニューシャムは語る。■
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