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韓国へのTHAADミサイル迎撃システム配備は焦眉の急


今日の韓国は日本から見ていて不安になる状況です。AIIB問題でも躊躇なく中国の主張を受け入れ参加を表明しました。とくに国際政治に国民感情を持ち込んだことで一層混乱をしているように写ります。文中にあるようにミサイル防衛装備の主目的が韓国国内の米軍基地の防護にあるのは明らかですが、だからといって国民を防衛しない新ミサイル防衛装備を受け付けないとすれば、米軍の抑止力効果を減じることに自ら手を貸すことになり、北朝鮮・中国の利に叶うことになるのがわからないのでしょうか。 

Save Our Seoul: South Korea Needs THAAD ASAP For Missile Defense

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on May 06, 2015 at 4:00 AM
WASHINGTON: 現在の北朝鮮に米国を核攻撃する能力はない。しかし年少の独裁者金正恩 Kim Jong-unの手元には約1千発の弾道ミサイルがあり、韓国はもちろん日本へも核攻撃が可能だ。一斉発射された場合、朝鮮半島内のミサイル防衛は「悲痛なほど能力不足」を露呈するとペンタゴンの戦略専門家ヴァン・ジャクソン Van Jackson は述べている。このシナリオでは陸軍のペイトリオットと海軍のイージス艦では韓国内の米軍基地の防衛は不可能であり、同盟各国の都市部については言うまでもない。
  1. 北朝鮮で軍備増強が続く中で「ますます危機的状況に近づいており、この流れを止められるものはいない」とジャクソンは見る。
  2. そのため韓国内でミサイル防衛体制を整備する必要があるとジャクソンは言う。ジョエル・ウィット Joel Wit (国務省で朝鮮問題調整官をつとめた)とジョン・シリング John Schiling (Aerospace Corporationで科学主任)が 38 Northのプレス向け朝食会でジャクソンに加わった。解決策として第一段階はTHAAD部隊を展開し、ペイトリオットより長距離で有効なレーダーや迎撃手段を持ち込むこと。長期的にはこの三名の専門家はレーザー兵器やレイルガンも威力を発揮する可能性があるが、あくまでも隙間的な使い方であり、まだ実用の域に達していないと指摘した。
  3. THAAD配備の可能性を言うだけで韓国では物議を醸しており、中国の威嚇があることをジャクソンも認める。しかし、ソウルで「韓国のダボス会議」と称されるAsan Plenumから帰国したばかりのジャクソン(新しいアメリカの安全保障を考えるセンター上席研究員)によるとTHAADをめぐる政治力学は変わりつつあるという
  4. 「韓国はTHAADの受け入れに六か月前より前向き」とジャクソンは言う。これは米国外交が実を結んだのではなく、(実際に米国はまだ配備の提案もしていない)、中国があまりにも高圧的な態度を示したためだ。中国は露骨にTHAAD配備させないよう韓国に働きかけており、反動で韓国は以前より同ミサイル配備を受け入れやすくなっている。
  5. とはいうもののジャクソンも「大きなきっかけがないと韓国もTHAAD配備を申し出てこないだろう」とみており、例として北による第四回核実験を想定している。北朝鮮の挑発的な動きは予測がつかず、その分だけ大きなきっかけになるかもしれない。
  6. だが北朝鮮と中国はTHAAD配備を挑発的な動きととらえないか。地域内軍拡を引き起こし中国やロシアが米国製ミサイル防衛を打ち負かす新兵器の開発にすすむのではないか、との質問が会場から出た。
  7. 「その事態はすでに発生している」とジャクソンは中国やロシアが極超音速兵器の研究をしている事実を指摘した。両国の軍事装備への投資の前提は西側との軍事衝突発生だ。韓国でミサイル防衛を強化してもこの前提への影響は僅少だろう。
  8. ただシリングは中国と朝鮮半島を舞台にした軍拡になれば、米国と韓国には勝ち目がないという。「中国は北朝鮮に低性能ミサイル部品を大量かつ迅速に搬送するでしょう。THAADやペイトリオット増備のペースを上回るはずです」 また北朝鮮は闇市場から旧式ロシア技術を輸入していることもあり、「第二砲兵隊(ミサイル部隊)増強に走るか、その双方を実施するだろう」
  9. 中国は米国によるミサイル防衛を不安定要素と見ている。Asan Plenumの席上で中国側参加者はTHAADは攻撃手段で脅威とみており、北朝鮮国内を飛び越え中国領土まで射程に収めることを問題していたとジャクソンは言う。技術的には正しいが、議論がずれている。THAADのレーダーや迎撃ミサイルは飛来するミサイルへの対応策であり、地上攻撃やスパイ活動はできない。
  10. 「THAADで中国をのぞき見することはできない」とジャクソンは言い、「中国はXバンドレーダーで今までは不可能だった監視活動ができるといわんばかりだ」
  11. THAAD迎撃ミサイルは理論的には中国機も目標にできる。ミサイル防衛システムは防空用途にも使えるのが普通だが、仮に軍事休戦ライン上から発射しても、中国の領土奥深くへ到達できない。
  12. “The impression I have, the impression that many of the South Koreans shared, the impression that the Chinese gave, was that pressuring South Korea to not allow the deployment of THAAD had nothing to do with military operations,” Jackson said. Instead, he said, the Chinese were worried about the political significance of THAAD as barometer of US-South Korean relations: “The deployment of THAAD is an indicator that the alliance is still functioning.”
  13. THAADが米韓関係のバロメータになることを中国が心配しているという。「THAAD配備になれば同盟関係が今も健在ということになる」 ウィットも「米韓同盟の強化につながる要素を中国が支持するはずがない」という。
  14. それでも中国は北朝鮮の軍備増強を問題視している。ジャクソンは会議で中国側参加者と話してみて、「北朝鮮による核ミサイル開発を非常に問題視している」ことがわかったという。ただし中国側は米国が外交的解決に専念すべしと考えており、軍事抑止力ましてや先制攻撃に出ないことを期待している。
  15. ただし北朝鮮向け外交で成果が少なすぎるという欲求不満が数十年に渡り続いている。北朝鮮外務省には交渉の権限がわずかしかなく、軍部には外部との折衝の経験も能力も不足しているとウィットは指摘する。ウィットは北朝鮮との交渉経験が豊かだ。
  16. 一方で危機的状況はゆっくりながら増大している。「最近は進展がないことには驚かされるほどだ」とシリングは共著者ヘンリー・カンと「北朝鮮の核兵器運搬システム」“The Future of North Korean Nuclear Delivery Systems.”の中で著している。北朝鮮のミサイル技術改良は近い関係だったイランやパキスタンと切り離されて久しい。
  17. そこで北朝鮮の兵器体系は旧ソ連の技術に依存している。保有ミサイルのほとんどが1960年代のスカッドを発展させたものだ。ノドン(「スーパースカッド」)は韓国全土と日本の大部分を射程に収めている。本体サイズが小さく洞穴などに隠して空爆を生き延びる事が可能だ。現時点でも核兵器を搭載できる可能性がある。
  18. だが北朝鮮が開発中の兵器はもっと強力だ。
  • テポドンとして知られる銀河Unhaは4回の打ち上げで成功は一回のみだが、全世界に核兵器を落とす可能性がある。ただ液体燃料搭載に数日かかり、発射前に警戒が可能。北朝鮮のミサイルは液体燃料式が大部分で発射直前に燃料を搭載する必要がある。米国の固体燃料式ミサイルではサイロの中に数年間保管できる。
  • ムスダンはソ連時代の潜水艦発射型ミサイルをトラック搭載ミサイルに改良したもので推定射程距離は1,500ないし2,000マイルとグアムを狙うことが可能とシリングは見ているが、試射は一度もない。
  • KN-08は次世代ミサイルとしてテポドンとムスダンの最良の部分を利用していると言われる。その開発意図は移動発射台搭載用に小型化しながら射程5,625マイルを実現し、米国西海岸を射程に収めることだ。ただしKN-08の試射は実現していない。実際に大陸間弾道弾をテストする空間的余裕は北朝鮮国内には存在しない。実施するとすれば海洋に向けて飛ばし、待機する艦船がデータを集めるしか方法がない。
  • また北朝鮮が潜水艦発射型ミサイルの入手に走っているとの報道がある。ただし水中発射を成功させるのは困難で北朝鮮の潜水艦には航続距離の点で限界があり、米国を攻撃できる地点までの航行は無理だ。

  1. 短期的には未検証かつ信頼性の低いミサイルが極少数の米国に届くかもしれない。それでも核弾頭が付いているとしたら十分に米国を混乱させることに成功するだろう。ただしその程度の脅威だと現時点の米防衛体制が想定範囲内にあることは確かだ。
  2. 対照的に韓国のミサイル防衛を制圧することは今でも十分に可能で、今後悪化する一方だ。この流れを覆す新しいミサイル防衛のモデルは成立するだろうか。この質問への専門家の見解を明日以降の記事で紹介する。■

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