エアシーバトルのころから米陸軍が太平洋で任務があるのかわからなくなっていましたが、ハイテク沿岸ミサイル砲兵隊への転換と積極的な役割を想定し、防御より抑止力を重視するというのが今回の議会から提案の構想のポイントでしょうね。ロールモデルの変換に陸軍の内部で抵抗があるのでしょうか。
SASC Pushes Bigger Army Role In Pacific Vs. China
- WASHINGTON: 上院軍事委員会も太平洋で米陸軍の役割拡大を太平洋で求める動きに賛同している。だが皮肉にも陸軍はその気になっていない
- なぜ陸軍が太平洋で役割を拡大すべきなのか。太平洋はこれまで空軍、海兵隊、海軍の独壇場であった。太平洋は広大な海洋であるが、島嶼も多数ある中で大規模な島嶼国家(日本、フィリピン、台湾)と米国は条約を取り交わしている。陸軍のミサイル防衛レーダー(レイセオンAN/TPY-2)は日本に配備済みで、韓国にTHAAD弾道弾迎撃ミサイルを導入する可能性もある。
- だがなぜ防衛装備にとどめるのかと議員連は疑問を呈する。その中には下院のシーパワー小委員会委員長ランディ・フォーブスがあり、中国の第二砲兵隊へ米国本土を攻撃可能な長距離陸上配備ミサイルがすでに導入されており、米海軍艦船の攻撃も可能だという。であれば米国と同盟国も陸上配備の対艦ミサイルを配備すればよいとの主張だ。実現すれば中国が尖閣諸島やスプラトリー環礁の奪取に向かってくるのを抑止あるいは撃退できるというのだ。
- フォーブス議員に押される形で下院版の国防予算執行認可法案ではペンタゴンに「対艦攻撃用の移動式陸上配備装備の導入可能性、有益性、選択肢を」報告させることにしている。チャック・ヘイゲル前国防長官もこの発想を同意していた。
- だが上院法案はもっと先に行っている。米陸軍部隊が西太平洋の島嶼部分で将来的に担うべき任務の総合作戦評価を行い、接近阻止領域拒否l(A2/AD) 能力を受入国と共同で実現し、該当領土への侵攻を抑止挫折させる任務を想定する。以下想定する装備の一覧。(イタリックは編集部のコメント)
- 「(A) 対艦機雷および移動式ミサイルを敵海軍部隊の威力減衰手段として想定し、敵揚陸部隊の移動を封じ、受入国沿岸および友好国海軍部隊と補給活動を守ること (米海軍は第二次大戦で機雷により日本の海運に致命的被害を与えたのは事実だが、その後この機能をほぼ停止している)
- 「(B) 移動式防空監視およびミサイル発射システムで受入国の領空、領土、海軍及び空軍部隊を守る。ならびに防空圏への敵勢力侵入を認めないこと」(海軍のイージス艦のミサイル防衛任務が拡大しているが、海軍としては陸上に防衛手段が展開されるのであれば、艦隊をわざわざ連携させて友好国の領土を防衛することに及び腰となる。)
- 「(C)電子戦能力で航空作戦、海軍作戦を支援すること」(海軍の電子戦能力は陸軍より相当先を行っているが、海軍作戦部長は陸上装備のほうが規模、出力ともに大きくできると発言している。)
- 「(D)強化型陸上設置通信能力を受入国の防衛体制に設置し、陸海空間並びに衛星を介した通信を拡充すること」(無線通信の妨害や傍受がハイテク型戦闘で大きな懸念材料で旧式ながら埋設型の通信線が有力代替手段として注目されている。)
- 「(E) 部隊展開で受入国の防衛を支援するとともに、敵勢力の移動を封じ、空海の部隊展開を安全に進める」(この項目だけが古典的な陸軍部隊の投入効果である領土保全活動である)
- 上院版は著名な総合評価局Office of Net Assessment および四軍それぞれの大学校含む専門家による研究評価を求める点が下院版と異なる。
- 「比較的小規模の予算で米アジア戦略を格段に向上させる構想です」とある上院スタッフが記者に説明している。「低コストでアジア太平洋で対応する中国に高い代償を与え、ジレンマを感じさせる案が必要です。移動式、陸上配備、制海権確保、防空能力はそれぞれ簡単な解決策です」
- 「共和民主両党のスタッフで検討し、結論を共有しています」「超党派合意ができ、各シンクタンクも陸軍はこの方向に進むべきと考えていますが、陸軍が食指を動かしていません」
- 「米地上軍は現状にこだわるよりもこの方向性に向かって装備能力を整備すべきです」と下院スタッフも意見は同じだ。「陸軍には大きな機会になり、陸上部隊固有の能力を整備し、西太平洋で新しい任務にあたることができます。どうして陸軍内部で関心度が低いのか理解に苦しみます」
- 沿岸砲兵隊とは第二次大戦以前は陸軍の主流であり花形部隊だった。21世紀は対艦ミサイルを沿岸に配備して復活するわけだ。最新の陸軍の作戦実施要領でも「将来の陸軍部隊は陸上から海上に、空に、宇宙に、さらにサイバー空間に向け兵力投射をする」とまで書いてある。
- だが「ドメイン横断型シナジー効果」や「アジア重視」は戦略上の議論であり、予算管理法は現実だ。陸軍が沿岸配備ミサイル部隊を編成する予算を確保できないとすれば、別の部隊を削減する必要が生まれる。「陸軍沿岸砲兵隊とは面白いが、創設するのであればどこを犠牲にするのだろうか。歩兵部隊なのか、野戦砲兵部隊なのか、それとも短距離防空部隊なのか」
- 陸軍は他軍より苦しい状況にあり、そこで全く新しい部隊の創設にはおじけづいてしまう。だが陸軍に新任務ができれば、予新しい財源も出てくるはずだ。■
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