The 7-11 For Robot Subs: Underwater Plug And Stay Hubs
空港でスマートフォンの充電場所を探すのに苦労したことがあれば、充電場所を海中で探すのがどれだけ大変か想像できるだろう。
- 海軍の無人ミニ潜航艇を想定してほしい。中国の人工島を監視しバッテリー残量が減ってきた。現在だと一度陸上基地あるいは水上艦まで戻り充電する。だがもしマイク・ワードロー Mike Wardlawの構想が実現すると、2020年代に海軍は無人海中ポッドを展開し、探知される心配はなく自動的に充電する。同時に収集した極秘情報を海軍の情報ネットワークにアップロードできる。
- 「海中のセブン-イレブンになります」とワードロー(海軍研究所FDECOの研究主幹)は言う。FDECOとは「前線配備エネルギー通信拠点Forward-Deployed Energy & Communications Outpost の略。無人潜航艇(UUV)が横付けし、充電し、データをアップロードし、新しい任務をダウンロードして出発する。
- 「UUVの制約条件は電力と通信機能だ」とポール・シャーレPaul Scharre(新しいアメリカの安全保障を考えるセンターで20YY戦闘構想を主宰)は言う。FDECOなら両方を解決できる。
- 基本的問題は電力だ。大型潜水艦はディーゼルエンジンあるいは原子炉で電力を確保しているが、ロボットミニ潜航艇はバッテリー頼りで重量あたり出力は小さい。そこでUUVで長時間航行すれば船体が大きくなり、それだけ建造費が上昇しかつ敵探知を受けやすくなる。
- 課題は通信機能だ。通常無線は水中に届かない。超長波や音波は長距離を伝播するが帯域が狭くなると元海軍次官ボブ・マーティネージ Bob Martinage は説明する。新技術である通信レーザーやLEDを使うと帯域を広くとれるが有効距離が短い。海中にFDECOのような拠点があればマーティネージはいいとこ取りができるという。UUVは短距離広帯域でデータをFDECOに転送するが、その間も充電が続く。次のUUVが到着するまでにFDECOはデータを長距離低帯域手法で送信すればよい。
- ネットワークを展開場所はどこがよいか。ペルシア湾の限られた水域では真価は発揮しないだろう。米軍や同盟国部隊が手の届く範囲に展開しているから、とマーティネージは言う。北大西洋のように広い海域だと有益だろう。ロシアの動きには要注意だ。だが最も有益なのは太平洋だ。
- 先日南シナ海で発生した事態こそFDECOが真価を発揮する機会だ。海軍のP-8ポセイドンが中国の人工島建設状況を監視していたところ、中国は無線で同機に「自国の」空域を退去するよう求めてきた。(国際法では人工島嶼の建設で領有権主張はできない) これ以上の事態にはならなかったが、過去には中国機が米偵察機に迎撃をかけて、危険な接近飛行を置こなている。最悪だったのが2001年の海南島上空での空中衝突で米軍機乗員は11日間も身柄を拘束されている。
- 無人システムは文字通り乗員がおらず捕虜になる心配はない。無人水中艇は小さく、通常の潜水艦より探知は困難だ。一方、潜航艇では航空機と同等のセンサーは搭載できないが、ステルス性により政治的に過敏な地帯に潜航していても問題化しないだろう。UUVは見つからずに、また人命を危険に追い込まずにデータを収集し続けられる。さらに複数のUUVを投入すれば終日監視が可能だ。これはFDECOが近隣にあるのが条件だが、航空機では不可能な仕事だ。
- 「大量のUUVを一定の場所に投入し続けることは可能。無期限と言ってよいが一部で機械的な補修が必要となるので交代させる必要がある」「UUV部隊を展開し数日間程度の短期間偵察ミッションを行い、回収し、再充電させ、データを送受信させてから送り出すことができば、相当に強力な存在になるだろう」(シャーレ)
- ただしFDECOがあってもUUV単独で戦闘に勝つことはできない。現時点での能力は情報収集、監視、偵察ミッションに限定される。そこでUUVを武装しようとすると船体の小ささや操作員との連絡ができなくなることから相当の難題だ。またUUVの速力は相当遅く、水上艦追跡を広い海域で行うのには無理があるとマーティネージは言う。
- FDECO支援を受けるUUVで一番使い道があるのは長期監視活動やその他作戦で持続力が速度より重視される場合で、例として機雷除去がある。ではロボット艇で海上封鎖は可能だろうか。「UUVだけで封鎖は困難かもしれない。そのためにはリアルタイムでの個艦制御と攻撃作戦の実施能力が必要だ」「ただし艦船を発見追尾することはできるが、封鎖に当たる別の艦の支援が主になる」(クラーク)
- 一匹狼の潜水艦による単独任務は今後は有人潜水艦、UUVを海底インフラにより結んだ部隊が引き受ける。海底インフラには隠蔽式ミサイル発射管も含まれよう。すべてを接続し、その他水上部隊とも連絡し、空中や宇宙のほか陸上も通信範囲に入る。FEDCOの展開には海軍水上艦艇のほか極秘契約の民間船舶を使い、然るべき地点に投入すれば良い。
- では海軍はどのように充電通信拠点を海中に展開するのだろうか。FDECO網構築は実際にはまだ開始されていない。
- 「事業は公式には2016年度に開始になります。15年度は資金を確保し初期分析活動を開始しました。また艦隊部隊との対話を通じ真のニーズを把握しました。15年度の総合研究から設計内容の評価を行いました」(ワードロー)
- FDECOは革新的海軍試作事業の枠組みで海軍研究所が進めており、予算規模は「年間数千万ドル程度」だとワードローは言うが、詳細な金額は明かさなかった。予定では年間に大規模実験2回を行い、さらに大規模の「実証」を2回行うという。「一回目は17年末、二回目は19年末」だという。
- 先日は業界向け説明会があり、UUV関連企業を集め、FDECOで必要となる業務の実施を求めた。
- 「事態は複雑です。各企業が独自の接続方法を採用しており、各メーカーのUUV充電方法も統一されていません」(ワードロー)ので「機種問わない」充電ステーションで各種UUVへの充電の実現は難問だ。ましてや全機種対応はもっと大変だ。「100%の解決方法にこだわらない」とワードローは言うが、FDECOの設計に柔軟性をもたせ将来の新しい接続方法に対応させるとし、「インターフェイスに焦点を合わせています」
- 「UUVは決して安い買い物ではなく、対応した改修をしていくと相当の予算が必要になります」とワードローは述べる。目標はUUVで必要になる改修を最小限に押さえることだが「改修そのものが不要になることにはならないだろう。各メーカーが独自のインターフェイスを持っているから」
- ワードローはインターフェイスと構成部品に焦点を合わせているが、その後各要素を単一のシステムに統合していく。そのためFDECOがどんな形状になるのか今は予想がつかない。設置場所により形状が異なるのではというのがワードローの見解でミッションによっても異なるだろう。例えば地中海では小型で通信能力も限定的でいいが、広大な太平洋ではそうはいかない。
- UUVがFDECOに戻ってくると双方のコンピュータが戦術データの共有を開始し、人的操作により与えられたミッションと照合させる。FDECOには複数のUUVがデータを送信するのでFDECOは作戦の調整統合機能も果たす。
- たとえば「低周波ソナーで広範囲の探索をしたいとする。だが低周波ソナーは高解像度画像では最良の選択とはいえない」(ワードロー)「UUVが低周波ソナーで何かを見つけたとすると、FDECOを介して高周波ソナーを持つ他艦と通信し、フォローアップを頼めば良い。これはほぼ自動的に完了する作業だ」
- 映画ターミネーターでは戦略目標による戦闘を自動的に遂行するスカイネットが登場したが、これはそこまでの規模ではない。ただFDECOがUUVの大群を調整すると大きな一歩となりそうだ。その結果戦闘に人間が介在しなくなるのは良いことでもあり悪いことになるかもしれない。■
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