新ガイドラインは日本国民にも国境線と利益線の違いをちゃんと理解することを求めているようです。いろいろな可能性がこれから現実化するでしょうが、南シナ海での海上自衛隊のパトロールがすでに実施の検討に入っているようです。また宇宙・ISR機能の重視がこれから本当に必要になりますね。本ブログの趣旨にも合致します。
Inside the New U.S.-Japan Defense Guidelines
By: Kyle Mizokami
April 29, 2015 10:50 AM
今週月曜日に日米両国が同盟関係をこれまでの50年から大きく変容させる合意に到達した。いわゆる「2+2」安全保障高級事務レベル協議 Security Consultative Committee (SCC) に米国務長官、国防長官、日本の外務、防衛両大臣が参加し防衛、安全保障でより緊密な関係を実現することとなった。
- SCCが合意したいわゆる日米防衛協力ガイドラインは1960年締結の日米安全保障条約を補完する。目標はいっそう緊密で切れ目のない協力関係を二国間で実現することで安全保障問題では 弾道ミサイル防衛から相互物資補給支援やサイバー戦まで含む。
- 両国のメリットはなにか。米国には自衛隊が米国資産の防御でき、米側と密接に共同作業できるようになるのが一義的な恩恵となる。日本にとっては自衛隊に課してきた制約を解き放ち、安部首相のいう普通の国の安全保障体制の中で軍事力を行使できるようになることだ。
- 日本の現行憲法は米国法律家が第二次大戦直後の環境下で起草して、軍事力整備および武力行使を厳格に制限する第九条が特徴だ。
- 憲法の足かせが長く日米同盟に影を落としてきた。戦闘任務で自衛隊は米軍部隊に海外では合流できず、日本の権益が危うくなっても同様だった。新ガイドライン以前に日本部隊は米軍部隊や米国領土の防衛に就くことはできなかった。ただし例外として日本から1,000カイリ以内なら米艦船の護衛はできる。
日本防衛
- 日米同盟の礎は両国が力を合わせて日本の防衛にあたることだ。新ガイドラインでは日本が攻撃を受けた場合、まず日本が主体的に自国防衛にあたるとし、周辺海域や空域も対象に海空からの侵入に備えるとしている。化学・生物・核(CBRN)兵器攻撃も含む。米国は日本を支援し補完的な役割を果たす想定だ。
- 新ガイドラインは攻撃任務は米軍部隊が実施すると暗示している。「米国は日本防衛に資する方法で地域環境を形成すべく行動し、平和と安全を回復させる」としている。これは戦闘状態の終結につながる攻撃的な行動であり、自衛隊では憲法上実施不可能な活動だ。
「政府全体」レベルの二国間協力
- 新ガイドラインでは「政府全体」のアプローチとして民生、軍事両面で連携を求めている。新たに同盟調整メカニズム Alliance Coordination Mechanism として両国部隊間での調整手順を合理化し強化することを提唱している。同メカニズムで情報・諜報の共有が進み、両国による緊急対応策の策定や二国間演習が円滑に行われる。
- これとは別に新しく二国間計画立案メカニズム Bilateral Planning Mechanism で共同作戦の調整立案を図る。自衛隊から米軍に連絡員を派遣し、米軍も逆に日本へ派遣する。
- 日米両国は情報収集監視偵察(ISR)分野での協力も強化し、無人・有人偵察機からの情報の共有と保護に務める。日本が将来配備するRQ-4グローバルホークや米側のRC-135偵察機が集めた情報が対象となる。「二国間ISR活動」で「連続した監視」を日本および地域への脅威対象を相手に行うことも合意された。
弾道ミサイル防衛
- 北朝鮮の核兵器貯蔵量の推定が見直されたが、中国も相当の核・通常兵器搭載の弾道ミサイルを多数保有していることが日米で共同作業を強化する背景だ。
- 日本は日本国内の弾道ミサイル防衛を主要任務とするが、米国が支援を提供する。BMD関連のデータを二国間でリアルタイムで共有し、弾道ミサイルの発射を早期探知する。新ガイドラインは相互運用にも言及している。
- 両国は早期警戒能力を整備し、想定脅威を探知にあたるネットワークを拡充する。米国製AN/TPY-2Xバンド監視レーダー2基が日本国内で稼働中だが、今後は日本南部に拡充し、琉球諸島への配備も想定される。
相互防衛
- これまでの日米同盟では自衛隊が米軍や米国領土の防衛にあたれないのが不満のたねだった。日本も普遍的な自国防衛権を主張し、他国防衛は不可としてきた憲法の解釈変更に取り組んでいる。
- 報道によれば新ガイドラインで日本部隊は米国を標的とした弾道ミサイルを撃ち落とすことが許されるというが現実はそんなに簡単ではない。
- 新ガイドラインでは相互防衛が認められる。「自衛隊と米軍部隊は相互防御をそれぞれの資産assetsを対象に適宜行い、日本防衛に資する活動を協力的におこなう」とある。非常に曖昧な表現であるが、「資産」とは実質的にすべてで、米海軍艦艇から米国の都市まで広く含まれる。
- 新ガイドラインを厳格に解釈すれば自衛隊がアメリカの国土を防衛できる場合は日本防衛から派生する事態に限定される。つまり米国が北朝鮮と一対一で対戦し日本が巻き込まれないと自衛隊の弾道ミサイル防衛は手出しができない。
日本国外での協力体制
- 従来の日米同盟の実施範囲は日本国領土に限定されてきた。新ガイドラインで両国は世界を視野に入れる。「同盟は日本の平和と安全保障に重大な影響を及ぼしかねない事態に対応していく。そのような事態は地理条件の制限を受けない」
- シナリオの一つに朝鮮半島からの非戦闘員の退避作戦がある。韓国国内に日本国民が常時33千名おり、観光旅行の繁忙期には100千名まで増える。安倍首相はくりかえし日本政府は有事の際に邦人退避をさせると言明している。
- 日本政府関係者は有事の邦人退避に韓国政府の支援は期待できないと結論づけており、韓国も主権の観点から自国内への自衛隊の展開は認められないとしている。そうなると米艦船、航空機を使う邦人避難が日本韓国双方の選択肢になるだろう。
その他分野
- 兵站補給:両国間の協力は補給活動にも広がる。新ガイドラインにより両国は相互に補給支援活動を現地で提供する。補給、整備、輸送、設営、医療活動が含まれる。日本は同様の合意をオーストラリアと2010年に締結している。
- 日米の防衛装備品では相当の共通化が進んでおり、水上艦向けGE製ガスタービンエンジンからF-35戦闘機に及ぶ。新しい兵站補給支援での合意で両国は共通化を利用し補給や整備で援助しあう。
- 海上作戦: 新ガイドラインではISR、訓練、演習を海洋関連の協力活動として特記している。新ガイドラインは海上作戦での協力を強調し、両国は「密接に協力し合い国際法に則り海洋秩序を維持する。航行の自由も含む」としている。最後の部分は南シナ海の主張を力で実現しようとする中国への間接的な言及であり、海上自衛隊が南シナ海で活動を展開する想定を示しているのだろう。実際に今年1月に第7艦隊司令官ロバート・トーマス大将がこの方向性を支持している。
- 宇宙空間: 日米同盟は宇宙空間にも展開される。目的は 「責任ある平和的かつ安全な宇宙の利用」だ。両国は情報を共有しつつ宇宙空間の脅威対象に対応し、宇宙配備の海洋監視で協力し、さらに「宇宙システムズの能力向上と弾力性の強化につとめる」
- 具体的には両国は「宇宙配備の早期警戒体制、ISR」で情報共有を進め、「衛星の配置、航行、時間調整」でも同様とし、「気象観測や指揮命令統制通信」も共有し、「作戦遂行上不可欠な位置づけの宇宙システムズの回復力を確実にする」としている。
- サイバー空間:新ガイドラインで日米両国はサイバー空間でも脅威対象と脆弱性について情報共有をする。両国は共同で重要インフラの防護にあたる。民間業界と協力し秘匿情報の保全をめざす。そのため訓練や教育を共有する。
- サイバー攻撃も他の攻撃と同様に日本が主体的に自衛隊で防衛をし、米軍が支援に回るのは共通だ。
結語
- 日米の合意内容の大部分は同盟関係の進化に伴う漸進的変化だ。日本にとっての意味が大きい。相互に自国防衛をうたう中で日本も一定の条件で防衛支援を提供できるようになる。米国が提供するリソースの規模と引き受けるリスクの大きさを考えればこれでやっと公平になる。
- 同盟関係の新しい可能性が開く。共同作戦立案、共同作戦や国家戦略レベルでの情報交換などだ。新ガイドラインが日本国憲法が定める武力行使の範囲をめぐり緊張を招くことはあるが違反にならないのはほぼ間違いない。安倍首相は最終的に第9条を廃止したいと思っているかもしれないが、新ガイドラインでとりあえずその可能性は先送りとなろう。■
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