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★レーザーやレイルガンでソウル防衛は可能か?



「韓国へのTHAADミサイル配備」の続編です。考察を加えれば加えるほどミサイル防衛は完全ではない、であれば積極的な攻撃で数を減らしてしまえ、という展開です。やはり防衛だけでは勝てない、ということでしょうか。北朝鮮にとっては一番怖いのは先制攻撃を受けることではないでしょうか。とはいうものの、北朝鮮の攻撃で韓国、日本の一部都市部が消滅することが起こらないように祈るしかありません。そもそもそんな攻撃をすることで北朝鮮にとっても何も得になりませんが、軍事論理の世界ではやはり考えておくべき想定なのでしょうね。

Save Our Seoul: Can Lasers & Rail Guns Protect Korea?


By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on May 07, 2015 at 12:33 PM
Experimental Navy laser海軍のレーザー試験装置
WASHINGTON:  ミサイルが1,000発を阻止できるだろうか。現時点のミサイル防衛では不可能。今の想定は不良国家の小規模発射に対応すること。だが中国の第二砲兵隊ミサイル部隊はともかく、北朝鮮でさえ大量のミサイルを発射して迎撃ミサイルを圧倒できる。
  1. このため軍、産業界、学界で阻止方法の確立に懸命になっている。レーザーのように弾薬切れのない兵器もあるが、北朝鮮の脅威は新兵器にとっても高難易度の対象だ。
  2. 北朝鮮はまだ米西海岸攻撃はできないが、弾道ミサイルはすでに1,000発近く確保しており、韓国や日本各地が攻撃射程に入る。大部分は通常弾頭だが、専門家の多くが北朝鮮はすでに核弾頭の搭載が「技術的に可能」と見ていると核問題交渉にあたってきたジョエル・ウィット Joel Wit が述べている。
  3. 核搭載ミサイルはたくさん飛来するミサイルの一部かもしれないが、瞬時に区別できず数に限りがある迎撃ミサイルを振り向けていいか判断できない。いってみれば高性能爆発物のわらの山の中から核の針をさがすようなものだ。さらに財政が苦しい北朝鮮にとって経済的な理由もある。通常弾頭付きスカッド・ミサイルの生産コストは迎撃ミサイルよりはるかに安価だ。ではレーザーやレイルガンのような新技術でこの状況を打破できるだろうか。
Navy rail gun test海軍のレイルガン試験風景
  1. 専門家の半数は可能と見る。ただし、ある程度までであり、正しい戦術を使った場合に限る。
  2. 「指向性エネルギー兵器には大きな可能性がありますが、まだ構想段階です」と語るのはペンタゴンで戦略を練ってきたヴァン・ジャクソンVan Jackson だ。ウィットともに38 Northの報道陣向け朝食会で講演した。
  3. 「長期的には有望な技術になる」と Aerospace Corporation のジョン・シリング John Schiling  も同意する。(Aerospace Corporationは全米有数の安全保障関連宇宙技術者や情報部門経験者多数が勤務する国の宝のような組織である) 「米国は新技術を近距離戦術用に投入しようとしており、レーザー兵器で海軍艦艇の防御や短距離ロケット弾の迎撃を想定しています」 これでは韓国の都市部を防衛するには範囲が小さい。「北朝鮮の戦略級ミサイルへの対向手段はなにも開発していないのが現状です」
  4. なぜレーザーやレイルガンが近距離でしか有効な兵器にならないのか。ペンタゴンの予算方針だけが理由ではない。中心は物理法則だ。
  5. レーザーの根本的な問題は光線であることだ。光は直線移動する。目視できれば全てに命中するが、見えなければ不可能。反対にミサイルや砲弾は弧を描き水平線を長距離移動するので、見えない目標だといえる。(レーザー光線の方向を変更できるのは高性能ミラーを正しく配置した場合か、太陽と同等の強い重力場だけで、両方とも戦場での利用は期待できない) 巡航ミサイルのように低高度で飛行する目標は10マイルほどに接近するまで水平線に隠れるが、地形やレーザー発射台をどこまで高くできるかでこれは変わる。したがってレーザー兵器には物理的な成約がついてまわり、広範囲の防御は不可能だ。
  6. さらにレーザーの破壊効果は高熱で実現するが、巡航ミサイルや戦術弾道ミサイルの破壊には300ないし500キロワット級のレーザーが必要で、完成はまだ数年かかる。長距離弾道ミサイルの場合は宇宙空間から大気圏に突入するため弾頭部分は再突入時の高熱に耐える設計なのでレーザー光線の強度などへのかっぱなのだ。
  7. ではレイルガンはどうか。レイルガンはマッハ7で飛ぶ23ポンドの金属部材で破壊効果を期待する。また水平線の向こうにも発射できる。ただし局地防衛限定だ。海軍の構想では100マイル先の静止目標なら攻撃できるが、移動目標では不可。また目標の移動速度が高くなれば難易度が高くなる。レイルガンは迎撃ミサイルと違い一度発射したら方位変更ができないので目標が回避したら対応できない。ブライアン・クラーク Brian Clark (退役海軍士官)の試算ではレイルガンを飛来するミサイルへの迎撃に投入した場合の実用射程は20から40マイルにすぎないという。
  8. 「レーザーやレイルガンは短距離の拠点防衛手段」とマーク・ガンジンガー Mark Gunzinger も語る。ガンジンガーとクラークは戦略予算評価センター Center for Strategic and Budgetary Assessments の研究員だ。「電動兵器と迎撃ミサイルは補完関係」
  9. 国土全体の防衛には射程距離を伸ばす必要がある。「比較的少数の核ミサイルが北朝鮮から大規模標的に発射された場合は射程の長い海軍のSM-3が理想的な手段」とクラークは述べる。「たしかに高価格だが、発射陣地一つから数発の発射で広大な国土をミサイル攻撃から守ることができる」
Navy cruiser Lake Erie launches SM-3 IB missile 575519537757ad8b1368733557巡洋艦レイク・エリーがSM-3IB迎撃ミサイルを発射
  1. 米軍の関心はならず者国家がごく少数のミサイルを発射する場合に向けられ、一斉大量発射は想定外とクラークとガンジンガーは言う。北朝鮮が在庫1,000発の中からミサイル100発を韓国に短時間で発射したら、防衛側は高性能・高価格の迎撃ミサイルを撃ち尽くしてしまう。核弾頭つきミサイルは数発かもしれないが、区別不能だ。一発でも迎撃に失敗すれば広島以来の惨事になる。
  2. これだからミサイル防衛の効果を信じる専門家は少ない。「成功可能性80パーセントで通常兵器搭載ミサイルに対応できれば港湾設備や基地の防衛には有効でしょう」とグレッグ・シールマン Greg Thielmann (元国務省、兵器制御協会)が語る。「でも5発中一発が核弾頭で大都市上空で爆発したら手遅れです」
  3. 4発のミサイルが発射され4発とも核弾頭ならどうなるか。ミサイル防衛の成功率はせいぜい50%とクラークは算出している。「攻撃側は一つの目標に7発のミサイルを発射すれば95%の確率で目標に命中させられる」という。ソ連ならそうしただろうが、北朝鮮の保有する核兵器はまだ数が足りない。いまのところは。このため複数目標に多数の核弾頭を発射できない。
  4. シールマンは安心していない。核攻撃から国民の大部分を守れる方法が多分では民主体制では受け入れがたい。「主要都市が核攻撃で消滅する可能性を真剣に考えるべきでしょう。攻撃側も初回攻撃核報復攻撃をを覚悟する必要があります」 そうなると平和の維持に最良の選択は相互抑止力だという。
  5. 抑止が機能しなければミサイル防衛は戦時には有益な選択だ。だが平時の政治ではどれを調達しどこに配備するかの選択はひどく面倒になる。大量のミサイルを撃墜する唯一の手段はレーザーやレイルガンだけだ。だが有効範囲は限定される。長距離ミサイルを迎撃する唯一の手段は迎撃ミサイルだが、迎撃ミサイルの在庫は少ししかない。このジレンマからどの装備を重点的に調達するのか、どこを防衛するのかの選択に迫られる。
  6. 「イスラエルは人口集中地区や防空シェルター配置地区は局地防衛で守り、広大な地区は弾道ミサイル防衛で対応するが、人口密度が低い地区では防御態勢を低くしている」か全く配置していない、とクラークは言う。ヒズボラが発射する通常型弾頭ならこれで政治的に受け入れられるが、核兵器への対応ではこうはいかない。
  7. 大量ミサイル発射への最良の対応策は効果的な攻撃を与えることだ。ミサイル意外に補給処や指揮命令系統(C2)を攻撃する。「C2攻撃は北朝鮮のように硬直した階層構造の指揮命令系統の目標にはとても効果的」とガンジンガーは言う。
  8. 「歴史が参考になるのなら、ミサイル防衛とミサイル施設の疑いのある施設や指揮命令施設への圧倒的攻撃を組み合わせるのが良い」とアンドリュー・クレピネヴィッチAndrew Krepinevich (CSBA理事長)も認める。「第一次湾岸戦争での『大スカッド狩り』は面白い事例だ。TEL(ミサイル発射台搭載車両)で破壊が確認できた事例はひとつもなかったが、スカッド狩りがはじまるとイラクはそれまでの統制のとれた一斉発射を個別無調整発射に切り替えた。土砂降りが小雨になったようなものだ」 発射台は破壊できなかったが、ミサイル退避に集中させ結果として以前のような効果的な攻撃はできなくなったという。
  9. 米軍がスカッドを狙った際には航空機と特殊部隊を投入した。北朝鮮の領空や領土への侵入はイラクより難易度が高いだろう。代わりに遠隔地の重爆撃機や海軍艦艇からから巡航ミサイルを発射すればよい。
  10. 米軍は陸上発射式の巡航ミサイルを保有せず、MLRSのような短距離ロケットがあるが、これでは北朝鮮には到達しないとCSBAは分析している。米陸軍は長距離攻撃手段を開発すべきとCSBAは考える。
  11. 「長距離地対地ミサイルが攻撃手段の鍵となり、敵の攻撃能力を削ぐ手段となる」とクラークは言う。「長距離航空攻撃を補完し複数の脅威発生源へ対応できます」
  12. こちらが別の手段を講じ、多用な対応策を準備すれば、敵の対応はもっと難しくなる。攻撃を加えても敵のミサイルを全て破壊できない。また発射されたミサイル全数を空中で破壊することも不可能だ。攻撃力で敵のミサイルの数を防空体制で対応ができる規模までに落とす事が必要だ。そんな必要が発生しないよう祈ろう。■


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