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北朝鮮SLBM発射の真相を探る




北朝鮮が発表したSLBM発射について一番深く分析しているようなのでご紹介します。結論は下にあるとおりですが、韓国はこれから新しい防衛体制の構築を迫られるでしょう。まだ時間はありますが、油断はできません。

North Korean SLBM test leaves more questions than answers

James Hardy, London - IHS Jane's Defence Weekly
12 May 2015

North Korea released images on 9 May of what it said was a successful test launch of a 'Polaris-1' SLBM from a 'strategic submarine'. Source: Via
北朝鮮が5月9日に発表した「水中から朝鮮型強力な戦略潜水艦発射弾道ミサイルの試射」を「戦略級潜水艦」から行ったと発表しているが同国の潜水艦能力の水準からみて疑わしい。
The test-firing of a new SLBM was viewed by North Korean leader Kim Jong Un. (Via KCNA)SLBM試射には金正恩が立ち会った(Via KCNA)
国営労働新聞Rodong Sinmunはミサイル発射の写真数枚を掲載し、同ミサイルにPukgeukseong-1(北極星1)の名称が描かれ、海面から飛び出す光景を見守る金正恩指導者が写っているのがわかる。
ミサイルの形状はR-27 Zyb SS-N-6「サーブ」ソ連製液体燃料潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に類似している。射程は2,400キロメートルでペイロード650キロ。ソ連は1968年から88年にかけ配備していた。
2003年9月には北朝鮮が数発を取得したとの報道があり、これからムスダン(BM-25)地上発射型中距離弾道ミサイルが開発されたとみられる。
今回の「北極星-1」ミサイルが液体燃料式と推定されるのは白煙が見られないため。(白煙は金属化複合固形推進剤の特徴)だが炎はきれいで、茶色の煙が発生しているが、後者は四酸化二窒素または他の酸化窒素系の酸化剤を使っている証拠だ。

発射は潜水艦からあるいは水中発射台から?

写真では金正恩が潜水艦を背景に微笑している。この潜水艦が労働新聞が言う「戦略潜水艦」らしい。
北朝鮮にはソ連時代のプロジェクト633「ロメオ」級ディーゼル電気推進潜水艦20隻があるとみられ、国産のサンオ型も数隻配備されている。写真の潜水艦が後者の場合、35.5 m x 3.8 m x 3.7 mの外寸、260トンという排水量なので弾道ミサイル発射はありえない。
可能性が高いのはジョンズ・ホプキンス大学が衛星画像解析で2014年から2015年にかけ公表した新型潜水艦だろう。日本海側の新浦軍港Sinpo naval baseで建造し、全長65.5 m排水量1,000-1,500トンと推定される。
この新型「シンポ」級には開口部付き司令塔があり、高さは4.25メートル、幅2.25メートルで垂直発射管をおさめられる。R-27の直径は1.5メートルで長さは8.89メートル、重量は14トンと見られる。写真が示しているように発射を傾斜させれば、ペイロード搭載量は減るが船腹の長さを節約できる。.
韓国国防省は野党議員に北朝鮮が保有する同型潜水艦は1隻のみで発射されたミサイルは「ロシアのSLBMを真似てつくったダミー」と説明したと中央日報 Joongang が伝えている。
「北のSLBM開発はまだ初期段階」と国防省報道官キム・ミンソク Kim Min-seokが報道陣に話している。「先進各国を見るとSLBMの水中発射成功から実用化まで4年ないし5年かかるのが通例だ」「試射に使った潜水艦は未完成だ。北がSLBMを完成させ潜水艦に搭載するまで時間がかかる。北はこの段階でただちに開発を中止すべきである」
この国防省見解から韓国もミサイルが潜水艦から発射されたと考えていることがわかるが、、数々の要素から試射が潜行中の発射台から実施された可能性が高い。
まず金正恩は発射地点から極めて近い地点で船舶に乗っている。これではミサイル発射が乗員に与えるリスクがあるはずだが、潜水艦とミサイルへの信頼度が高いことの現れとも言える
さらにミサイルは開発試行の初期段階のようで静止中の水中発射台から設定済みの範囲に発射されたようだ。
IHS Jane's は上記がもっともありえる可能性で、金正恩がここまでミサイルに近い地点に立っていることがその裏付けだと評価した。また写真の一部で潜水艦が写っているがミサイル発射が同潜水艦から行われたとの説明とあわせて虚偽と判定する。

朝鮮半島の安全保障への影響は?

長期的に見ればSLBM実用化で北朝鮮は二次攻撃力を獲得し、開戦時にまず北の地上配備弾道ミサイルを発射前に破壊するという韓国の「Kill Chain」構想実施が困難になる。おそらく作戦構想そのものが実施する前に陳腐化するだろう。
短期的には韓国がミサイル潜水艦を実戦化前に攻撃する決断をすれば戦略的に不安定な状態になる。とはいえ、ソウルが休戦ラインから近距離にあり、北朝鮮の砲兵隊の配備を考えれば韓国が公然と軍事行動を取ることは考えにくい。

追加コメント

韓国にとってひとつ救いがあるのは同国が続けている対潜戦(ASW)の増強策だ。浦項Pohang-級コルベット天安Chon An が2010年3月に沈没したことで増備が加速化された。韓国は天安は北朝鮮小型潜水艦の魚雷で沈んだと見ている。
潜水艦部隊のみならず水上艦船や空からのASW能力も拡充している。潜水艦では張保皐級Chang Bogo-class (209型)ディーゼル電気推進式攻撃潜水艦9隻はゆくゆくはKSS-2級(214型)に更改されるはずだ。更に大型のKSS-3(排水量3,000トン)で初の潜水艦国産化を実現する。
韓国海軍の対潜航空部隊にはウェストランドWG.13リンクスMk 99ヘリコプター23機があり、ここにアグスタ・ウェストランドAW119ワイルドキャット8機が加わる。後者は新型仁川 Incheon-級フリゲートに配備され、アクティブディッピングソナー、360度レーダー、電子光学センサーを搭載する。
韓国国防調達庁 (DAPA) は韓国製対潜ロケット(K-ASROC) の精度向上に成功し、本格生産に移ると2014年5月に発表した。韓国海軍は同ロケットの精度に不満を表明していた。
さらにロッキード・マーティンP-3CKオライオン哨戒機16機の増設も検討するだろう。
IHS Jane's naval, missile, and proliferation experts David Ewing, Neil Gibson, Stephen Saunders, Karl Dewey, and Doug Richardson contributed to this report.
The 'Polaris-1' appears to be based on the Soviet R-27 SLBM. (Via KCNA)「北極星-1」はソ連のR-27が原型のようだ。(Via KCNA)
The missile's clean flame and brown fumes suggest it is liquid propelled. (Via KCNA)炎がきれいで茶色の噴煙から液体燃料式とわかる。 (Via KCNA)

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