スキップしてメイン コンテンツに移動

★中国の武器輸出の動向は要注意



中国がどんどん武器輸出を伸ばしています。しかも相手国は西側が相手にできない国も含まれています。さらに価格が安いためこれではまるでダンピングで各国の軍拡を後押しするようなものですね。米海軍協会があまり知られていない中国の武器輸出の実態をまとめてくれましたので見てみましょう。

A Look at China’s Growing International Arms Trade

By: Kyle Mizokami
May 7, 2015 9:42 AM

ロシアが中国人民解放軍海軍PLANのタイプ054Aフリゲート艦の購入を検討中だ。一年前には考えられない事態だが、中国の軍事産業が西側の武器禁輸を尻目にどこまで伸長しているかを象徴している。

  1. 国内軍需産業を育成してきた中国の努力が実を結ぼうとしている。中国製艦船、航空機、レーダー、ミサイルが求めやすい価格で西側各国の製品の代わりに購入されている。中国製品の水準は西側より劣るものの、とにかく安いので大量に購入でき、納期が短く、政治的にも面倒がない。
  2. 1980年代はじめに中国は政治、経済両面で世界に開放した。短期間ながら中国の防衛産業は西側と相当の協力を展開したのは人民解放軍への装備が大需要と見られたためだった。
  3. ところが天安門事件(1989年)の惨劇で禁輸措置がとられ協力ブームは終わる。中国は産業基盤を自国で整備し解放軍の装備を供給せざるを得なくなった。このため、中国は相当の力を投入して西側装備品の改修や、諜報活動を西側防衛産業に向け展開し、ロシア製技術を改良し、新世代装備品を開発するなどポスト天安門時代を模索してきた。
  4. ストックホルム国際平和研究所によれば中国の武器輸出はこの5年で143%の増加している。今や中国は軍事輸出で米国、ロシアに次ぐ世界三番目だ。
  5. 安価だが高技術の中国製兵器が拡散普及すると西側は問題視するだろう。とくに英米両国が課題に直面する。高性能艦艇、ミサイルや航空機がアルゼンチンに輸出されると英国はフォークランド諸島の防衛対策で見直しを迫られそうだ。以下各国別に展望する。

アルジェリア

A Chinese-built Algerian corvette. Photo via mil.huanqiu.com
中国製のアルジェリア海軍コルベット艦 Photo via mil.huanqiu.com

  1. アルジェリアは2012年に中国へC-28Aコルベット艦三隻を発注した。パキスタン向けに製造したP-22ズルフィクア型フリゲートの船型をもとに上海の浦東中華造船Hudong Zhonghua が建造した。
  2. C-28A級は全長123メートル排水量2,800トンで武装はNJ-16 76ミリ複合多用途砲1門、C-802 対空ミサイル4基、FM-90N防空装備8基でHQ-7対空ミサイルを発射できる。タイプ730B近接防空システム2基、対潜魚雷発射装置6基、対ミサイル囮発射装置も備える。
  3. C-28A級も飛行甲板と格納庫を備える。中国建造の艦艇設計と異なり、アルジェリア向けコルベットにはタレス製レーダーを搭載し、指揮命令通信機能もタレス製にする。
  4. 一号艦は2014年8月に進水しており、今月にアルジェリアに引き渡す予定。さらに3隻を商談中。

アルゼンチン

A Chinese Type 056 corvette
タイプ056コルベット艦 

  1. マルビナス級はP-18輸出仕様フリゲート艦の派生型であり、もともとはタイプ056コルベット艦である。PLAN仕様のタイプ056は排水量1,400トン、H/PJ-26 76mm複合用途砲1基、AJK-10対空ミサイル発射機1にHQ-10ミサイル8発を搭載、YJ-83対艦ミサイル4発、30mm遠隔操作機関砲2基、324mm三連装対潜魚雷発射装置2基を積む。ヘリコプター発着甲板があるが、格納庫はない。曳航式ソナーアレイも追加装備している。
  2. P-18(排水量1,800トン)は中国船舶重工集団China Shipbuilding Industry Corporationが建造し、タイプ056よりわずかに大きい。マルビナス級の模型にはヘリコプター格納庫があり、ブラジルのウェブサイトNaval Powerは「アルゼンチンは機体重量10トンのシーキングヘリコプター運用のため飛行甲板の大型化を求めている。曳航式ソナーも利用し対潜能力を強化する」と伝えている。
  3. またアルゼンチンは中国製戦闘機の導入を検討中と伝えられている。数十年間放置した戦闘機部隊は劣化が進み、稼働可能な機体はミラージュ20機以下だという。アルゼンチンが検討しているのはFC-1 梟龍 および J-10 猛龍だ。
  4. このうちFC-1はパキスタンとの共同開発(パキスタン型式名はJF-17)で2004年に初飛行している。RD-93ターボファン一基を搭載し最高速度はマッハ1.6、戦闘行動半径は1,350キロ(840マイル)と言われる。
  5. FC-1の武装にはGSh-23-2機関砲を内蔵し、武装搭載用のハードポイントは7箇所ある。短距離対空ミサイルのPL-5、-7,-8,-9を搭載できる他、中距離対空ミサイルPL-12も運用できる。C-902対艦ミサイル2発を搭載し、対レーダーミサイル2発、誘導(非誘導)爆弾を2トンまで運用する。
  6. これに対してJ-10はJF-17より大型かつ高性能戦闘機で、ロシア製AL-3FNエンジン一基で推力は50%増えるが、戦闘行動半径は 1,000キロと逆に短い。エイビオニクスはJF-17よりすぐれ、高性能電子スキャン式アレイ(AESA)レーダーを搭載。J-10もGsh-23機関砲を内部に搭載し、ハードポイント11箇所で空対空あるいは空対地兵器を装着できる。

バングラデシュ

Durjoy-class patrol boat. Photo via Wikipedia
Durjoy-class patrol boat. Photo via Wikipedia
.
  1. バングラデシュは艦艇近代化に乗り出しており、中国から6隻を2009年以降に導入し、潜水艦購入の商談も進行中。
  2. 2012年にバングラデシュは中古フリゲート艦2隻を中国から購入した。ソ連時代のリガ級をもとにしたタイプ053H2で、37mm機関砲2門、100mm連装砲2門、YJ-81対艦ミサイル4発と対潜水艦ロケット発射機を備える。現代の水準ではぎりぎりの線だが両艦は巡視任務についており、バングラデシュ海軍の示威的存在だ。
  3. また少なくとも2隻のShadhinota(「独立」)級コルベットも中国から購入している。発注は2012年で今年1月に二隻が引き渡された。このコルベットもマルビナス級と同様にH/P-26 76mm 複合用途砲1門、30mm遠隔操作機関砲2門、FL-3000N港湾防衛用ミサイルいシステム一基、C-803対艦ミサイルを搭載する。またタイプ730近接防衛システムやタイプ3200対潜ロケット発射機2門を搭載しているようだ。ヘリコプター発着甲板はあるが格納庫はない。
  4. さらにバングラデシュはダージョイ級警備艇2隻を購入している。武昌船舶重工Wuchang Shipyardが建造し、タイプ056に類似しているが長さは211フィートで排水量は650トンと小さい。沿岸警備用途に特化した設計で、対艦および対潜能力はほどほどだが2013年に2隻とも引き渡された。
  5. 中国とバングラデシュは2013年に総額240百万ドルで、タイプ035G改良型明級ディーゼル潜水艦2隻の売却を発表した。中古セ販売で以前はPLAN南海艦隊所属だったようだ。支払いは2018年で納入は2019年になる。
  6. 同艦の排水量は浮上時1,584トンで航続距離8,000マイルで、533mm魚雷発射管8門に魚雷18本を搭載する。バングラデシュの国防ウェブサイトでは同艦を改装してC-802あるいはC-803対艦ミサイルを搭載するとしている。
  7. バングラデシュ空軍も南昌 Hongdu K-8ジェット練習機9機を調達している。これはF-7BGI多用途戦闘機16機の導入に備えるものだ。F-7BGIは旧型F-7にない視認距離外での交戦能力があり、精密誘導爆弾も運用できる。

ミャンマー

A Chinese built Type 53H frigate. DoD Photo
タイプ53Hフリゲート艦  DoD Photo

  1. ミャンマー海軍は旧PLAN所属のタイプ053Hフリゲート艦2隻を2012年に受領している。排水量1,700トンで対水上戦に特化しており、100mm砲2門、37mm砲4門、対潜ロケット発射機2基等を搭載する。

ナイジェリア

An undated photo of a F-7Ni.
An undated photo of a F-7Ni.

  1. ナイジェリアはP-18輸出仕様コルベット艦2隻を発注しており、中国船舶重工集団が2012年に受注した。一号艦NNSセンテナリは今年2月に納入されている。二号艦は中国船舶重工が支援してナイジェリア海軍工廠が建造する。
  2. ナイジェリアのコルベット艦の戦闘行動半径は時速14ノットで3,000カイリで、通常のP-18より武装が軽い。H/PJ-26 76mm複合砲1門、30mm遠隔操作機関砲2門、20mm機関銃2門に減らされている。対潜兵器はソナー含め搭載されていない。
  3. ナイジェリア空軍は2008年にF-7NI防空戦闘機12機、FT-7NI練習機3機を受領しており、旧式MiG-21の代替とした。総額252百万ドルで、機体220百万ドル、弾薬類32百万ドルだった。

パキスタン

An undated photo of a JF-17, jointly built between China and Pakistan
中国とパキスタンが共同開発したJF-17 


  1. 習近平主席が先月パキスタンを公式訪問したのを受け、中国からタイプ039B/041元級潜水艦8隻の売却が発表された。総額20億から40億ドルになり、引渡し時期は発表されていない。
  2. 米海軍協会の『世界の戦闘艦艇』によればタイプ041は排水量3,600トンのディーゼル電気推進攻撃型潜水艦で大気非依存型推進装置(AIP).を搭載する。元級はロシアのキロ級に酷似している。元級はYJ-82対艦巡航ミサイル、Yu-4パッシブホーミング魚雷、Yu-8アクティブパッシブ両用ホーミング魚雷を搭載する。PLANで12隻が稼働中と見られ、最終的には20隻まで増強されるとある。.
  3. 元級が配備されるとパキスタン潜水艦部隊は相当の戦力アップになる。現在はアゴスタ70型2隻とアゴスタ90型3隻が在籍中で、アゴスタ90型は艦齢20年未満でAIPも搭載するが、70型2隻は老朽化している。
  4. 8隻の潜水艦の総額は不明だが、Jane’sは退役パキスタン陸軍将官が「5億ドル未満だろう」と発言しているのを引用。Defense Newsはパキスタン国防関係者がより求めやすい250から325百万ドルになると発言しているのを聞いている。参考までにベトナムはロシアから改良型キロ/タイプ636 1潜水艦6隻を総額18億ドルで購入している。
  5. パキスタンが新型潜水艦の導入に向かうはインドが戦略核抑止戦力を整備しているのが理由だろう。インド初の戦略弾道ミサイル潜水艦アンハントは海上公試を2014年12月に開始し、同型艦4隻が2023年までに整備されると見られる。
  6. またパキスタン空軍がJF-17戦闘機110機を中国から受領するとの発表があった。中国パキスタン共同事業のJF-17はパキスタンで生産中だが、現地メーカーでは短期に多数の機体を生産できなす、中国から納入されることになった。

タイ

Chinese Yuan-class submarine
元級潜水艦

  1. 2014年の軍事クーデターでタイは民主制各国との関係が悪化した。その機会を利用した中国が関係改善に成功し、タイへの軍事装備品販売を提示した。
  2. タイ海軍は長い間潜水艦の導入を希望しており、16百万ドルで潜水艦司令部を先に作っている。総額10億ドルで通常型潜水艦1ないし3隻の調達を希望しているといわれる。
  3. 国営の中国船舶重工集団はS-26Tをタイ向け潜水艦案として提示しており、元級を輸出仕様として「タイ海軍向けに設計した」と称している。

ヴェネズエラ

A Chinese-built K-8 jet trainer at the Zhuzhai Airshow in 2010. Photo via Wikipedia
中国製K-8ジェット練習機 Photo via Wikipedia


  1. ヴェネズエラの政治姿勢により従来の調達先スペインや米国からの導入は考えにくい。中国は同国と関係を強化し、ベネズエラ海軍に販売の商機を見出した。
  2. ヴェネズエラ海軍の潜水艦部隊は老朽化しており、交代が必要だ。タイプ209潜水艦2隻は1970年代製で高性能な元級が後継艦になる。また6隻あるマンスカル・スクレ級フリゲート艦もP-18で置き換える事が可能だ。.
  3. また対潜ヘリコプターとしてZ-9が9機ハルビン航空製造へ発注されており、1号機の引き渡しは2015年の予定だ。
  4. また36機のK-8ジェット練習機を総額82百万ドルで36機発注している。K-8は機体外部にガンポッドや1,000kgまでの空対地ロケット弾や非誘導式爆弾あるいは赤外線誘導方式の空対空みさいるを搭載できる。
  5. これとは別に24機の南昌L-15高等練習機も発注している。L-15のエンジンはアフターバーナー使用が可能で超音速で飛行できる。3トンまでとK-8より大きなペイロードが搭載できる。引き渡し予定は公表されていない。■


コメント

  1. moneyfreedom様

    いつもこちらのサイトでお世話になっております。非常に貴重な記事をとりあげていただきありがとうございました。

    M

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ