100kW級のレーザー光線でこれだけの仕事が本当にできれば革命的な変化ですね。敵を発見すれば即破壊できるのですから空の戦闘の様相が変化します。ただし文中にあるように大気中の航空機からの照射よりも軌道上から発射するほうが効果が高く、宇宙の軍事利用にこの先すすんでいくことになるのでしょうか。また1Lの航空燃料の発熱量は約37MJとのことですが、これがレーザー照射一回に必要なインプットとしても再照射に必要な時間間隔はどのくらいなのでしょうか。究極の姿としては小型核融合炉を搭載した大型戦闘航空機(UAVで護衛する)でほぼ無制限にレーザーを照射(複数方向へ)するというのはどうでしょうか。
Laser Fighters: 100 kW Weapons By 2022
PENTAGON:. スター・ウォーズファンが興奮するかもしれない。米空軍は小型機から照射する100キロワット級レーザー兵器の実用化を目指している。空軍研究所が明らかにした。直近の航空機搭載レーザーはメガワット級のエアボーン・レーザーで747を改装した実験が2011年に中止されている。今回は2022年に実証を戦闘機で行う。
- だがF-35Aへは搭載されない。ステルス戦闘機はレーダー断面積を小さくするため武装を内蔵するが、今回のレーザー装置は外部武装ポッドに内蔵する。
- 技術は着実に進化中とモーレー・ストーン Morley Stone (空軍研究所技術主任)は語る。半導体レーザーの構造は有害な化学レーザーより数段簡単で小型にできる。エアボーン・レーザーは化学方式だった。技術が進歩したとはいえ、小型機へのレーザー搭載は容易ではない。そこで「機体内部への搭載の前にポッド方式の外部搭載でリスクを軽減する」のだという。”
- 外部ポッド方式でもレーザー兵器の内蔵は容易ではない。AC-130ガンシップの巨大なウェポンベイは別で特殊作戦軍団はAC-130にレーザー砲の搭載をめざす。「戦闘機への搭載は難易度が高い」とAFRL所長トーマス・マシエロ少将 Maj. Gen. Thomas Masiello は言う。
- 米軍が現時点で運用中の唯一のレーザー兵器は30キロワット級試作品で、USSポンセに搭載しペルシア湾に展開中だ。艦載レーザーには特有の問題がある。海面上は水分が多く、レーザー光線が減衰し、歪む。高空ではその問題はないが、航空機には高性能の補正光学装置がないと焦点が合わない。また艦船の設置場所は戦闘機よりはるかに広い。
- 「航空機搭載はずっと難易度が高い」とAFRLのデイヴィッド・ハーディー David Hardy 指向性エネルギー局局長は述べる。「艦船搭載の場合はSWAP(寸法、重量及び出力)が大きく確保できる」とハーディーは説明し、さらに「航空機は艦船より振動が大きい。船も横揺れはあるが振動はそこまで大きくない」という。精密機械に振動は禁物だが、レーザーでは標的の一点を焼くため照射の保持が必要だ。
- 「レーザーの本質は加熱装置です。加熱・溶融し穴を開けます」とハーディーは言う。ただし、標的をそこまで加熱するには高度技術が必要で、発射源が飛行中の場合はなおさらだ。軍は巨大な化学レーザーの実用化は断念したが、ABLの経験から貴重な結果を得た。これが小型電動レーザーの制作に役だっているとハーディーは言う
- もうひとつ大きな進歩がジェネラル・アトミックスのHELLADSレーザーで生まれており、まもなくDARPA単独の実験からDARPA・空軍研究所の共同事業に移行する。「150キロワット級電動レーザーとなる」とハーディは言う。(HELLADSの公称出力は未公表で、詳細は秘匿扱いになっている)HELLADSは高出力レーザー兵器として航空機搭載を可能にするのをめざす。現在は地上設置だが、外寸と裏腹に高出力を実現し「100キロワット超の電動レーザーで妥当なSWAPの実現を証明する」ものだという。
- 「今後10年以内に100キロワット超の出力を常時発生するシステムが完成すると思います」とハーディーは説明。「数百キロワットになるでしょう」
- では100キロワット級の出力で何ができるか。ハーディーは想定する標的の話をしたがらないが、戦略予算評価センター(CSBA)の研究によれば巡航ミサイル、無人機、有人機を相当の距離から破壊できるという。
- CSBAで報告書を作成したマーク・ガンジンガーMark Gunzingerは「150から200kWのレーザーなら地対空や空対空ミサイルの破壊が可能」だという。「大気が薄い高高度であれば効果が高い」
- マシエロ少将はレーザーは空対空ミサイルに取って代わる存在と見ている。「ほぼ無限に使える究極の指向性エネルギー兵器だ。レーザー照射一回に必要なエネルギーは燃料1リットル相当と試算している」
- 「ミサイル防衛が最大の関心事です」とハーディーは記者に語った。これは海軍や陸軍のレーザー開発でも同じだ。「ただし当方は攻撃効果も注目し、ジェット燃料で発電すればレーザー照射を続けることができる」
- F-16の対空ミサイル搭載数は6発だ。6回発射したら、命中のいかんをとわず基地に戻り再装填する。ガンジンガーはレーザー搭載機なら給油機のいるところへ戻ればよいという。「着陸・再装填せずに空中給油でレーザーはまた使用可能となり、戦場へ戻れる」という。制約条件はパイロットの耐久力だけだが、無人機ならもっと長く作戦空域にとどまれる。
- 「開発中のレーザーはいくつかあり、HELLADSもそのひとつだが、大きな進歩が見られる」と航空機に搭載可能な小型兵器に近づいているとガンジンガーは記者に語った。「航空機搭載レーザー兵器の現実化はすぐ先です」
- 未来を展望できる空軍関係者のひとり、デイヴ・デプチュラ退役中将retired Lt. Gen. Dave Deptulaは航空機搭載レーザーの可能性を信じる。また近い将来に宇宙配備レーザーも実用化されると記者に語ってくれた。当初は短距離防御システムとなれば、出力、焦点、大気のゆがみ等の問題を克服して攻撃するより、敵をこちらに接近させればよいという。レーザーの射程は更に延長される可能性があり、航空宇宙機材は運搬手段にすぎない。
- レーザーは高密度の光線にすぎない。大気中で減衰し、水平線の先への標的へ照射できない。ただレーザー照射地点の高度が高ければ、それだけ有効照射距離が伸び、大気が薄いほうが効果的だ。ここに空軍の求めるレーザー兵器の可能性、艦船あるいは地上から照射するレーザーでは実現できないものがある。
- 「大気の制約から開放されたレーザーの効果は想像にかたくないでしょう」とデプチュラは記者に話す。「宇宙空間あるいは宇宙からレーザーを使用する機会が増大する」とし、敵航空機や弾道ミサイルを上空から撃墜できるという。これは現行の国際条約では実施不可能とデプチュラも認め、「宇宙空間の武装化はしたくないが、今後を考えると宇宙空間での作戦準備は今から進めておくべきだろう」
- 宇宙から、空から、あるいは地上からのレーザー照射は革命的に大きな可能性を有している。「革命的変化ということばの使いすぎが目立つ」とデプチュラはいうものの、今回の場合は妥当だ。「チャック・イエーガーが音速の壁を破って以来、音速での戦闘は当たり前になった」と記者に語る。米国、ロシア、中国がそれぞれマッハ5超の極超音速兵器を開発中だが、レーザーがあれば、「光速での戦闘が普通の話題になる」という。■
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