長征5ロケット
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中国が進める宇宙関連の動きへ米国や同盟国が懸念を示している。
ペンタゴン関係者は中国の対衛星(ASAT)兵器で現有衛星群が脆弱になると心配している。
中国は宇宙空間を軍事ドメインと位置付け、公式文書で宇宙戦、宇宙作戦で攻撃防御双方の手段を駆使し優位性を確保すると述べている。これは宇宙空間の安全を主張する Secure World Foundationが4月にまとめた報告書にある。
「中国は宇宙対応部隊を再編し、電子戦サイバー戦を統制する主要部隊と位置付けた」と報告書にある。しかし、「中国が宇宙空間で対抗措置をふどう活用するのか、または米国への抑止力として利用するのが目標なのか、いずれも不明だ」とある。
同財団のブライアン・ウィーデンは中国が新型宇宙機の初打ち上げをしたと指摘。同機の詳細は不明のまま、米空軍のX-37B宇宙機に酷似するといわれる。「中国の新型宇宙機が軌道飛行で小型衛星を放出してから軍事基地に着陸した証拠がある」
米国は中国の衛星SJ-17に目を光らせており、同衛星が地球静止軌道でランデブーなども行ったとウィーデンはいう。「同衛星は同じ中国の衛星二機に接近し、点検あるいは監視を展開した」
SJ-17が他国の衛星に接近した様子は今のところないとウィーデンは述べている。
脆弱な米宇宙装備が敵国の衛星から攻撃されるのを国防総省は危惧している。
宇宙空間での「積極防衛」手段とは「宇宙空間で別の対象を捕獲し、安全な軌道に変更させる、あるいは安全措置を行い脅威とならないようにする」のが戦略国際研究所の航空宇宙安全保障問題部長トッド・ハリソンの見解だ。
同研究所も宇宙兵器から軌道上の宇宙装備をどう防御するかをまとめた報告書を4月に出した。
同報告書ではドッキング可能で別の宇宙機を操作可能な装備が今後投入されるとある。「こうした装備があれば脅威となる衛星を攻撃したり排除できる、また機能を喪失させた衛星を捕獲したり、ハイジャックし自国用途に利用できるようになる」
中国が宇宙ステーションを建設する動きを示していることへも懸念が広がっている。
国家情報局長(DNI)室は「米情報コミュニティによる脅威評価」を毎年発表し、今年版では中国宇宙ステーションは低地球軌道LEOで2022年から2024年の間に稼働開始すると予測している。
中国最大級のロケット長征5Bで宇宙ステーションの最初のモジュールを5月に海南島文昌Wenchangから打ち上げた。打ち上げ機はその後予想外の大気圏再突入をし、米国等各国から地上落下すれば甚大な損害が生まれると非難された。結局、同ロケットの残骸はインド洋に落下した。
宇宙ステーション建設と並行し、中国は月探査も続けており、まず無人研究拠点を月表面に確保し、その後基地を構築する狙いとDNI報告書は指摘している。
およそ10年前に中国が新型大型ロケット長征9の開発を始めたのが判明したと国際評価戦略センターの主任研究員(アジア軍事問題)のリチャード・フィッシャーが述べている。「中国は月に多数の人員を送る計画があることを示している」
中国は「921」型と呼称する二番目の宇宙打ち上げ機の開発を2018年開始しているとフィッシャーは指摘した。「921型ロケットは25トンから26トンの貨物を月へ送る性能がある」「921は既存技術を応用して実現は予想より早くなり、月への人員輸送が早期に実現する可能性がある」
中国筋によれば921ロケットは2024年から2025年に試験を開始するとしている。(フィッシャー)
「月周回飛行も可能となるだろう」とし、月への有人飛行は2026年から2027年に実現すると予測している。
中国の地上配備指向性エナジー兵器開発も進展を見せており、将来は衛星の撃破に投入されるとSecure World Foundation は見ている。
四か所ないし五か所にこの装備が導入済みとウィーデンは述べた。
拠点は大型建屋があり、屋根が移動式の特徴ですぐわかるとウィーデンは言い、レーザー発射用のガス貯蔵に大型建屋が利用される。小型ドームを備え照準用の光学装備を備えるものもあるという。
判明している二か所では大学と同じ場所にあり、大気圏内の光学技術と物理を研究しているようだとウィーデンは述べた。
CSISがまとめた最新の宇宙関連報告書では中国のレーザー装備が対衛星作戦に投入される可能性に注意喚起している。
「一部は学術研究用でASAT装備とは無関係のようだが、一か所で懸念があるのは対衛星攻撃テストを展開する基地内にあり、そこにレーザー兵器が設置されているとの噂があることだ」(同報告書)
「指向性エナジー装備としてどこまでの性能があり、『運用可能』な状態なのか不明だが、そもそも宇宙装備への攻撃やテストの内容が公表されていない」
同拠点は軍事基地のようで、新疆のコーラから100キロ離れた地点にある。中国はそこで衛星攻撃技術のテストを展開したとウィーデンは述べた。
中国が米国の宇宙運用能力に追い付き追い越そうとしているのは、人民解放軍が宇宙作戦を今後の戦闘で不可欠の要素ととらえるためだ。中国は米国や同盟国の衛星群を狙うとDNI報告書が述べている。
「中国は軍事宇宙部門の技量を育成し、破壊、非破壊両面で地上配備、宇宙配備の新型対衛星兵器の配備を続けている」
中国は地上発射ミサイルを配備済みで、低地球軌道上の宇宙機を破壊する狙いがあるが、地上配備レーザーはLEO上の情報集衛星の精緻な光学センサーを機能停止させたり破壊する狙いがあると同報告書は指摘した。
また中国は地上配備光学望遠鏡やレーダーをネットワーク化することで、宇宙空間の状況把握能力を高め、宇宙物体の探知、追尾、分類付けを行っているとSecure World Foundationの報告書にある。
「米ロ両国同様に中国のSSAレーダーもミサイル警戒機能を担当している」「中国には自国外での追跡用の大規模なSSAネットワークはまだないが、追跡用艦船を有し、将来のセンサー設置を目指し他国と関係構築に動いている」
ブルッキングス研究所の安全保障戦略技術部門副代表フランク・ローズは米国が軍事作戦遂行を宇宙装備に依存する以上は潜在的勢力が今後もASAT兵器開発を続けるのを覚悟すべきだと述べている。「宇宙での課題はエスカレーションを招かずに競合を乗り切り、長期にわたり持続可能な安全を宇宙空間でどう実現するかだ」
その手始めとして、米国は中国、ロシアとの対話を再構築すべきとローズはみる。
最後の米中間の宇宙をめぐる政策対話は2016年で、宇宙安全保障に関し中国との対話が必要だというのがローズの主張だ。「バイデン政権の優先事項になる」
敵性国家は対衛星兵器を開発し、米国を非対称脆弱の立場にし、一方的な劣勢に追い込もうとするとローズは見ており、「ロシア、中国は今後も各種ASAT装備品を開発、配備していくはずだ」と言う。
米国の次の手は宇宙空間での競合を統制し、エスカレーションにつながるリスクを低減しつつ、宇宙デブリを発生させないよう行動規範を確立し、ランデブーや近接地点での運用を取り仕切る基準規制の確立も必要とローズは述べた。■
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7/2/2021
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