上海で建造中の新型航空母艦は中国海軍力の急拡大ぶりの最大の象徴だ。供用中二隻よりはるかに大型で、かつ全く異なる艦となる。そのため、米海軍の最新鋭フォード級と直接比較したほうがよい。
世界の主要海軍では空母が戦略上で高い優先調達装備になっている。運用歴が長い英海軍、フランス海軍、インド海軍はそれぞれ新型艦の建造調達を目指している。日本、南朝鮮他もクラブ入りをめざしている。だが、中国の整備ぶりが突出している。中国海軍PLANはロシア艦を原型とし二隻を供用中だが、三番艦003型で空母運用の次の段階へ進む。
空母技術で長年世界に君臨してきた米海軍も最新の超大型空母フォード級の導入を急いでいる。初号艦USSジェラルド・R・フォード (CVN-76)は2017年就役し、技術面で調整が必要となっているが、いまだに世界最大かつ最新鋭の空母のままだ。
これに対し003型は大きさで米空母に近く、「超大型空母」の分類に入れてもよいだろう。最新の商用衛星画像を見ると、同艦の大きさが推定できフォード級と比較できる。
画像から全長320メートルとフォード級より13メートル短いに過ぎない。とはいえ、両艦を並べるとこの差に大きな意味がないように見える。
ただし、中国艦の飛行甲板は米空母より狭いものの、先行001型002型空母にほぼ等しい。この理由として乾ドックの幅など支援施設要因があるのだろう。あるいは単純に中国当局は現行空母と同じ幅で十分と考えたのかもしれない。
だが現有空母二隻との大きな違いは航空機発艦方式だ。新型艦はCATOBAR(カタパルト補助発艦・拘束回収方式)であり、先行艦はSTOBAR(短距離発艦・拘束機体回収方式)だ。フォード級同様に003型は電磁航空機発艦システム(EMALS)を採用しているとみられる。これにより発艦機数を増やす効果が生まれる。これは最新技術であるが、信頼性が劣るとの評価がフォード級で判明したと伝えらている。ただし、改良が続いている。新技術のため課題もあるが、中国側も同じ事象に直面しているとは考えにくい。中国としては蒸気カタパルトの実用化技術習得を飛ばしEMALSへ一気に向かうのは合理的選択だろう。
003型にはカタパルト3基があり、2基を艦首側、一基を側部に搭載する。フォード級並びに蒸気カタパルト式のその他米空母は4基となっている。
カタパルトは現在供用中の中国空母二艦にはないが、新型空母はこれで新型艦載機の運用が可能となる。新型固定翼の空中早期警戒統制機 (AEW&C)のKJ-600が搭載されそうだ。同機は外観も任務もE-2D高性能版ホークアイに酷似している。その他予想される艦載機にはFC-31ステルス戦闘機の空母運用型がある。最近同機の実寸大モックアップが武漢の試験施設に登場している。同機はF-35CライトニングIIに近い存在だ。エンジンは双発で機内兵装庫は大きくなっているようだ。ただし同機の運用開始は数年先との予測で、003型就役開始時点ではJ-15フランカーをカタパルト運用可能に改装した機材を搭載するだろう。
フォード級は航空機移動用にエレベーター(リフト)を三基備える。ニミッツ級では四基だった。EMALS導入でニミッツ級を上回るソーティ生成回数が可能となる。だが中国艦では二基しかない。ともに長方形で右舷側に搭載される。大型のアイランド艦橋が中間に位置するためだろう。フォード級のアイランドは艦尾側に配置されている。前方エレベーターはカタパルトに近い位置にある。ジェット爆風の遮蔽版はエレベーター横にある。この位置関係だと発艦時には前方エレベーターは利用できないだろう。
ただし、紙の上では同艦はリフトが減って、デッキで利用可能な面積が増えるはずだ。だが、格納庫から機材を移動する距離が長くなる代償を考えると賢明な策とは思えない。ソ連時代の先例が影響しているようだ。003型のリフト2基配備はアドミラル・クズネツォフと同じだ。
003型のアイラインドが艦上に設置されたのは数日前のことだ。先行空母より短いように見えるが、大型フェイズドアレイレーダーを搭載するはずでフォード級と同じだ。
まとめると、003型は全体寸法こそやや小さく、カタパルト数、エレベーター数も少ないため、ソーティー生成数も低くなる。米空母はこれまでの運用から進化してきた。中国艦はこれに対し、空母運用の知見が少ないこともあり、手堅い設計になっている。003型が大型艦で高い戦力になるのはまちがいない。だがソ連時代の設計思想の影響を受けている側面もあり、総合的な効果に疑問も残る。
もちろん、003型のほかの部分ではまだわからないこともある。フォード級でも同様だ。だが、最終的には戦闘威力で評価すべきで、運用する乗員や運用方針が大きく影響する。PLANには米海軍が有する経験の厚みが欠如しているものの、PLANも空母運用を開始し10年近く経っており、経験の蓄積は急速に実現できる。またそのために大規模な予算投入をしているのは明らかだ。■
この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。
China's New Super Carrier: How It Compares To The US Navy's Ford Class
H I Sutton 02 Jul 2021
H I Sutton writes about the secretive and under-reported submarines, seeking out unusual and interesting vessels and technologies involved in fighting beneath the waves. Submarines, capabilities, naval special forces underwater vehicles and the changing world of underwater warfare and seabed warfare. To do this he combines the latest Open Source Intelligence (OSINT) with the traditional art and science of defense analysis. He occasionally writes non-fiction books on these topics and draws analysis-based illustrations to bring the subject to life. In addition, H I Sutton is a naval history buff and data geek. His personal website about these topics is Covert Shores (www.hisutton.com)
https://twitter.com/RickJoe_PLA/status/1411501194975977475
返信削除参考までに。
甲板面積はほぼ等しいかと、