S・クリントン・ハイノート中将
空軍参謀次長にして戦略、統合、要求性能を取り仕切るS・クリントン・ハイノート中将は「空軍の未来学者」とよく呼ばれる。空軍の戦略方針立案ならびにマルチドメイン作戦構想とあわせ、作戦要求内容から装備品の統合を進める構想の責任者である。今年4月にAir Force Magazine編集部のエイミー・マクロー、トビアス・ネージェル、ジョン・A・ターパクが中将とzoomでインタビューした。
空軍参謀総長チャールズ・Q・ブラウンジュニアが最近になり空軍の長期機材運用計画にF-22ラプターは入っていないと公表している。第五世代の同機が姿を消しても第四世代機は長く供用するとある。なぜなのか。
空軍士官学校でYF-22とYF-23比較の論文を書いた。1991年当時は上級学生だったので年月が経つのは早い。30年になる。F-22に導入した技術も30年前のものだ。機体は今も高性能のままだが、実用化した新しい制空用途の技術をF-22から[次世代制空機材のシステムファミリー] へどうつなぐべきか検討する好機が来たといえる。F-22へ投資を続けるのは、NGADが中長期的に戦力化されるまでのつなぎとして必要だからだ。そうなると[F-22退役までの] 時間は10年から15年というところだろう。
NGADは前調達トップのウィル・ローパー博士が述べたように供用期間30年の想定ではなく、10年ないし11年12年使えればよい機体になるのか。
その通りだ。そう考えている。興味深い分析があり、供用期間の最適長についてのもので、まだ答えは出していないが、この質問は実に興味ぶかいものがある。なぜならこれまでは一定の期間供用する前提で機体を作り、その後ティンカー[オクラホマ州の空軍基地]に送る、あるいはヒル[ ユタ州の空軍基地] へ送り分解し再生していた。だがもしこれ以外のモデルが生まれればどうなるか。つまり、耐用年数を食いつぶすまで飛行させ、常時新型機を登場させていったらどうなるか。空軍でこうした考え方を定着させようとしている。
NGADに関し、迅速な開発をめざし、配備も迅速にし、配備が始まる時点で次期機材も半分完成させるということでいいのか。
次期機材の設計が始まる。
ということはNGADの次の機材も設計がはじまっているということなのか。
肯定も否定もできない。ただNGADの開発サイクルが始まっており、想定しているはある機種の開発、統合、配備をする間に次の機種の設計を進めることだ。航空機メーカー各社には設計段階で参入の機会が生まれることになり、選定によりその後参画できなくなる企業が生まれる。これを現在複数の事業を通じて実現する。
そうなるとサイクルは5年あるいは10年になるのか。
答えは出ていない。適正レベルを確立しようとしているところだ。そのため、ある機種を配備しつつソフトウェアや武装装備を同時に進展させるためにはプラグアンドプレイ方式になっていくのではないか。機体の成熟化が進む間に性能改修も企画し、同時に次期機種の設計を進める。その間に最新ソフトウェアを搭載でき、センサー技術を新型機に導入できるので、大幅な機能向上が実現する。5年おきか8年おきになりそうだ。
ではNGADの実戦化はいつか。
イベント中心に進めていく。現在の想定では2030年ごろというところだ。
空軍は旧型機の退役が必要と議会に訴えている。将来構想がこれにより左右されるはず。議会に正しい方向だと納得させられるか。
議員にはNGADの進展ぶりの一部を見てもらっている。視察した議員は一様に強い印象を受けている。事業の実現に向け仕事は多いが、現状を見て、実際に機体を飛ばす空軍隊員から話を聞いて、実際の方向性を理解してもらえる。ペンタゴンの高官向けに同じ企画をしている。実際に大きな効果が出ている。百聞は一見にしかず、ということだ。
機体の廃止について各議員と話している。議会側全体として前向きになってきたと実感している。
F-22性能向上予算を認めない圧力は懸念ではないのか。今後10年15年後に実行が難しくならないか。
懸念があるのは確かだが、F-22を維持し新型機までのつなぎとする方針は重要だ。ここにリスクを冒す余裕はない。機材更新には日程上の余裕が少ない。そのため、F-22へ予算投入を続ける。同機に限界があることを承知の上でも装備の近代化が必要で、NGADの実用化まで活用したい。
Q. A-10は「プラスワン」と呼んでおり、2030年代まで供用するとある。両機種を同時に用途廃止すればリスクが生まれるのでは
機種ごとに廃止案は異なる。F-22では一部機能がNGADとは全く異なる。NGADは無人機、有人機混合となる。そのため単純な機種交代となならない。A-10を廃止する段階で、同機のような低生存性の近接航空支援機をまた作ることはしない。また、共同運用部隊が生まれつつある中でA-10廃止の時点で近接航空支援が全く同じ形になっているかわからない。おそらく、もっと分散型戦力になるのではないか。陸軍は火力を重視し、機動性はそこまで重要でないとしている。であれば近接航空支援も違う形になるはずだ。ミッションの内容も変わる。問題はA-10が現在担当している環境でこうした新機能をどう活用するかだ。対テロ戦でも新コンセプトの開発や性能が必要となる。その時間軸で見ると新しい構想の機体が必要となり、A-10廃止を進めるべきだ。
参謀総長が口にしているF-16後継機となる「完全新型機」構想はどうなるのか。A-10にも関係するのか。
今後の戦闘で必要となるミッションに本土防衛ミッションがある。そこではハイレベルの生存性は必要とされないはずで、NGADとは異なる。そうなるとステルス性能も設計上で必須とならないが、ここで関係するのは、今後の時間経過とともに進化する設計をどうやって実現し、政府の力をどう活用するかということだ。
最近になり海軍は空母艦載機として有人無人機を半々にするとしている。2030年には6対4になているかもしれない。ではUSAFの考える比率はどうなるか。
第六世代機の構成を考えると有人、無人機の組み合わせが大きな意味を持つのは確実だ。自律運航機材に向買うのは確実で、有人機にぴったりくっついて飛ぶ無人機もありうるし、大量に投入される可能性がある。その好例がセンサー機能で多様な機材をネットワークでつなぎ対象地区を念入りに走査し戦闘クラウドでデータを相関させ、融合させ、活用する。これを演習で実行しておりその効果は極めて高いことがわかっている。またこの技術を同盟国友好国と共有し、大規模にセンサーのグリッドを実現し、敵の妨害を受けなくする。これで共同部隊は生存性を高める。また回復力を高める効果も生まれる。
実験の一つとして今週だったと思うが、無人機をロケット補助で発進し、パラシュート回収するビデオを公開した。この方式なら滑走路がない場所から発進回収か可能となり、価格と性能面で航空戦力に新しい局面が生まれる。滑走路がない場所でも航空戦力が実現するわけだ。この意味は大きい。将来の戦闘での生存力を考えると必要な技術で、中国のA2AD体制からミサイルが大量にわが方の航空基地に降る事態ではなおさらだ。■
この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。
Q&A: Future Force
By Amy McCullough, Tobias Naegele and John A. Tirpak
June 30, 2021
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。