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B-21新想像図を読み解く。他方で同機の配備に向けた準備も着々と進み、ロールアウト2022年、配備開始2026年の予定と判明。

 B-21 Raider

空軍発表のB-21想像図の一部を切り取った。機体はエドワーズ空軍基地を離陸する様子を描いたもの。(U.S. Air Force graphic)

 

 

空軍から7月6日にB-21レイダーステルス爆撃機の新しい想像図が公式ファクトシートと合わせ発表された。前回は2020年1月の発表だったので、一部に実機と異なる点があったのだろう。今回はエドワーズ空軍基地が背後に描かれており、空軍の420飛行試験隊が同基地に常駐しB-21の地上試験、飛行試験双方を実施する。空軍のプラント42があるカリフォーニア州パームデイルで完成するとまず、エドワーズに移動することになる。

 

レイダーの全体形状は2020年の初公表時から大きな変化はないようだ。ただ詳細な点に目が行く。まず、コックピットの窓形状だ。これまでの画像では風防は二枚構造でB-2Aスピリットに似ていた。今回のレイダーは4枚構造のうち、後方の左右二枚が大きく異なり、大きくカーブがつき、かつ前方の窓より狭くなっている。

 

次に気づくのが「鷹のくちばし」形状の機首部分で、B-2スピリットに通じるものがあるが、第二回目公表の画像では消えていた。今回は「くちばし」はスピリットより先に突き出している。主翼ではこれまでの画像より厚みが増えているように見えるのは、描画上の問題なのだろうか。

 

今回の画像では空気取り入れ口が不明だ。実はここで空軍が大幅再設計を求めてから重要設計審査を2018年11月に通過させた経緯がある。問題とされたのは空気取り入れ口のサイズで、エンジン作動の効率面で空気を鳥れる量の最適化が必要だったのだが、費用面日程面で影響は出ていない。

 

B-21レイダーはファクトシートでは大規模なシステムファミリーの一要素とされ、通常型長距離爆撃機となっているが、そのほかに情報収集監視偵察型、電子攻撃型、通信機能特化型等があがっている。各種スタンドオフ、直接攻撃兵器を運用するほか、核運用能力も確保し、有人操縦または無人運用が可能となる。その他重要な要素として、NGAD等と同じくオープンシステムズアーキテクチャーとしており、統合リスクを減らし、将来の性能向上に対応することで、脅威の進化に対応させるねらいがある。

 

今年に入り早々にB-21二号機が製造中との空軍発表があり、一号機は2022年初頭のロールアウトに向け完成度を上げているとあった。空軍迅速戦力整備室長のランドール・ウォルデンによれば、一号機はロールアウト後に大規模地上テストを行いその後初飛行になるが、二号機は構造試験を主に行う。レイダー初号機の製造で得た教訓は二号機に応用されており、作業はずっと迅速に行えるようになり、作業員は設計図通りの制約から解放されたという。

 

6月に下院軍事委員会公聴会で空軍次官補ダーリーン・コステロは誤ってB-21の最初の二機が完成済みと発言したが、その後空軍は発言を訂正し、二機は製造中とした。ただし、空軍は完成予定あるいは遅延していると述べておらず、事業は2022年初頭のロールアウトに向け進んでいるとみられる。

 

B-21は2026年か2027年の配備をめざし、エルスワース空軍基地(サウスダコタ)が最初の運用基地となり、ダイエスAFB(テキサス)を予備とする。空軍は基地選定では運用面とともに近隣住民への影響を最小限とするよう配慮しつつ、既存施設の活用によりB-21運用コストの節減を図ることを目指したと発表。最終的な配備基地決定は今年中に行い、その前に艦居インパクト調査結果が今年夏に出るのを待ち、B-21用の施設建設を始める。

 

他方でエルスワースAFBではB-21レイダー用の環境防御シェルターの試作型を設置し、データを数年分収集し、シェルターの最終形を決める。同基地の天候条件が最も過酷かつ多様になため試作シェルターの設置場所に選ばれた。

 

「天候防御シェルターで機体寿命が延び、紫外線への露出を減らすことで整備作業も楽になる。また降雪、融雪による氷結、解氷対応も減らせる」とグローバル打撃軍団でB-21導入を担当するシステム管理室長デレク・オークレイ大佐が述べる。「シェルターにより機体をいちいちハンガーから出し入れせずに出撃を短時間で実現できる効果もある」■

 

Let's Talk About The New B-21 Raider Rendering And Fact Sheet Released By The U.S. Air Force


July 7, 2021 Military Aviation

STEFANO D'URSO

Stefano D'Urso is a contributor for TheAviationist based in Lecce, Italy. He's a full-time engineering student and aspiring pilot. In his spare time he's also an amateur aviation photographer and flight simulation enthusiast.


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