USSコロンビア原子力ミサイル潜水艦 (SSBN 826)の想像図
米海軍の次世代攻撃型潜水艦は従来艦の特徴を引き継いで「頂点捕食者」をめざす。
海軍水中戦企画室長ビル・ヒューストン少将は「究極の頂点捕食者を海中で実現する」と海軍連盟のパネルディスカッションで述べた。
少将は新型艦のペイロードや速力はシーウルフ級並み、音響性能やセンサーはヴァージニア級と同等、稼働率や供用期間はコロンビア級艦並みと表現した。
「これが可能となるのはこれまでの各艦の実績があるためで、やり方も熟知しているからだ。各要素を一つの艦に盛り込む」
次世代攻撃型潜水艦はSSN(X)の呼称で、開発が緒についたばかりだ。
同艦の初期研究開発用予算として今年度は98百万ドルの要求となっている。2020年度長期建艦計画では34年度から毎年2隻で計42隻の調達を開始する。海軍は一隻あたり58億ドルと推定しているが議会予算局資料は62億ドル近くとしている。インフレーションを考慮してもヴァージニア級より相当の増加となる。ヴァージニア級は拡大ペイロードモジュール搭載艦で34.5億ドル、非搭載艦で28億ドルだ。
コロンビア級建造との関係
ヒューストンはコロンビア級潜水艦建造に産業界が取り組む環境の危うさに言及した。海軍は三号艦から12号艦に特に懸念しているとし、理由として同級の連続建造段階にあたり、建造が安定するものの、何らかの過誤が発生した場合には柔軟対応の余裕がないためとした。コロンビア級建造では意図的に時間間隔をあけて業界に学習効果を得る余裕を作っているとヒューストン少将は述べている。
海軍上層部からはコロンビア、ヴァージニア両級建造との関連に関する発言が出ている。建造部門に混乱が出れば、相互に影響が生まれる。さらにSSN(X)へも影響は必至だ。
海軍と企業側はコロンビア級の設計で最終段階の作業に入っており、同じチームで新型艦の実現に取り組むとヒューストンは述べている。さらに海軍はコロンビア級建造が落ち着く段階で即座にSSN(X)作業に入る予定だ。
「コロンビア級建造のピークが終わるとSSN(X)建造に本腰を入れる。その時点で設計およびRDT&Eが終わっているからだ」「頂点捕食者実現のためのRDT&Eには相当の時間が必要となるが、今後10年間は集中してSSN(X)の各種システム実現に取り組む」
ただし、SSN(X)の研究開発試験工程が予定通りに終了するのが条件で、遅延が生まれれば費用上昇は避けられなくなる。同様にコロンビア級でトラブルが生まれればSSN(X)にも影響は避けられない。
どんな性能の艦になるのか
現時点で米海軍の最新かつ最高水準の原子力推進攻撃型潜水艦はヴァージニア級だが、後継艦実現に向けた作業が続いており、敵のハイエンド潜水艦を打ち破るよう最適化される。
この結果生まれる新型艦は「高速で、相当の攻撃力を有し、ペイロードが増え、音響面でも優位性を確保する」ハンターキラーになるとヒューストン少将は述べた。
海軍が求める次期攻撃型潜水艦はシーウルフ級並みの性能となるようだ。もともとシーウルフ級は究極のハンターキラーとなるべく冷戦末期に企画されたが、建造費用の上昇により建造はわずか三隻で終了し、USSシーウルフに加え、USSコネチカット、USSジミー・カーターしかない。このため、各艦はおおむね特殊任務に投入されている。このうちジミー・カーターは特殊任務専用艦となっており、極秘作戦に使われている。
これに対しその後登場したヴァージニア級は公式には攻撃型潜水艦だが、事実は多用途艦だ。シーウルフより小型かつ低建造費の同級には垂直発射管セルがありトマホーク対地攻撃巡航ミサイルを発射するほか、沿海域での運用に最適化しており、情報収集のほか特殊作戦隊員の侵入、撤収が可能だ。
U.S. NAVY
ヴァージニア級が現時点で最新かつ最先端の原子力推進攻撃型潜水艦だが、後継艦は敵ハイエンド潜水艦を打破する性能を有する艦になる。
ハンターキラーに徹し、VLSは搭載しない
SSN(X)では従来型のハンターキラーへの回帰が明らかだ。速力、ステルス、魚雷発射管からの兵装運用で敵潜水艦、水上艦の撃破に中心をおいており、垂直発射管による対地攻撃は考慮されていない。
この基礎が2018年の議会予算局(CBO)報告で、SSN(X)は最大62本の魚雷を搭載するか、魚雷発射管から対艦ミサイル等を運用するとあり、UGM-84ハープーンのほか今後登場する対艦兵器を発射し、垂直発射管は不要としている。
U.S. NAVY
ロサンジェルス級USSコロンビアにマーク48高性能魚雷を搭載する。
中国やロシアが今までより強力な新型潜水艦を投入し米国の国益に重要な水域に進入する事態を想定すれば、こうしたハイエンド攻撃型潜水艦の整備は理にかなったものだ。
「本格的戦闘作戦に備える必要がある。敵の背後に回り、打撃を与える」とヒューストン少将はSSN(X)について言及している。「敵は自国水域内でも自由に活動できなくなる」
水中戦での質的優位性を維持する以外にSSN(X) は現行50隻の攻撃型潜水艦部隊を70隻に増やすことで決定的重要性の事業となる。Battle Force2045構想がこれを求めており、この実現のため海軍は新型艦建造に加え既存艦の供用期間を延長し、結果として改修や性能向上にも多大な予算を計上する必要に迫られる。
同時に海軍はSSN(X)で新技術も導入する検討に入っており、セイルは膨張式とし速力、操艦性、ステルス性で向上を目指す。
予算確保が課題だ
高度に洗練された設計となり、応分の価格がついて回るが、海軍にこれが実現できるだろうか。新型攻撃型潜水艦以外に海軍はコロンビア級に予算を確保する必要があり、ヴァージニア級建造も続ける一方で、供用中潜水艦の補修整備も行う。
同時に水中無人装備にも予算を計上する必要があり、ヒューストン少将は今後のSSNとともに運用する装備として期待している。少将によれば攻撃型潜水艦が小型・中型無人装備(UUVs)を統制し、大型UUVsは陸上施設から運用する。こうした装備の実現にも予算が必要だ。
シーウルフ級の過ちを繰り返さないことが肝要で、コロンビア級と共通性を持たせれば予算をうまく使えるかもしれない。
SSN(X)とコロンビア級は艦体形状を共通としつつ、SSN(X)は短縮化する可能性がある。ただし、SSN(X)は長期に及ぶ供用期間と保守管理工数を従来のSSNsより短縮化することで予算に見合った価値を実現するとヒューストン少将は述べた。
以上まとめると海軍が求める次世代攻撃型潜水艦はシーウルフ級並みのハイエンド性能を最新艦体に盛り込むものとなる。達成可能と思えるが、十分な隻数の実現に必要な予算の確保が課題だろう。■
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