スキップしてメイン コンテンツに移動

対米貿易黒字改称にフォード級空母四隻購入すればよいとの人民日報社説はアメリカに喧嘩を売っている

今回は人民日報英語版の社説です。米最新鋭空母をまとめ買いするなどと冗談にせよ普通は言わないのではないでしょうか。悪いのはトランプだとし自国は何も悪いことはしていない、国連システムの内側で行動しており何らやましいことはないとの主張ですが、そもそも今の問題がどこから発生しているのか、地政学的にあまりにも露骨な米国への挑戦的態度が対立の根底にあることは都合よく忘れているようです。なお当ブログは中国政府の主張を代弁するものではありませんのであしからず。

 

Op-ed: US not at a disadvantage in economic and trade ties with China 社説 米国は対中貿易で何ら不利な状況に追いやられていない

By Zhong Xuanli (People's Daily)    10:12, October 12, 2018

国は中国との貿易赤字で「不利な状況」におかれ「経済侵略を受けている」と主張しているがこれは全くの誤りだ。

米中貿易は相互に自主性がありかつ補完的である。中国は一度も米国との貿易関係を強制的にすすめようとしたり、貿易黒字を希求したことはない。

国連統計によれば2017年の米国による対中輸出は1,298.9億ドルで2001年の191.8億ドルから577パーセント増加している。米国の各国向け輸出の伸び平均112パーセントを遥かに上回る伸長ぶりだ。

米国が対中輸出品目を制限し一部ハイテク製品の販売を禁止しながらこれだけの成長を実現したことに注目すべきだ。

米国の対中貿易赤字は米国がハイテク製品の対中輸出を解禁すれば減少するだろう。もし米国がフォード級空母四隻(単価150億ドル)を売却すればそれだけで赤字分600億ドルが消える計算だ。「下線ブログ筆者)

カーネギー平和財団が2017年春に発表した報告書では米国が対中輸出制限を撤廃し、ブラジルやフランス並の扱いにすれば米国の対中貿易赤字は24パーセントから35パーセント減ると指摘している。

自国内で製品設計と販売活動を展開しながら生産活動は海外に移転する傾向が米国でこの10年で加速しており、中国が最大のグローバル工業拠点になった。

大量の中国からの対米輸出の中身は実は米国が設計し中国国内で生産した製品だ。中国企業に生産活動分の収入が入るものの、物流で価格を計上する企業に比べて低利益率だ。そのため中国が米国から収益を吸い上げているとの主張は全くの誤りである。

「経済侵略」ではなく中国国内の経済開発からグローバル経済に成長機会が生まれている。中国は2013年以降の世界経済成長でおよそ30パーセント分の貢献をしており世界最大の規模だ。2017年は34.6パーセントに達し、米国実績の二倍近くだ。

中国国内の経済開発によりグローバル市場も拡大している。2001年から2017年にかけて中国が輸入した物品の伸びは毎年平均13.5パーセントであり、世界平均の二倍近い。同時期に中国が輸入したサービスの平均成長率は16.7パーセントを記録し、世界平均の2.7倍に達した。

雇用創出でも中国は重要な地位を占める。80箇所以上の貿易協力地帯が一帯一路関係国で生まれ、244千名分の現地雇用につながった。アーンストアンドヤングによれば中国はアフリカだけで13万名の雇用を2005年から2016年にかけ創出し、米国による実績の三倍になった。

ラテンアメリカ・カリブ海地域では1990年から2016年にかけて180万名の雇用機会を中国が創出したと国際労働機関が報告書で述べている。

中国が米国内の仕事を「盗んでいる」との主張が米国内にあり、米企業が工場を中国に移転したためとする。だがその主張は公平でなく根拠もない。

2017年の米中ビジネス協議会調べでは2015年の米国から中国への輸出と米中二国間の投資で米国内260万名の雇用が維持された。

Ball State University(インディアナ州)の研究結果では米国の製造業の雇用の最盛期は1979年でそれ以降7百万名分の仕事が消えたとするがその88パーセントはロボット他が取って代わり、工場での労働力そのものの需要が減ったのである。このことから米国内の雇用消失に中国は無関係であることがわかる。


中国の側から貿易摩擦を開始したのではない。逆に中国は世界貿易機関WTOでの責任を広く果たしている。


中国は開発途上国への援助を増加させており、とくに最貧国を重視している。これは南北の開発格差を埋める一環である。2018年3月までに最貧国で中国と外交関係のある国向け全関税品目で中国は97%まで関税ゼロを達成している他、覚書を交換している。

中国は2018年にさらなる市場開放や市場アクセス開放策を発表した。サービス部門特に金融産業での全面的開放を約束している。

「相互開放」を旗印に「国益」を標的にする言い訳として米国は国内投資委員会(CFIUS)を発足させており情報機関含む全省庁を参加させている。「国家安全保障」の概念は絶えず拡大されており海外企業の米国内参入を拒むツールだ。

2017年、CFIUSが制限を加えた海外企業は20社超えで半分が中国企業で、「国家安全保障」を理由に米国参入を禁止した。

米中両国はWTO加盟国であり通商問題はWTOの枠組みで解決をめざすべきだ。だが米国はWTOの紛争解決の仕組みを無視し貿易摩擦を国内法で解決しようとしている。

米国の振る舞いはWTOの基本原則に完全に反しているばかりか関税引き下げの努力義務にも違反しているのであり、最恵国待遇の取扱でも同様だ。■

さあ、以上の中国の主張にいくつ誤りがあるか読者諸氏からのご指摘をお待ち申し上げています


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...