China Says H-20 Stealth Bomber Makes 'Great Progress' Stirring Talk Of A First Flight Soon 中国がH-20ステルス爆撃機が「一大躍進」したと発表、初飛行が近づくとの噂が流れる
Word of the bomber's developmental progress comes amid a growing rift between the Chinese and American governments. 同機開発状況を巡る観測がある中、米中両国は一層対立を深めている
BY JOSEPH TREVITHICKOCTOBER 10, 2018
長年に渡り報道や噂に上っていた中国のH-20(轟炸20型)の開発が「大進展」したと国営通信社が伝え、初飛行も間もなくと思われる。同機の存在が公式非公式問わず浮上しているのは2018年の中国軍事航空の大きな進展の一つとされ、米国はじめ対抗勢力へ中国が一層強硬な姿勢をしめしている中で注目される。
2018年8月に国営中国中央テレビが「轟炸-20」は「新型長距離戦略爆撃機」と解説し、H-20の名称が初めて登場したと環球時報が伝えている。中国政府も同機が開発中と2015年に認めていたが、制式名称はその段階で示していなかった。H-20の名称はその後メディアに登場した。西安航空機工業(XAC)は国営中国航空工業(AVIC)の傘下企業で同機開発に従事中とも伝えられており、機体は米空軍のB-2に類似すると2000年代初期から伝えられていた。
「人民解放軍装備の開発は通常は極秘事項だ」と軍事専門家でテレビに顔をだすことの多いSong Zhongpingが述べたと環球時報2018年10月9日号で伝えている。「試験飛行が近づいている」
環球時報は中国共産党の公式新聞人民日報の傍系紙であり、中国語版、英語版を刊行しており米国内でも入手可能だ。
VIA ASIA TIMES
上の画像は中国中央テレビ報道からのものでH-20試作機だが実際の機体とは違う様相になるかもしれない。
評論家Songが中国政府の代弁者ではなく、独自の見解を述べていることに注意が必要だ。環球時報は南シナ海をめぐり米中が全面戦争に突入すると警世を鳴らす記事が2017年に掲載したようにしばしばおおげさな論調で知られる。
ただしSongは人民解放軍第二砲撃隊工兵大学の卒業で同大講師もつとめ「軍事ダイジェスト」編集者を務めた人物だ。第二砲撃隊はロケット軍と改称され、核弾道ミサイル部隊として知られる。
2018年5月にXAC設立60周年を祝いAVICがCGIを多用した映像でH-20を紹介した。全翼機らしき機体が布の下に隠され、ノースロップ・グラマンが米空軍向けB-21爆撃機を2015年のスーパーボウル中に瞬間見せたのと同一の構図になっている。
NORTHROP GRUMMAN/AVIC VIA CHINA DEFENSE ONLINE
上)ノースロップ・グラマンの広告(2015年) 下)AVIC発表の映像から
確度の高いH-20情報は皆無に近いが、わかっている情報から同機がステルス全翼機で少なくとも10トンの兵装を搭載し約5千マイルの行動半径があるとわかる。人民解放軍空軍 (PLAAF) の現行機種H-6がソ連時代のTu-16バジャーが原型なのを考えると相当の性能アップとなる。中国は爆撃機の進化をいきなり数世代飛ばすことになる。
核非核両用CJ-10K空中発射巡航ミサイルを満載すれば、中国に全く別次元の長距離戦略機能が生まれ、敵制圧が可能となる。開発中のCJ-10新型ではレーダー探知特性がさらに減るといわれる。H-20導入で大陸間弾道ミサイル、潜水艦発射式弾道ミサイルと並び、長距離核攻撃爆撃機の「核の三本柱」が実現する。
「中距離爆撃機ではPLA空軍の欠点たる戦略攻撃能力と戦力抑止力が手に入る」と中国共産党の公式紙China Dailyが2015年に伝えている。「空軍には大陸間戦略爆撃機で敵防空網の突破する能力が必要だ」
行動半径が5,000マイルあれば太平洋地区で、特に南シナ海で危機発生時の初期段階に権益の防御に役立つ。中国政府は南シナ海の支配でますます強硬になっており、米駆逐艦が2018年9月にゲイヴン礁付近を航行した際に中国艦船が危険操艦で接近した事件も発生している。
JAPAN MOD
中国のH-6K爆撃機
H-20は太平洋で米軍にとり無視できない脅威になりうる。PLAAFには米海軍水上艦部隊への対抗手段となり、空母戦闘群や主要空軍海軍基地特にグアムに脅威となる。米軍はすでに既存基地が破壊あるいは使用できない事態が発生した場合を想定した準備もはじめており、B-2爆撃隊がウェイク島から初めて運用を実施したのもこの一環だ。
H-20が実際に姿を現し、高性能だと判明すれば、米軍全体にショック波が伝わり、米国防産業界では新規装備や戦術、戦闘手順を改め同機への対抗措置がすぐに生まれるだろう。中国が米国の最個数性能軍事装備の機密を盗んだ疑いに懸念が生まれるはずだ。
同機は敵防空網を突破し重要標的を無力化するだろう。例えば航空基地、指揮統制施設であり、大規模通常戦の初期段階に投入されるはずだ。また防空網に穴を開け後続する攻撃隊の突破経路を開く役割も想定されH-6がその恩恵をうけるはずだ。投入するとすればインドのような域内敵勢力を相手にした作戦だろう。
PLAAFは新旧爆撃機を当面使い続けるはずで、米国がB-21レイダーステルス爆撃機の運用を開始してもB-52を使い続けるのと同様だ。H-6は旧式だが低リスク環境なら重要任務を任せられるし、新型長距離兵器の母機としての使い勝手は高い。
DOD
ゲイヴン礁に構築した人工軍事施設の衛星写真
ゲイヴン礁は人工軍事施設のひとつだ。中国は各施設の軍備を増強しており、長距離地対空ミサイルまで設置し対抗勢力にとっては有事の際の障害となる。PLAAFはH-6爆撃機部隊をウッディ島に2018年5月にはじめて展開させ新設基地から大型機の運用能力を誇示した。
「こうした無謀な嫌がらせにもかかわらず米海軍はこれからも国際法の許す範囲で飛行、航行を続けて我が国益の求めに応じていく」とマイク・ペンス副大統領がゲイヴン礁事件を受け10月4日に演説した。「こんなことでおじけづくことはない。引き下がるわけに行かない」
H-20の存在をあきらかにしたのは米国初め各国に南シナ海問題への口出しをやめさせる狙いがあるのだろう。好例が2018年1月にオンライン上で流布した画像で中国が海軍用レイルガン試作品だと認め、実用化されればゲームの様相を一変する別の装備品となる。
H-6K含む中国爆撃機が南方海洋地方で離着陸訓練を行っている
こうした画像は公式発表分でないが中国政府が外部にその存在を意図的に目撃させソーシャルメディアに拡散させようとしたのは明らかだ。その後は公式ないし半公式に中国が各種装備の実用化を狙っていることが明らかになる。高性能有人機、無人機、極超音速兵器、衛星攻撃装備などこの例の枚挙にいとまがない。
米中両国の政府は緊張を極度に高めており、台湾向け軍事支援、貿易戦争、中国によるメディアを通じた露骨なドナルド・トランプ大統領攻撃など争点は多い。全てを念頭に入れると中国政府が公式メディアを使いH-20を軍事力増強の象徴とさせたとする説明も可能だ。実機の開発状況と無関係の場合もありうる。
「中国は政府をあげての動きを示しており、政治経済軍事のツールを駆使すると共に宣伝工作で米国内に自国の影響力を強め自国権益を確保しようとしている。軍事力を再建しつつ米国はこれからも自国権益をインド太平洋全域で主張していく」(ペンス副大統領)
中国がH-20開発に20年を費やしているとすれば、試作機が初飛行しても良さそうな頃である。現在の対米関係からすれば、初飛行は最悪のタイミングとなるのではないか。■
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