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次期大統領専用ヘリコプターVH-92開発の最新状況

リムジン車両に続き、今度はヘリコプターです。大統領専用機材は固定翼機も回転翼機も数十年に渡りかどうするため多額の予算で考えられるすべての改装をしつつ保守管理していくのですね。その両方にトランプの個人趣向が内装で働くとしたら今後30年間荷渡影響力を与える大統領になります。今後の新大統領が気に入らず全部入れ替えさせれば話は別ですが。(ホワイトハウスでは内装を変更することはまれではないようです)


Sikorsky's VH-92 Marches Towards Its Goal Of Flying The President As 'Marine One' in 2020シコースキーVH-92が次期「マリーンワン」稼働開始2020年の目標に向かい順調に進展中

Hurdles still lie ahead, but the program seems to be making progress towards its goal of replacing all 11 VH-3Ds and 8 VH-60Ns by 2023.

ハードルはまだ残るものの現行VH-3D(11機)、VH-60N(8機)の更新を2023年までに実現する目標に向かい順調に推移しているようだ

SIKORSKY VIDEO SCREENCAP

こにきてVH-92大統領専用ヘリコプター開発の現況について問い合わせが多数入っている。次期「マリーンワン」の初飛行をお知らせしてほぼ一年が経過したが、その後の開発は一部リスクの懸念があるものの極めて順調に推移している。
シコースキーがVH-92のテスト映像を公開しており、初めて同機の仕様が判明した。
VH-92の外観は普通のS-92ヘリバスと大差がないように見える。最大の相違点はAN/AAQ-24 Nemesisを原型とした指向性赤外線対抗装置Directional Infrared Countermeasures (DIRCM) の腹部フェアリング三枚だ。レーザーを使った赤外線誘導ミサイルを作動不全にする装備はエアフォースワンやマリーンワンの防御装備の中心で、米国や同盟国の軍用機で広く使われている。
シコースキーではVH-92実証機と呼ぶ機体を飛行させており、下にノースロップ・グラマンのイベントに登場した同機の写真を乗せる。同機がVH-92最終仕様とどこまで同じか不明だが、大統領専用機材を運営するHMX-1部隊と同様の塗色を施してあり、衛星通信装備を搭載しているようで、機体後部に視認できる
NORTHROP GRUMMAN

ただしVH-92の機内の様子は不明だ。HMX-1が運用中のVH-3D11機とVH-60N8機で内部は公開されており、VH-92も同様になるのではないか。S-92はVIP仕様に改装の余地が大きい。客室は広く、長く、高いため長距離ジェット機同様の乗り心地を提供し、通常ヘリコプターの窮屈な感じとは別物だ。レイアウトは多数あり、座席配置は各種可能だ。

S-92では空間的な贅沢が可能であり、通常のヘリコプターと異なる。この要素こそVH-3D後継機として決め手となったものだ。ただしVH-3Dでもそれなりに広いキャビンを実現している。
Kp3-Dの3Dデザイナー、キース・ピータースはシコースキー向けにVH-92機内のレンダリングを作成した。最終的なVH-92の客室とどこまで同じか不明だが、ドナルド・トランプの個人保有ボーイング757の客室の様子に似ている。
トランプはヘリコプターを熟知しており、ヘリコプター運行会社を経営したが、今もS-76数機を保有し個人及び社用輸送に使っている。このことを念頭にすればトランプが意匠になんらかの示唆を与えていても驚くにあたらない。これは今後登場するエアフォースワン後継機でも同様だ。

2018年4月、海軍航空システムズ本部(NAVAIR)からVH-92開発段階の完了が近づいたとの発表があった。開発は2014年に始まり、2019年中頃までの予定だった。その後、量産検討があり、まず6機が生産される。海軍はバラク・オバマ大統領がロバート・ゲイツ国防長官(当時)にVH-71事業の中止を命じたため別事業を開始したのだった。VH-71は費用増加のため批判を受けた。
海軍には12億ドルが与えられVH-92A開発がはじまり、別に9億ドル近くが2019年度予算に認められている。245百万ドル近くで開発を継続しながら残りの予算で低率生産による機材を調達する。
AP

VH-3Dは長年に渡り供用されているが、耐用年数が終わりに近づいている。とはいえシーキングヘリコプターがVVIP用途にここまで有効に活用できているのは驚くばかりだ。同機の初飛行は1960年代初期で、ホワイトハウスの有名な写真で何度となく登場している。水陸両用の性能も緊急時に役立つ。だがVH-92はそれをうわまわる機材になる。
現時点で米海軍はVH-92Aを23機調達する予定で、うち21機が海兵隊の第一ヘリコプター飛行隊 (HMX-1)に配備予定で「ホワイトトップ」塗色の現行VH-3D、VH-60N各機と交代する。この内一機が「マリーンワン」となり大統領が搭乗する他、その家族、閣僚顧問を国内外で搬送する。また四機は訓練用に使う。
NAVAIRは二機を引き続きテスト用とし、装備の更新に役立て、通信装備や防御機能の向上を目指す。
「開発期間中は変更を行わないが、全機そろったところで陳腐化対策や新規性能のため変更が生じる」と米海兵隊エリック・ロペラ大佐(VH-92A事業主幹)がRotor and Wing International誌(2018年4月号)で語っている。「その例として安全・状況認識機能の回収でMFD(多機能画面)をコックピットに導入することがあります。現行のS-92ではこれが4つあり、パイロット、コパイロット用に2つずつありますが、これはコックピット中央に追加するものです」
NAVAIR

ただし同月に米会計検査院(GAO)が公表した報告書ではVH-92A事業の進展に懸念が表明されていた。新規経費積算見積もりで海軍が123百万ドル節減する方策を見つけたが、まだ機体設計で変更の懸念があるというのだ。
「これまでの設計変更は最小限の改修しか必要でなかった」とGAO報告書にある。「改修には編隊飛行用照明、無線アンテナ、無線装置の変更などがあった」
事業推進室も前部扉の形状変更で乗降時の視界向上を検討し、安全確保を目指した。NAVAIRとシコースキー(現ロッキード・マーティン傘下の事業部)はローターブレイドから生じる風でホワイトハウスの差芝生ほか植生の損傷を防ぐ方法を見つけていない。
GAO報告書ではこの点にも触れている。
「発着場所は規模で制約があり、ホワイトハウス敷地内の損傷がは最小限にする必要がある。ただし、現時点で同事業では基本要求内容を実現できておらず、同機の発着場所で損傷発生は免れない」
もっと大事なのは核爆発で発生する電磁パルスへの強化策が未完成な点だ。また推進系でも問題が残っており、このことから低めの経費積算見積もりが正しいのか疑問が生まれている。
「GAOが引用した事項は解決済み、ないしシコースキーが取り組んでいるものであり今後の完全版VH-92Aヘリコプターの顧客向け納入に影響は生まれない」とロッキード・マーティンは2018年5月に声明を発表している。「シコースキーによる設計はすべての要求に応えるもので当社は前倒し日程で作業を進めている」
すべて予定通りなら海兵隊はHMX-1にVH-92Aへの機種転換を2019年開始させ2022年末までに転換を完了させると海兵隊による2018年航空運用計画にある。海兵隊は初期作戦能力獲得を2020年と見ている。
この機種転換を進めるべく、NAVAIRは民間企業PHI, Inc.に委託し、民生用S-92A一機でパイロット・乗員の訓練をパタクセントリバー海軍航空基地で2018年2月に開始している。同機の様子をスポッター各氏が目撃しており同社の黒黄色の塗装を施した同機がワシントンDC付近から海兵隊クアンティコ基地付近を飛ぶ様子が見られている。同基地にHMX-1が常駐している。
USMC

海軍による同機借り上げは一年続き、毎月約30時間で合計360時間にわたり飛行する。5ヶ月延長する予定もある。PHIとは米政府向けに謎のS-92機材を運用する企業の親会社である。
これで大統領専用ヘリコプターの更新事業の現況がおわかりと思うが、米海兵隊とホワイトハウスから新型ヘリコプター機材の情報開示が新型専用リムジン車両と同様にあるとよい。
リムジン車両は入れ替わりがあるが、マリーンワン・ヘリコプターは数十年で一回しか切り替えがなく、VH-92は大統領を安全に搬送してきたVH-3の50年の実績の影を拝することになる。S-92では世界最大の権力者を搬送するVH-92のみならず、米軍での稼働が始まることとなり、今後その他用途での受注も拡大していくだろう。■
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