うーん、この通りなら中国の軍拡が進んでも日本含む周辺国がA2/ADを独自に整備すれば、中国はさらに軍事支出をふやしいつか破綻するのではないでしょうか。もちろん周辺国も侵攻を受けるリスクが増えるわけですし、中国の既得権も認めることになるわけですが。一種の開き治り戦略ともいえるでしょうね。両陣営が戦わずに勝利をそれぞれめざすことになります。それにしても中国に同盟国がないことが救いで、それだけにふらふらする韓国の動向が非常に気になるところです。
Why China Can't Conquer Taiwan in a War
中国が台湾を背圧武力制圧できない理由
November 17, 2017
第19回党大会で権力基盤を固めた習近平主席が内向きになる米国を見てアジア太平洋を中国の思いのままにする好機と見ているかもしれない。この度発表された研究成果ではこの点に触れつつ、北京に周辺国を敗退させる軍事力はないと分析し、とくに台湾占領は無理だとする。
- 研究をまとめたのはマイケル・ベックリー Michael Beckley(タフツ大准教授(政治学))で学術誌International Securityに掲載した。ベックリーは米軍支援が最小限でも中国周辺国が各国で接近阻止領域拒否戦略を取れば中国軍の阻害は可能と主張。
- 「東アジアで新しい軍事力バランスが出現の兆候があり、米国は中程度のリスクで兵力増強が可能だ」「このバランスは今後も安定したままとなる。各国のA2/AD効果を打ち破る兵力投射能力は中国に実現しないためだ。根拠は兵力投射部隊の整備はA2/AD部隊整備よりはるかに大規模な予算が必要となるからだ」と述べている。
- A2/ADは米国の介入をさせない中国戦略として語られているが、ジェイムズ・ホームズ、トシ・ヨシハラ、アンドリュー・クレピネヴィッチ等は米国はアジア同盟国とともにこの戦略を中国相手に展開すべきと主張している。中国を困難にさせればよいというのだ。ベックリーは「この戦略では米国は東アジア制海権は断念するかわりに周辺国を助けて中国の制海権制空権確立を困難にすればよい」と説明。
- ベックリーは新戦略を想定される軍事衝突シナリオ数点で試した。その一つが台湾海峡からの中国侵攻だ。そもそも揚陸侵攻作戦は難易度が一番高いが、侵攻部隊の移動途中を狙える精密誘導兵器の時代では一層困難になる。
- 台湾侵攻作戦の成功には中国は航空優勢、海上制圧の完璧な確立が必須だ。「台湾に防空体制や攻撃手段が温存されれば中国の侵攻は不可能となる。台湾海峡を移動中の中国艦艇を攻撃できる制海権を台湾が維持するからだ」とし、中国にはミサイル相当数があり開戦直後に台湾防空体制を破壊するといわれるが、台湾を無力化するには完全な奇襲攻撃でない限り無理とする。台湾の早期警戒が有効なら作戦機材を国内36箇所の航空基地、民間空港さらに高速道路に分散させ緊急運用体制を整えるだろう。台湾には移動式ミサイル発射機、対空兵器もあり艦船潜水艦も巡航ミサイルで中国部隊を攻撃するだろう。
- ベックリーが指摘するように中国が防衛体制を先制攻撃ですべて壊滅させるとは考えにくい。まず台湾には高性能早期警戒防空体制がある。米国でさえ第一湾岸戦争でここまでの実力がないイラク防空網や1999年のセルビアで完全破壊できなかったではないか。
- 当時の米国を上回る実力を中国が示したとしても揚陸作戦の成功は確実とは言えない。例えばベックリーは上陸に適した地点は台湾海岸線の1割しかないと指摘し、台湾は一部地点に重点的に防御態勢を敷けばよく中国上陸部隊は数の上でも劣勢になるという。
- そうなると最大限に楽観的な評価(北京の視点)をつかってまでも中国は台湾占領に躍起となるだろう。ベックリーは「米国は侵攻部隊を失敗させ戦況を一変させるべく米軍艦船や非ステルス機を中国のA2/ADに晒せる必要のない対応方法多数がある」と述べている。具体的には米軍による試算では「台湾の沿岸部に1万ないし2万ポンドを投下してPLA侵攻部隊をなぶり殺しにする」必要がある。この役目にはB-2爆撃機一機あるいはオハイオ級潜水艦一隻を投入すればよい。
- さらにベックリーは東シナ海、南シナ海の制海権を中国は簡単に確立すできないと指摘する。ヴィエトナムや日本の抵抗をその理由にあげる。中国が地域内で軍事優位性を手に入れる可能性がは一般に考えられるより低い。このため中国は戦わずに勝利する戦略をとっているのであり、今までのところ比較的成功していると言える。■
Image: Reuters
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