スキップしてメイン コンテンツに移動

米戦略軍核戦争演習の結果から----指揮統制機能は生き残れるのか


核兵器体系の近代化に今後莫大な予算が必要との指摘があり戦略軍からの発信は今後増えるでしょう。トランプ大統領に不安を感じる動きもあり、今回紹介する記事でも意見の違う専門家のやり取りが見えてきます。意見が違っても耳を傾けるのが健全な言論社会のありようと思いますが、実際にはあまりにも短絡的な反応や圧殺に向かうのは異様ですね。このブログをご愛読の皆さんは健全であってほしいと思います。

STRATCOM Wargames Its Own Death; Who Watches The President?

STRATCOM演習で米本土壊滅、だれも大統領を制御できない

"Ivy King" nuclear test,, 1952. Courtesy Los Alamos National Laboratory.
By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on November 09, 2017 at 3:56 PM
WASHINGTON: 今週初め米戦略軍団STRATCOMは核戦争演習の最後で時計をにらみながら(シミュレーションの)ミサイルが米本土基地に着弾し「地面に煙を出す大穴が開く」のを待つしかなかった。
  1. 陸軍准将グレゴリー・ボーウェンBrig. Gen. Gregory BowenはSTRATCOMでグローバル作戦副司令官で10日間のグローバルサンダー2018演習でSTRATCOM司令官ジョン・ハイテン大将の就寝中に指揮代行した。
Army photo
Gregory Bowen takes the oath of office on being promoted to brigadier general.
  1. 「ミサイルの応酬の最後には司令部(ネブラスカ州オマハのオファット空軍基地)が地面の穴になり煙につつまれた」とブラウン准将はDefense One主催カンファレンスで発言している。「時間がゼロになると司令部スクリーン全部が消え照明が落とされみんな座り込み何が起こったのか咀嚼しようとした」
  2. グローバルサンダー演習の第一の目的はSTRATCOMの地球規模での指揮統制通信ネットワークのストレステストだった。「不完全な状況でも運用の必要があります」(ブラウン)報告や命令がすべて届かないことがコンピュータハッキングや通信妨害でありうるし、核兵器によりネットワークが物理的に機能しなくなり通信状況は全般的に悪化する。
  3. シミュレーションの交戦が進行するにつれ、「指揮統制機能は低下し最後はジェット機に頼らざるをえなくなった」とブラウンが言うのはボーイング747を改装し通信電子装置を詰め込んだE-4B別名国家空中作戦センターまたは冷戦時のコードネーム、ルッキンググラスである。極限状況でも「大統領命令を実行できる残存性高い手段が残る」とブラウンは言う。
Air Force photo
E-4B command and control aircraft
  1. だが大統領から誤った命令が出たらどうなるのか。DefenseOneのパネルディスカッションでブラウン准将と並んだジョセフ・シリンシオンJoseph Cirincione(Ploughshares Fund代表)はトランプ大統領の言動に不安を感じ核の指揮統制機能を注視しているという。一発のミサイル発射には将校二名がキーを同時に回す必要があるが、大統領は一人でミサイル全部の発射命令を出せる。ボブ・コーカー上院議員Senator Bob Corkerはトランプに反対する立場から来週の公聴会で大統領の核兵器運用権限を論じるが40年ぶりのこととなる。
  2. 「大統領が命令すればだれも逆らえない。全員が反乱を起こさないかぎり止められない。大統領本人だと検証されればミサイル発射は4分か5分後にだ」「ここまでの権限を一人に与えていいのか」(シリンシオン)
  3. ブラウン准将は現行制度を擁護する。「理由あってこの形になっています。ミサイルが飛来する極限状況で迅速対応する目的で作られています」「実際は極めて厳格な手順になっています」 大統領は国防長官、国務長官、統合参謀本部議長他主要補佐官と連絡する必要があるとブラウンは説明。軍は大統領に選択肢を提示し、静観から通常兵器のみによる反撃さらに核による反抗まで幅がある。
  4. 紙の上ではきれいに聞こえるとシリンシオンは指摘し、大統領に上記の各人と協議することは求められておらず、せいぜい意見を聞くだけだとする。大統領が核先制攻撃の命令を突然出したら、部下は尻込みして法的な根拠を探すだろうとシリンシオンも認める。だが危機のさなかでは敬礼して発射してしまうだろうというのだ。
  5. 危機状況ではエスカレートの可能性が強いとブラウン准将も認める。STRATCOM演習でも通常戦が核保有国同士で発生すれば、ロシアがその例で、核兵器投入は即時あるいはその後になりそうだと判明している。グローバルサンダーのシナリオがまさしくこの例だった。ブラウンは「通常戦で始まったが、状況が悪化して核兵器の応酬になった」と述べた。
  6. ではエスカレーションを食い止められないのか。「あくまでも不確実」とブラウンは発言。「一方が負け始めていると感じれば核兵器投入の誘惑にかられる」
  7. とくに不確実になるのは一方が「事態鎮静化のためにエスカレートさせる」考えを採用している場合だ。ロシア関係者からは通常戦で不利な状況になれば限定的核攻撃で敵軍を後退させる可能性があるとの発言が出ている。ブラウンも「ロシアは勝利をつかむためにエスカレートさせるのであって鎮静化が目的ではない」と述べた。
  8. シリンシオンは一部米専門家にもロシア同様に限定先制攻撃を是認する動きがあり、限定効果でエスカレーションを制御できるというのは錯覚に過ぎないと指摘。この考え方だと「使用可能な」核兵器がもっと必要との主張につながる。物議を醸す空中発射巡航ミサイル(ALCM)の後継モデルがその例だという。
  9. ブラウンはこの考え方に賛同しない。ALCMはB-52やオハイオ級潜水艦、核兵器運用の指揮統制ネットワーク同様に近代化が待ったなしの装備の一例にすぎないという。
  10. 「決定の先送りで、システムが老朽化しています」とブラウンは指摘。「装備すべてが旧式になっており、更新が必要です。たしかに高額の予算が必要ですが、これは国が生き残るための保険なのです」■

コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ