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スコーピオンのサウジアラビア売込みは成功するのか、ドバイ航空ショーに注目


以前から中東某国からの引き合いがあると豪語してきたテキストロンですがまだ成約への道は遠いようです。米空軍の軽攻撃機実証では芳しくない評価だったようですが何が問題だったのでしょうか。


Saudi Arabia Puts Textron's Scorpion Light Attack Jet Through Its Paces 

サウジアラビアがテキストロンのスコーピオン軽攻撃機に関心を示す

Could the Kingdom be the adaptable jet's first customer? 

同王国がスコーピオン初の採用国になるのか



TEXTRON AIRLAND
BY JOSEPH TREVITHICKNOVEMBER 3, 2017

  1. サウジアラビアがテキストロン・エアランドのスコーピオン軽攻撃機の評価を開始した模様だ。ただし残虐なイエメン介入をやめる兆候がない同国へ反感が広まる中で商談は難航しそうだし、破談の可能性もある。
  2. 飛行経路追跡ウェブサイトで王立サウジ空軍のキングファイサル航空基地を2017年11月に離陸するスコーピオン実証機民間登録番号N532TXを発見した。FlightGlobalが砂漠上空を飛ぶ同機がを先に確認しており、テキストロンが今年のドバイ航空ショーに出展するとの観測がある。ショーは11月12日開幕する。
  3. 「スコーピオンの性能は(サウジの)要求にぴったりです」とテキストロンCEOスコット・ドネリーScott Donnellyが2017年7月に報道陣に語っていた。商談は「まだ初期段階」と述べ、正式商談ではないと強調していた。
  4. だがサウジはスコーピオンにぴったりな販売先と言える。ドナルド・トランプ大統領が同国を2017年5月公式訪問し両国は1100億ドル相当の武器売却で合意していた。
USAF
スコーピオン試作機N532TX
  1. うち20億ドルが「軽量近接航空支援」機材の想定だった。内容は不明だし、サウジが何機調達する想定かわからない。
  2. 販売提案はいわゆる「意向書」の形で「将来の防衛能力整備の可能性」に関心を表明した同盟国への米政府の対応だ。案件は最終ではなく最後には議会および国務省の承認が必要がある。
  3. テキストロンがスコーピオンのサウジ売り込みに力を入れているのは間違いない。同社は2012年に同機開発を開始し2013年12月に試作機を初飛行させたがまだ顧客がない。
  4. 米空軍は軽攻撃機(OA-X)候補各機の実証を2017年8月30日に終了した。ただし、空軍は同機が第二段階実証に進むのに必要な性能を有していないと明確に述べている。ただし第二段階はまだ実現していない。
  5. テキストロンが自社資金で始めた同機事業は運用経費、保守点検経費ともに低水準にすべく複合材や民生既成部品を多用し「プラグアンドプレイ」のモジュラー構造のため必要に応じエイビオニクス他を将来の高性能化に対応して搭載できる。エンジンは既成品のハネウェルTFE731ターボファン双発で民間ビジネスジェットと共通だ。
  6. スコーピオンは競合機より大型で重量も大きい。テキストロン自身のAT-6ウルバリン、知名度が高いエンブラエルのスーパーツカーノはみな単発ターボプロップ機だ。その他に農薬散布機を原型にした競合機もある。
  7. スコーピオンには比較的大型のミッションベイがあり、偵察カメラ、レーダー妨害装置、他の搭載が可能。実証では引き込み式センサータレットを機首下に搭載し電子光学赤外線フルモーションビデオカメラ数台を付けていた。
  8. 主翼下パイロン6箇所に各種兵装の搭載が可能だ。精密誘導爆弾、ミサイル、ガンポッドだ。2017年6月にはテキストロンはGBU-12/Bレーザー誘導爆弾、高性能精密攻撃兵器システムII(APKWSII)の70mmレーザー誘導度ロケット弾を実弾発射している。さらにGBU-39/B小口径爆弾(SDB)、共用直接攻撃弾(JDAM)、複合モード対応可能のブリムストーンミサイル、GBU-53/B(SDBII)の搭載も検討中だ。
TEXTRON AIRLAND
APKWS IIレーザー誘導ロケット弾を発射するスコーピオン試作機
  1. サウジに導入する場合は目標捕捉センサー一式と精密誘導兵器の組み合わせが理想的で、イエメン作戦に低経費で投入できる。イエメンではイラン支援を受けたフーシ反乱勢力等と戦っている。現在はF-15Sイーグルおよびユーロファイター・タイフーンの他可変翼式のパナヴィア・トーネードを投入して戦闘員を攻撃している。
  2. AT-6やスーパーツカーノと言った小型機と違い、スコーピオンは自機防御装備も搭載可能なのでイエメンの対空火砲に対し残存性が高い。実際のフーシの防空装備の性能は不明だが、旧イエメン軍のSA-2地対空ミサイルを入手している可能性がある。また携帯型防空装備(MANPADS)が相当数行き渡っている。
  3. サウジ軍はイエメン介入をはじめた2015年以降に十数機の固定翼機回転翼機を喪失している。直近ではタイフーン一機が10月に墜落しており、フーシが撃墜を主張しサウジ側が否定するのはいつも通りだ。サウジはモロッコ、バーレーン、UAEの軍用機にも被害が出ていると認める。
  4. 対地捜索レーダーを搭載すればスコーピオンなら低空低速国境パトロ―ル飛行にも最適で小舟艇や無人機の侵入に対応できる。現在は気象レーダーしか搭載していないがレオナルドのグリフォやEltaのEL/M-2032といった軍用パルスドップラーレーダーを搭載すれば理想的だろう
  5. サウジ側は同機の能力追加を評価するのではないか。フーシは国境を越えて活動を展開している。連合国側艦船に対艦ミサイルやバウ発物をつんだ遠隔操縦ボートで攻撃したほか紅海とアデン湾をむすぶマンデブ海峡で機雷敷設もしている。自殺攻撃無人機で防空装備の攻撃も狙ってくるだろう。
  6. スコーピオンに精密攻撃可能なAPKWSIIロケット弾と自動機関銃ポッドを搭載すればコストで効果的でかつ柔軟に脅威対象を対処できる。軽攻撃機部隊はサウジ空軍の高性能機の負担を軽減し本来の任務であるイラン警戒に投入できる。
  7. だがサウジとテキストロンの商談ではイエメン情勢が大きく影響し政治面に左右されそうだ。サウジが意図的に医療施設や民間インフラを国際法の保護を無視して攻撃したようだ。このためイエメンでは飢餓と伝染病の蔓延が発生した。
  8. このため米議会の共和民主両党議員はサウジ主導の軍事作戦の支援を快く思わない傾向が強まっている。米軍は空中給油、補給活動、情報共有を提供している。11月には下院議員数名がこの問題を取り上げアルカイダテロリストまたは「関連勢力」とは無関係の相手に対する米軍の関与を終了させようとしている。この定義だとフーシが対象外となる可能性がある。
  9. 下院版の国防予算案にも同様の条項が入っている。上院版にないため今後両院で最終形への調整が必要だ。
  10. このためサウジ作戦への米支援には政治面の要素が大きく作用し、スコーピオン導入も例外ではない。トランプ政権はオバマ大統領が課したサウジアラビアへの軍事装備提供の制限を撤廃しており、サウジの期待する内容には十分こたえられるようだ。
  11. サルマン・ビン・アブラジズ・アル・サウド国王King Salman bin Abdulaziz Al Saudが2017年10月にモスクワ訪問に踏み切り各種装備導入で合意を取り付けている。米国が躊躇するのならクレムリンにかわりにするだけだ。
  12. 双発練習機ヤコブレフYak-130がスコーピオンの競争相手になりそうだ。サウジ-ロシア間では航空機は具体的な想定はないようだが、クレムリンには以前からの米国の中東同盟国に高性能機材を売り込む絶好の機会がやってきたわけでUAEにはすでにSu-35SフランカーE十数機の販売が進行中だ。
  13. サウジアラビア向けのテスト飛行とは関係なく、テキストロンはドバイ航空ショーで重要な発表をしそうだ。■

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