Russia Rolls Out New Tu-160M2, But Are Moscow's Bomber Ambitions Realistic?
ロシアがTu-160M2をロースアウトしたが戦略爆撃機整備計画は現実に即しているのか
Despite budget cuts and other issues, the Kremlin remains optimistic that flight testing will begin within months.
予算削減他にもかかわらずクレムリンはフライトテスト開始は数か月以内と楽観的
ロシア合同航空機企業(UAC)が同社カザン工場で改良型Tu-160M2試作1号機をロールアウトした。ロシア空軍は同機をTu-95MSと並ぶ戦略核攻撃力の柱と見るが、予算不足、産業基盤の弱体化他で装備近代化は簡単にいかないだろう。
- 2017年11月16日、ロールアウトと同時にロシアの副首相ドミトリ・ロゴジン Dmitry Rogozin は2018年にフライトテストを開始、低率初期生産はその翌年に開始し、2023年から連続引き渡しすると発表。その時点でUACは年間2-3機を引き渡す。クレムリンは2015年にブラックジャック生産ライン再開を発表していた。
- Tu-160Mと比べてTu-160M2の改良内容の全体像がわからないが、ロシア関係者はM2は従来型Tu-160と部品点数ほぼ6割が共通と説明していた。
- M2が完全新規製造機なのかも不明だ。UACでは試作機は既存機を改装したものと認めるが、ロシア軍は最低50機調達したいとしており、Tu-160Mの生産機数はわずか16機だ。
- UAC公表の試作一号機の写真を見ると機体大部分は大きな違いはないようだ。ソ連時代のTu-160はロシア愛称がBeliy Lebed (白鳥)であり、1970年代に開発開始し、初飛行は1981年だった。2015年まで実戦投入されなかったが、同年にシリア国内に向け巡航ミサイルを発射している。
- M2はエンジンをNK-32 02シリーズに一新したと伝えられる。NK-32原型は最高強力な低バイパス比ターボファンエンジンであり、アフターバーナーで55千ポンドの推力を出す。これに対してB-1爆撃機のジェネラルエレクトリックF101の推力はアフターバーナーを作動させて31千ポンドだ。ただしTu-160は機体サイズがB-1より大きい。
- エンジンメーカー合同エンジン企業(UEC)によれば02シリーズでは大幅に効率が改良されTu-160M2は燃料比率が向上しており、航続距離は600マイルも伸びた。同じエンジンはロシアのステルス戦闘機PAK-DAにも使われている。エンジンテストは2017年10月に始まったばかりだがM2試作一号機に同エンジンが搭載されているかは不明だ。
- さらにロシアによればTu-160Mからエイビオニクスを刷新している。M型でも改良があったが、UACは完全デジタル「グラスコックピット」だとほのめかしている。
ALEX BELTYUKOV VIA WIKIMEDIA
Tu-160ブラックジャック原型のコックピット
- 2017年6月に無線電子技術集団(ロシア名KRET)の第一副CEOウラジミール・ミヘイエフ Vladimir MikheyevがTu-160M2に新型電子装備が搭載されるとTASS通信に伝えていた。国営企業の同社は無線、航法、レーダー、情報収集機器を軍民双方に提供している。
- ミヘイエフによれば新型ブラックジャックには慣性航法装置と天測航法装置が搭載されるという。注目したいのは後者でGPSに相当するGLONASS衛星航法が攻撃を受けたり機能しない場合の予備となる点だ。ロシア軍はGPS衛星の攻撃妨害手段を開発中で自軍への損害も想定している。
- ロシア報道によればTu-160M2には電子スキャンアレイレーダー(AESA)も搭載される。乗員は危険となる脅威対象を長距離で正確に探知できるようになる。
UAC
UACカザン工場でのTu-160M2
- もっと重要なのは白鳥が強力な防御手段を搭載することで、KRET幹部は「あらゆる形式のミサイルから防御」すると言っている。ミヘイエフもTASSも共にこの点について語っていないが可能性はある。
VLADIMIR RODIONOV/AFP/GETTY IMAGES
プーチン大統領が2005年にTu-160に搭乗したことは広く宣伝された。 白鳥はロシアの誇りの象徴として見られている。
- 防御装備の詳細は不明だが、Tu-160M2がどこかの段階で「ハードキル」と呼ぶミサイルを物理的に破壊する手段を搭載するといわれる。2017年6月にノースロップ・グラマンがそのような装備の特許を申請している。新型の白鳥には各種防御装備を共通センサーを中心に搭載し、爆撃機の防御を多層構造で実現するのだろう。
- Tu-160M2は旧型Tu-160M同様の戦略核・通常ミッションを実施するとロシア関係者は述べている。ただしM2は低視認性がないため、長距離空中発射式Kh-101、核弾頭付きKh-102巡航ミサイルでスタンドオフ攻撃し、敵の統合防空体制を回避するはずだ。
- クレムリンは最低50機調達したいと言っているが、ここに試作機、旧型からの転換機が含まれるか不明だ。UACに未完成機が何機あるか不明で保管中の機体状況も不明だ。
- ソ連時代にツボレフ(現UAC傘下)がTu-160を35機生産し、うち19機がソ連崩壊でウクライナに残った。このうち8機が2000年代にウクライナの債務支払い分としてロシアが回収したがスクラップ処分されたようだ。現在作戦行動可能なのは16機で、稼働していなかった8機がTu-160M2仕様に改装用に使える。
- ただしUACが新規製造の再開を避けるのであれば26機を集めなければならないことになる。生産再開となれば非常に高価になる。いずれにせよ同社が言うように2023年以降に年間2-3機を納入するのであれば全機がロシア空軍にそろうのに10年以上かかることになる。
- ロシアでは原油価格低迷により国防事業削減が続いており、ウクライナ、シリア関連で制裁措置の効果が加わっている。
- クレムリンはTu-160M2の実現でPAK DAステルス爆撃機開発の「再計画」つまり遅延させてもよいと決定している。後者についてUACから構想決定案は出ていない。
- M2関連は既存Tu-160M16機の保守管理と並行し資源を取り合う状況になっている。そロシア石油大富豪の希望で白鳥の一機を超高速プライベートジェットに転用する余裕などない。
MAKSIM BOGODVID/SPUTNIK VIA AP
UACカザン工場で16機残るTu-160Mの一機が大修理に入っている。
- Tu-160M2の新規生産が開始されればPAK DAの実現が遠のく。新規製造にせよ改装にせよ新仕様の白鳥はロシア戦略兵力が完全新型機のステルス爆撃機を製造するより近道なのは明らかだ。
- M2改修化がすでに遅延しているのは明らかで2016年にロシア空軍トップのヴィクトル・ボンダレフ上級大将Colonel General Viktor BondarevがRIAノーボスチ通信に本格生産は2021年開始と述べており、現在の2023年見通しと食い違っている。
PHOTO BY MARINA LYSTSEVA\TASS VIA GETTY IMAGES
- 2017年11月にロゴジン副首相はプーチン大統領にTu-160M2フライトテストが2018年2月開始と報告していたが、本人はTASS通信には「見込み」と語っていた。
- ただしブラックジャック50機を運用する際の総経費は意識されていないようだ。現在のロシア空軍のTu-160機数が三倍になるわけで、白鳥のうち何機が常時作戦可能状態になるのか不明だ。
- ロシア当局は戦略爆撃機の近代化改修を高優先国防事業にしているが、それだけで機体が予定通り実現して期待通りの性能が全部実現するわけではない。■
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