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攻撃型原潜の修理工程が消化しきれない米国の事情


原子力潜水艦は建造してもその後が大変ですね。特にこれまでは燃料交換作業が前提の設計で酷使されていればあちこちが痛みます。退役させるだけでも大変で、ロシアは簡単に海に捨てていました。(日米が資金技術援助して後日処理しています)中国はあとで大変なことになるのではないでしょうかね。国防装備の整備とは経済インフラあってこそ可能と改めてわかるお話ですね。


15 Subs Kept Out of Service: 177 Months Of Drydock Backups

補修作業待ち潜水艦15隻が戦力外で工程遅延合計は177か月に


Navy photo
ドック入りしたUSSグリーンヴィル
By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on October 31, 2017 at 1:54 PM
WASHINGTON:攻撃型原子力水艦の保守点検作業で15隻が順番待ちで、合計177か月相当の作業ができない状態になっており、海軍の打開策が予算不足で立ち往生していると下院軍事委員会スタッフがBreaking Defenseに紹介している。
  1. 待ち時間合計は潜水艦一隻なら供用15年間分に相当し、2018年に補修作業に入る艦が現役復帰するのが2033年になるようなものだ。
  2. 予算案を通過させ支出上限を設けることができるのは議会だけだと同スタッフは指摘の上、解決策の一部は海軍の手にあるとする。民間造船所への業務委託だが海軍には気に入らない選択肢だ。
  3. 潜水艦多数が惨めな状況になっている。好例がUSSボイシーでノーフォーク海軍工廠で大修理を2016年開始の予定だったが今も順番待ちだ。政府は原案を断念しニューポートニューズ造船へ委託事業385.6百万ドル相当の契約を交付した。同造船所は海軍工廠をはさんだジェイムズ河の対岸にある。ボイシーは当初予定より31か月遅れてなお供用不能の状態だ。
  4. だがボイシーだけではない。下院軍事委員会調べで他14隻で影響が出ており、遅延規模は2か月(USSコロンビア、モントペリエ、テキサス)から21か月(グリーンヴィル)までばらついている。保守点検作業をしないと各艦は安全潜航できず現役復帰できない。USSスレッシャー事故(1963年)以降、海軍はこの手順を厳格に守っている。「海軍原子炉部に規則改正を求めるのは至難のわざだ」とスタッフがこぼす。
Sydney J. Freedberg Jr. graphic from Navy data
  1. 海軍に緩和策があるが抜本解決策はない。予算がもっとあれば工程を調整し、有効証明の期間延長他を実施でき、修理作業も迅速に実施でき潜水艦部隊全体の待ち時間も81か月に短縮できるはずだ。
  2. 7年近くも海上で作戦できないことになる。各艦で供用期間の23パーセントをみすみす無駄にしていることになる。7年ムダにするのは2018年予算の新造艦から一隻を外し復帰まで2025年まで待つことと同じだ。
  3. 上図で数字を示した。だがここで見えないのは別のところへのしわ寄せだと議会スタッフは怖いことをいう。中間時点の点検修理を受けられない艦に加え耐用年数が切れた老朽艦の退役が思うようにできないことだ。
  4. 原子力推進艦では供用期間が終わったからと言ってポイと捨てるわけにはいかない。原子炉の稼働中止だけでも相当の手順があり、その後放射能を帯びた艦内部品を除去し、その他放射能と無縁の残り部分を解体する。
  5. さらに原子力潜水艦の耐用年数が終わりに近づくとが炉心出力が低下し、技術科員の尽力でやりくりしている。解体を待つ旧式艦は単純に係留されているわけではなく、ほぼ半数の乗組員が配属されたままなのだ。退役が遅れると予算とともに高度に訓練をうけた乗組員が無駄になる。
General Dynamics
エレクトリックボートの潜水艦建造施設はコネチカット州グロートンにある
  1. そのため潜水艦補修作業の緩和策が実施可能となっても、旧式艦の退役問題が残ることとなる。だが緩和策の実施そのものが困難になっている。一か月前に始まった2018年度予定の補修作業三例で予算手当がついていない。議会はその場しのぎ策の継続決議を通過させて政府支出を自動調整させるため今回のような緩和策向けに回すゆとりがない。議会が予算を認めても今度は予算管理法(BCA)の上限にぶつかり、各種即応体制の維持に必要な予算が確保できない状態が続いている。
  2. 現時点の海軍の問題の原因は過去のBCA起因の予算削減や継続決議にあると下院軍事委員会スタッフは見ており、レーガン時代に建造された艦が多数退役を迎えているのも別の原因だ。今日でも海軍の任務量は変わりがないが隻数は減っているので各艦の展開期間が長くなっている。その結果、当初の修理予定が実施できない艦がふえており、修理作業が混乱を避けられずだけでなく艦の疲弊度が高くなり故障箇所が増えるため作業工程がさらに伸びる。
  3. 攻撃潜水艦部隊でことを複雑にする要因が原子力推進だ。整備作業できるのは装備を完備し訓練を受けた人員がそろったわずか数か所で海軍は内部作業を好むが、原子力対応施設は限られており、さらに弾道ミサイル潜水艦や空母の作業が優先される。点検修理日程がミサイル原潜や空母で変更されると攻撃潜水艦はリストからはずされる。
  4. このため海軍はついにボイシーで修理点検をハンティントン=インガルス工業のニューポートニューズ造船所(ヴァージニア州)に外部委託した。同所は対応可能な民間施設二か所の一つでもう一か所はジェネラルダイナミクスのエレクトリックボート(ニューイングランド)だ。民間施設では作業の余力があり「今後5年間」は大丈夫と下院軍事委員会スタッフは見ている。その後は次期ミサイル原潜コロンビア級の建造が入るため余裕はなくなる。
  5. 民間施設での作業は高価になるのでボイシー除き外注の必要はないと海軍は議会に伝えているが、下院軍事委員会スタッフは真に受けていない。ボイシーは現在機関系の大修理中だが議会スタッフは「潜水艦の供用期間通じて一番複雑な作業が外部委託できる」とし、「今手にしている三年五年の戦略的な機会」を使えば民間施設を活用できるのに使わない手はあるだろうかと述べている。■

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