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中国が空中給油能力を獲得するとこうなる


中国が空中給油能力を獲得すればそれだけ脆弱性が増えて、西側は給油機を狙い撃ちするだけでしょう。数字の上では各地を狙えるはずですが、中国がそこまでの軍事組織を動員する作戦を展開するとは思えません。(今のところ)日本としては尖閣諸島上空にPLAAF戦闘機が滞空時間を延ばす効果を上げるのが困るでしょうね。


This Piece of Chinese Military Hardware Could Change the Balance of Power in Asia

この中国軍用機がアジアの軍事バランスを変えてしまうかもしれない
A Y-20 transport plane of People's Liberation Army Air Force is seen on the tarmac after its arrival for the upcoming China International Aviation & Aerospace Exhibition, in Zhuhai, Guangdong province
November 6, 2017


  1. 2001年10月7日、米軍がタリバン・アルカイダのアフガニスタン国内拠点に空爆を開始し不朽の自由作戦が始まった。爆撃機15機攻撃機25機が巡航ミサイル50発を45拠点に発射した。第一段階が終わった2001年12月23日までに米空軍、海軍、海兵隊は6,500ソーティで17,500発を各種標的に発射している。
  2. 米空軍の発進地点はアフガニスタンから遠い場合で数千マイル離れており「エアブリッジ」が必要となり、米空軍はKC-135やKC-10を動員し海軍はS-3ヴァイキング(現在は全機退役)を動員した。
  3. 中国人民解放軍(PLA)は米軍の砂漠の盾・砂漠の嵐作戦、NATOのバルカン作戦、不朽の自由作戦、イラクの自由作戦を詳しく観察し、近代戦における航空戦力の意義に注目した。PLAに「ショック」だったのはハイテク戦を展開しないと先進的な他国軍に互角に戦えないことがわかったからだ。中国の軍事戦略は大幅に変化し「新時代にむけた軍事戦略ガイドライン」(中国共産党およびPLA、1993年)が発行された。長距離航空攻撃ミッションが不朽の自由作戦・イラクの自由作戦で展開できたのは空中給油があったからで航空兵力投射が実現できた現実を中国軍指導部は厳粛に受け止めた。
背景
  1. 中国の空中給油の出発点はツボレフTu-16K爆撃機のコピー生産が始まった1960年代末だ。生産は1980年代末まで続き、H-6と名称を変えH-6U空中給油の開発原型機となった。ただしH-6Uは1993年の国家軍事改革方針に合致せず、そのためH-6Uは20機未満に過ぎず能力も不足している。これを補うためPLAはイリューシンIL-78ミダス給油機をロシア(ウクライナ)から調達し空中給油能力を獲得したばかりか国産機に使える技術を入手した。
  2. ただし空中給油能力の不足がPLA空軍(PLAAF)およびPLA海軍航空隊(PLANAF)の航空兵力投射能力を制約していると2014年版の米中経済安全保障検討委員会報告が指摘している。「中国には空中給油機が不足し技術も劣るため現行作戦機は空中給油を受けられない。このため進出範囲が限定される。空中給油機材はおよそ12機のH-6Uで大規模長距離航空作戦の継続には圧倒的に不足している」
  3. PLAAFは西安Y-20鲲鹏“Kunpeng” (数千マイル飛行できるといわれる中国の伝説の鳥)大型輸送機の一号機を改装して国産給油機を作成し、初飛行を2013年1月に行っている。同機はその後エンジン研究開発評価に投入された。
  4. 2017年3月にPLAはY-20量産を発表し、同機設計主任Tang Chang Hongは8か月にわたる実用試験を経てPLAAFは同機の性能に満足していると語った。「Y-20を母機に大型かつ重要な機材を開発する」とし、空中早期警戒統制(AEW&C)や空中給油機のことを指しているらしい。
  5. ただし空中給油は長距離航空兵力投射を支える一要素にすぎない。
どう活用するのか
  1. 2007年からH-6K型爆撃機の空中給油能力も含む性能改修が始まった。2015年3月にはPLAAFはH-6で長距離かつ複雑な洋上航空作戦を日本海、フィリピン海、南シナ海で展開しはじめた。作戦は第一列島線を越え西太平洋に宮古海峡、バシー海峡から通過して展開された。2016年にPLAAFは台湾一周飛行や「戦闘哨戒飛行」を南シナ海上空で開始し、飛行には少なくとも6種類の支援機材として情報収集機、早期警戒機、戦闘機、電子戦機が投入された。さらに毎回の飛行はPLAN水上艦艇群と連絡し、中国軍の統合運用の様相を示している。
  2. 戦略的な意味では爆撃機フライトは台湾の蔡総統政権に圧力をかけるだけでなく中台紛争の発生時は米軍に介入を思いとどまららせる効果もある。作戦面ではフライトはPLAAF乗員に長距離飛行の訓練となり気象状況などの変化に対応し、洋上航法や外国機とのやりとりの訓練の他、情報収集効果も期待できる。空中給油は掩護戦闘機が限定的に利用しているがこの場合は制約条件にならない。
作戦上の意味
  1. H-6Kの戦闘行動半径は1,890カイリといわれ、CJ-10あるいはCJ-20空対地巡航ミサイル6発を搭載し、430カイリ、1,080カイリそれぞれを狙える。またはYJ-12対艦ミサイルを搭載し220カイリ先までを戦闘範囲に収める。第一列島線と台湾東で航空優勢を確立した前提ならH-6Kで第二列島線の日本、フィリピン、グアム、パラウさらにオーストラリア北部を攻撃できる。
  2. その場合、Y-20空中給油機とH-6K爆撃機の組み合わせで中国は第二列島線以遠の米軍等を攻撃可能となる。アラスカやハワイがここに該当する。さらに条件次第でロシアや中東さらに紅海までを攻撃範囲におさめるだろう。
  3. さらにPLAAFが多数地点の空中給油態勢によるエアブリッジを確立し空中給油対応の戦闘機のJ-20、J-16、J-31を投入し、PLANの055型Renhai級、052型LuyangIII級ミサイル駆逐艦の援護があれば攻撃範囲委はさらに伸びるだろう。
結論
  1. PLAの空中給油能力整備は着実に進んでいる。Y-20改装給油機は大きな一歩だ。Y-20が完全に実用化されればPLAAFおよびPLANの各種攻撃用機材への給油が可能となり、長距離対地対艦攻撃力が実現する。空中給油対応のH-6K爆撃機の長距離攻撃手段があればPLAは米、同盟国の地上基地に脅威となるほか洋上の打撃群も第二列島線以遠に展開していても脅威を感じるはずだ。その範囲は太平洋軍のみならず中央軍や米欧州軍の範囲にも及ぶかもしれない。中国との対戦を想定する場合にこの脅威は米軍に手ごわい存在になる。■
LCDR David Barr is a career intelligence officer and currently within the Directorate for Intelligence and Information Operations for U.S. Pacific Fleet. His opinions do not represent those of the U.S. Government, Department of Defense or the Department of the Navy.
Image: Reuters

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