今回の総選挙が国内の何とか学園が争点ではなく、日本に期待される国際的な役割を本当に日本が果たす意思があるのかを試されていたことのですね。自分の議席を守ることにきゅうきゅうとして平気で主張を変える人も現れたようですが、日本の安全は国境線ではなく利益線にあることは明らかです。どこまでの視野と構想力を持っているのか政党別に潜在能力を試されたのです。
Japan's Military Provides America with New Strategic Options
日本の軍事力が新しい戦略選択肢を米国に提供する
November 1, 2017
選挙大勝で安倍晋三首相と自民党はいよいよ日本国憲法第九条の改正に向かうと見る専門家が多いが改正は以前ほどの重要度は失ったと見られ、中国、北朝鮮の動きで安倍首相に従前の制約を緩和する作用をもたらし選挙勝利にもつながった。第九条に手をかけなくても日本が手に入れた兵力放射能力は日本の外交政策を支える手段となり、同時に同盟各国にも裨益することで域内安定度が高まっている。米軍規模が望ましい水準以下になっている現状からすれば日本の軍事力強化は日米両国に望ましい効果が生まれる。
憲法第九条をめぐる変遷
今日の日本は世界第七位の軍事支出国で、イージス搭載水上艦、高性能通常型潜水艦、ヘリコプター駆逐艦(米式にいえば両用艦)、F-35があるが日本では軍事力となるとまず憲法に触れるのが通常だ。70年前に制定された第九条が以下定めている。
第二次大戦敗退直後に起草されたこの内容は将来の帝国主義的野望を未然に防ぐ目的があった。当時憲法改正にあたった芦田均は再武装化に含みを持たせる文言を最終案とした。1950年に第九条の解釈を見直し「警察予備隊」創設に動いた。続いて再度の見直しで保安隊となり、三回目の見直しで自衛隊(SDF)が発足した。陸海空部隊は第九条をそのまま解釈すれば憲法違反と言われても仕方がない存在だ。安倍首相は2014年に第四回目の解釈変更を明示、集団的安全保障を限定的ながら導入した。日本の防衛装備の進展を追う向きはこの点を見逃しがちで世界有数の実力を有する自衛隊のこの先を見通せないままだ。
解釈変更の背景には日本を取り巻く安全保障環境の変化とともに日本自身の防衛力整備の加速化がある。周辺国の動きがSDFを伸ばしているともいえる。2005年の防衛大綱では中国を潜在脅威と表現したが、これは1976年以降初めての記述だった。2016年のスクランブル回数は4年で3百パーセント増(851回→1168回)で中国機の動向に呼応したものだ。2013年度防衛白書では中国とともに北朝鮮DPRKの動向にも懸念を表明しとくにDPRKのミサイル核開発を日本自身の安全への脅威としていた。
自衛隊予算の変化そのものがDPRKと中国への対応のあらわれだ。2011年度予算での最優先事項は「効果的な抑止力と対応」とされ最上位優先事項の抑止効果は「情報収集、哨戒、監視の各行動」「遠隔島しょ部での各種状況の対処」「サイバー攻撃への対処」だった。これが2012年度には「近隣海洋部及ぶ上空の安全確保」「遠隔島しょ部への攻撃への対処」「サイバー攻撃への対処」にかわり、2017年度では再び「日本周辺の海域空域の安全」になり、「遠隔島しょ部への攻撃」に対処し同時に弾道ミサイル攻撃へも対処するとした。SDF予算は2012年以降毎年増額されている。こうした変化で大規模かつ近代的戦力を整備する親密な同盟国が米国に生まれている。日本政府の国際面の関心事項は米国と相似し、そのひとつに「安定、透明性、予測可能性を実現する国際環境」の希求がある。
日米合同軍事作戦で生まれる効果とは
このような同盟国があることは国益実現のため展開できる兵力に限界がある米軍には頼りになる。「米国の財政が限定される中で同盟国・協力国に一層多くを求めるようになっている」とデレク・レヴァーソンDerek ReveronがExporting Securityで述べている。あるべき規模より小さいのが米海軍で拡大の可能性はないのに需要は高まるばかりでアジア太平洋でこの傾向が強い。その解決策が海上自衛隊(JMSDF)との共同運用で、艦艇数を増やさずに兵力投射需要を実現できる。両国の方向性が合致すれば効果があがる。米海軍はJSMDF艦船115隻からの恩恵を受ける。
共同作戦運航により兵力投射効果が上がるだけでなく域内抑止効果も引き上がる。両国合同部隊はプレゼンスもさることながら中国やDPRKへの対応力も上がる。たとえばJMSDFの新鋭ヘリコプター駆逐艦、いずもおよびかがの両艦はワスプ級強襲揚陸艦に相当し、日本はF-35Bを未導入だが、両艦は同機運用が可能なはずだ。そこで海兵隊のF-35Bを搭載すれば自衛隊は第九条に従い防衛任務に専念しつつ海兵隊は兵力投射手段が新たに手に入る。抑止効果を考えれば中国あるいはDPRKが攻撃してくればただちに両国の対応を招くことになる。自衛艦を攻撃すれば米海兵隊装備・人員の喪失につながりかねない。他方でF-35に攻撃を仕掛ければJMSDFが海兵隊機材の防御に動く。補完の抑止力シナリオでは米空母の護衛実施をJMSDFに増やす、また自衛艦を米海軍の航行の自由作戦に参加させることがある。いずれにせよ抑止効果と戦力規模が増えるだけでなくDPRKや中国の挑発行為は強力な軍事力を有する日米両国の即座対応につながるリスク要因となる。
日本の軍事力増強のもたらす意味
安倍政権にはSDF増強を続けながら効果的な軍事スタンスを取るのであれば大きな課題が二点残る。まず、日本国民の支持を取り付ける必要がある。憲法解釈の変更や安全保障法案では相当の反対が見られた。安倍政権に批判的な向きからは2014年、2017年つまり再解釈と憲法改正方針の発表から日本国民が大胆な軍事力重視の姿勢は支持していないと見る向きがある。それでも中国とDPRKが一向に行動を収束する気配がないことからここにきて反対姿勢は減ってきたようだ。2014年と2017年を比較するとデモ参加者は減っている。また各種調査では憲法改正の支持は反対を上回っており、ある調査では93パーセントがDPRKを脅威とみなしている。安倍首相が今回選挙に大勝したことで日本国民は大胆な政策を受け入れやすくなっているといえよう。
二番目は日本が軍事行動を増強した際に近隣国が示す反応だ。日韓関係が緊張する可能性があり、韓国が第二次大戦にまでさかのぼる日本の行いを繰り返し抗議していることを考えると日本の軍国化として非難しそうだ。だがここでもDPRKの動向ですべて吹っ飛ぶ可能性はある。安倍首相が2015年に慰安婦問題で正式謝罪したことで日韓両国は相互訪問を再開し、DPRK向け制裁措置強化や日米韓三カ国協力体制の話もある。韓国が中国の抗議の中で米国THAAD装備導入に動いたことで共通基盤づくりにつながるかもしれない。日本はここではシステムパートナーの地位を確立している。日韓間に確かに緊張があるが、DPRKや中国の脅威を両国がともに受けていることから対立どころではないはずだ。
結語
安倍政権がSDFの能力拡大に努めた結果、第九条の再解釈を進める動きと所属党の選挙大勝とともに、日米両国にアジア太平洋地区の安定と抑止効果を軍事行動を通じて引き上げる好機がやってきた。両国の合同戦力は数の上でも抑止効果でも中国やDPRKの行動に単独対応する場合より効果的に対処できる。憲法改正がなくても両国の軍組織は目的を共有する限り中国やDPRKに対応する場合で共同行動の制約はない。合同部隊を節度を持って運用すれば望ましい域内秩序を守りつつ日本の防衛大綱が言う「安定、透明性、予測可能性のある国際環境」の促進維持が可能となるはずだ。■
Jonathan W. Kuntz is an active duty major in the U.S. Air Force, a fighter pilot and student at the U.S. Naval War College. These represent my own views and do not represent the official views of the Department of Defense.
Image: Reuters
日米軍の融合は、所謂ネトウヨ層が訴える独自核武装や弾道弾配備よりも圧倒的に効果が高く、尚且つ実現性の高い方策だと思いますね。日本政府もその方針で動いていると思います。
返信削除また、最近議論の俎上に上るようになった「敵地攻撃能力」、ここでは特に巡航ミサイル(トマホーク)の配備についても、マトモな運用プラットフォームを整備する事から始める必要があり、即効性のある方策ではないですね。
特に海軍においては日米の現場レベルでの融合(あるいは複合化)の効果は計り知れないものがあると考えています。
先進国一国の航空戦力に匹敵するとされる空母打撃群も、実際の作戦ではその能力の多くの部分を自らの身を守るために振り向けなければならないわけで、この役割だけを海自が担当できれば、米海軍は火力投射能力を最大化でき、単純に戦力を足し合わせる以上の効果があるというのが自分の主張で、これは法制の改正でかなり対応できると思います。
しかし本来モノやカネや時間よりも低いはずの法制面の壁が、我が国では最も高く強固であるというのが、なんとももどかしいところです。
目下最大の脅威は北朝鮮であり支那であるというのが一般的な認識でしょうが、本質的には日本の政治こそが今日の状況を作り上げたのだと断罪するのは、くだらないニヒリズムでしょうか。