なるほど中国の目指す空母戦闘力の整備はまだ道途中ということですね。しかし中国の構想は米国のように世界各地を対象に空母戦闘群を送ることではなく、中国が中核的権益と認識する西太平洋の防護にあるはずですから米国並みの巨大空母を整備する必要はないのです。カタパルト方式をものにするのかが注目ですが、何れにせよ建造中の新型艦は技術の国産化のための習作ということでしょうか。
Everything We Know About China's New Aircraft Carrier
October 28, 2016
ゆっくりだが着実に中国初の国産空母が姿を表しつつある。2015年に建造開始した中国二番目の空母は2017年ないし2018年に供用開始するといわれてきたが、2020年近くになる可能性も出てきた。情報の欠如で観測が先行しており、改めて基本的な疑問が表出している。遼寧(CV-16)の例と同様にアナリスト陣を悩ます論点は多い。まず艦名が不詳だ。遼寧では中国ウォッチャーは結局艦名を推定できなかった。今回も同様で「山東」との説、施琅 Shi Lang、鄭和 Zheng Heとの説もあるがとりあえず「CV-17」としておく。
CV-17でわかっている事項をまとめてみた。
外観はどうか
- 大連造船所で建造中のCV-17写真を見ると中国最初の空母と外観が類似しているようだ。艦体の大きさも遼寧都ほぼ同一で、スキージャンプ甲板をもち、動力は通常型だろう。アンドリュー・エリクソンはCV-17はガスあるいはディーゼル/ガス混合タービン方式だと見ている。
- ひとことでいえばCV-17はロシアのアドミラル・クズネツォフの従兄弟といったところだ。中国が一部で設計を変更している可能性があるが中核部分では極めて類似している。基本設計が確立できれば建造を長期間続けることはよくあり、米海軍もニミッツ級空母の建造を40年近く継続している。
建造面
- CV-17は中国の軍艦建造では最大規模で、空母建造が可能な造船所は世界広しといえどもごく少数で、建艦に必要な技能もほっておけば消滅する。その意味でCV-17は中国軍にとって重要な技術発展の手段となり、建造中の知見が次代空母に反映され、設計内容が向上する可能性がある。
- 中国造船業には克服すべき課題が多い。水上艦艇用の原子力推進もそのひとつで、既存推進装備の拡大化もある。(中国のエンジンは信頼性に問題がある) 蒸気カタパルト方式とするのかスキージャンプなのか電磁推進方式を採用するかの選択もある。一部報道ではCV-17がカタパルトも同時に搭載するとしているが、産業力整備の観点から納得できる。
運用想定
- CV-17でも瀋陽J-15戦闘機(Su-27フランカーの派生型J-11が原型)を搭載するだろう。さらにJ-31ステルス戦闘機の搭載も将来的にはあるだろうが、将来の航空戦力の構造は不明だ。姉妹艦同様にCV-17にも大型機発艦の能力はなく、陸上運用機やセンサーの助けを借りて戦闘空域の全体像が把握できるはずだ。
- ということはCV-17を遼寧よりも遠距離に派遣した場合に同艦は戦闘群の中心にはならないことになる。搭載機は航続距離が短く、ペイロードや指揮統制装備が独立行動する派遣部隊のニーズには不足する。アドミラル・クズネツォフと同様に同艦も米海軍ではアメリカ級軽空母の実力に相当し、ニミッツやフォード級の超大型空母と比較にならない。
- 中国ウォッチャーの大半は中国海軍がより大型高性能空母の建造をCV-17のあとに企画していると見る。米海軍空母同様の高性能装備も搭載され、カタパルト(蒸気方式あるいは電磁)、原子力推進も導入されるだろう。そうなるとCV-17は過渡期的存在で、中国造船業が大型艦建造の知見を得るための題材となるのだろう。これはCV-16で航空機運用の知見を得たのの同様である。
- では中国海軍が大型艦建造に向かうとCV-17はどうなるのか。PLANがインドと同じ道筋をたどるとすれば、次代空母が中国の空母戦力の中核となるだろう。CV-17はCV-16とペアを組み、第二陣戦力を構成する。最終的に遼寧の方が老朽化を先に示せば、CV-17には練習艦の任務が与えられるかもしれない。
- その点を念頭に置くとCV-17建造は中国の海洋進出の大きな転機となる。同艦がより大型高性能空母への道を開き、遼寧とともに中国海軍航空戦力の整備を加速するだろう。その意味で同艦の命名が注目される。■
Robert Farley, a frequent contributor to TNI, is author of The Battleship Book. He serves as a Senior Lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky. His work includes military doctrine, national security, and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money and Information Dissemination and The Diplomat.
Image: Liaoning aircraft carrier. Wikimedia Commons/Creative Commons/Simon Yang
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