エアシー・バトルと同じくA2/ADの用語も過去のものとなるのでしょうか。米海軍は一般解よりも特定解を推奨するためにも足手まといになる用語を葬りたいのでしょうね。では中国を対象に構築する戦略をどう名付けるのでしょうか。さらに空軍他にも納得できる名称を低減できるのでしょうか。海軍作戦部長のお手並みに注目ですね。
CNO Richardson: Navy Shelving A2/AD Acronym
By: Sam LaGrone
October 3, 2016 5:31 PM
160929-N-OT964-120 NORFOLK (Sept. 29, 2016) Chief of Naval Operations (CNO) Adm. John Richardson speaking at Naval Station Norfolk, Va. on Sept. 29, 2016. US Navy Photo
WASHINGTON, D.C. — ペンタゴン用語の接近阻止領域拒否が各軍、軍事研究でかれこれ15年にわたり頻繁に使われている。だが海軍作戦部長のジョン・リチャードソン大将から海軍ではこの用語の使用を取りやめるとの発言が出てきた。
9月27日に米海軍協会とCSIS共催の海洋安全保障対話の中で同大将は海軍内ではA2/ADの表現の使用を控えさせると述べた。
「思考を明確かつ明瞭にするために...A2/ADは独り歩きしておりなんでもかんでもどこにでも誰にでも適用される言葉なのでもっといい表現に変える」
「課題は個別具体的で特定のものなので『一つで全部当てはまる』式の用語でミッションを表現すれば混乱を生むだけで、かつ明瞭でもない。代わりに戦略を論じるときは具体論で語り、対応する敵勢力との比較で能力についても論じていきたい。地理条件、作戦概念、技術内容の文脈の範囲内で語るべきだ」
特定の空域、陸地あるいは海域で敵の接近を拒否することは古典的な戦略であるものの、軍事上の概念として一般化した用語は1990年代末から登場し、2000年代初頭から略語として知られるようになった。これは精密兵器が敵側にも導入される中で米軍が直面する新しい脅威の表現だとブライアン・クラーク(予算戦略評価センター)は解説。
A2/ADの知名度が2000年代初頭に上昇したのはペンタゴンが中国の軍事力に注目したのが契機だ。
「長期に渡り中国が長距離精密攻撃能力を整備してきたことで西太平洋の軍事バランスが変動しはじめており、中国が次第に有利になれば中国がいつの日にか米同盟国側に侵略を試みることになりかねない」とアンドリュー・クレピネヴィッチとバリー・D・ワッツ共著のThe Last Warrior: Andrew Marshall and the Shaping of Modern American Defense Strategyにある。
それ以降クラークは「略語として多用され思ったより長く生き残った」という。
リチャードソン大将は誘導兵器や中国本土を取り巻く「赤い弧」での米軍の作戦が不可能となれば大変だと発言。
China’s anti-access area denial defensive layers. Office of Naval Intelligence Image
「確かに新装備が普及してきていますが軍事上の課題はこれまでと本質的に変わりはありません」
「挑戦課題であることに変わりはありませんがA2/ADだけに目を奪われると次の課題を見失いかねません。根本的な変動がそこまで来ており、次の段階の競争競合が始まろうとしています」
その一例として「敵より優勢な地位を保つために何が必要か。世界中いかなる場所の状況がリアルタイムで監視可能でオンデマンドで画像が手に入る時代にです。これが間もなく実現しようとしています」登リチャードソン大将は述べた。
足手まといとなる用語を捨ててペンタゴンの活動を再構築することは決して新しい現象ではない。
昨年初頭に国防長官官房が論争を呼んだエアシー・バトル室の名称を変更している。同室にはA2/AD脅威をペンタゴン横断的に対応する策を考える役割が与えられていた。エアシー・バトルの新名称はグローバルコモンズ・アクセスおよび戦略各軍共用コンセプトJoint Concept for Access and Maneuver in the Global Commons (JAM-GC 発音ジャムジーシー)に改められ、同室は統合参謀本部に吸収されている。■
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