トルコの航空宇宙産業の進展には注目を集めるだけの理由があります。また同国の地政学上の位置づけを考えると、リージョナルパワーとしてトルコがこれからさらに発展剃る可能性があります。日本にとっても無視できない存在のはずです。The War Zone記事がこのたび、初飛行にこぎつけた第5世代新型戦闘機の初飛行の様子を伝えていますのでご紹介します。
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TFカーンは、トルコの野心的な軍事航空宇宙産業で最新かつ最も印象的な存在だ
以前はTF-Xとして知られ、現在はTFカーンKaanとして知られるトルコの次世代戦闘機が、初飛行に成功した。試作機の飛行開始は遅れたが、急成長中のトルコ航空宇宙産業にとって非常に重要なマイルストーンであることに変わりはない。
A screencap from the official video showing the first flight of the TF Kaan. @halukgorgun/via X
トルコ航空宇宙産業のテストパイロット、バルバロス・デミルバシュは、今朝初飛行を行ったカーン試作機のコックピットにいた。追撃機としてトルコ空軍のF-16Dが同行した。最初の報告によると、カーンは13分間飛行し、高度8,000フィート、速度230ノットに達した。初飛行の慣例として、飛行中はランディングギアが展開されていたようで、着陸時にはブレーキシュートが展開された。
初飛行の最初の画像は、新型ジェット機の姿を示している。全体的な大きさと内部の容積が明らかになった。カーンは第5世代戦闘機のラインを持っており、低観測性にある程度は最適化されているが、どの程度ステルス性を持っているかは不明だ。
また、このプロジェクトの目標が、レーダーシグネチャーを低減し、高性能と最新のエイビオニクスなどのシステムを備えた先進的な戦闘機を開発することであったことも忘れてならない。この分野でのトルコの経験を念頭に置けば、多くは達成可能と思われる。一方、F-35含む第5世代戦闘機の特徴であるハイエンドセンサー、そして何よりもデータフュージョンと相互運用性は、トルコの手の届かないところにある可能性が高い。米国製戦闘機に見られるステルスレベルも同様だ。それでも、レーダー・リターンの大幅な低減は、重要な前面半球からのレーダー・リターンを考えれば大歓迎だ。
ざっと見たところ、機体前面は観測可能性が低いことを示唆しているが、これも推測の域を出ない。試験飛行では、コックピット前方の赤外線サーチ&トラック・センサー・システム(IRST)と前方胴体下部の多目的電気光学照準システム(EOTS)と思われるファセット・エンクロージャーが取り外されていた。
A close-up of the front end of the Kaan prototype, as seen in 2023. What appears to be a fixed faceted low-observable enclosure for a dedicated IRST sensor on top of the nose in front of the cockpit, as well as a multi-purpose EOTS underneath the fuselage, have now been temporarily removed. SSB
また、現在は、カーンが標準的な(非ステルス性の)排気ノズルを備えた米国が供給するジェネラル・エレクトリック製F110ターボファンを搭載していることも注目に値する。機体後部は、水平安定板が搭載される目立つ尾翼ブームで占められており、内部容積をさらに拡大しているように見える。
2023年1月、トルコ航空宇宙産業のテメル・コティルCEOは、同年に初飛行が可能だと述べていたが、そのスケジュールは明らかにずれ込み、2023年半ばには初飛行は12月27日に計画されていた。とはいえ、まだ未完成だった昨年3月にロールアウトされたばかりの航空機を、1年足らずで飛行させたことは非常に印象的だ。
The rollout of the Kaan prototype on May 1, 2023, in Ankara, Turkey. Photo by Yavuz Ozden/ dia images via Getty Images
現在、TFカーン(experimentalのXは削除された)として知られる同機は、MMU(Milli Muharip Uçak)(国家戦闘機)の正式名称で知られるプログラムで構想され、2010年に開始された。
それ以来、トルコの戦闘機計画はかなりの激変を遂げている。
2019年のパリ航空ショーでは、TF-Xの実物大モックアップが初めて登場した。これは、トルコがF-35統合打撃戦闘機計画から追い出されることが明らかになった直後のことで、トルコはこのステルス戦闘機を約100機購入する計画で、産業レベルも含めて深く関与していた。トルコがロシア製防空システムS-400の購入計画を拒否した後、ワシントンはこの決定を下した。
F-35計画からの離脱で、F-16戦闘機の追加購入というアンカラの要請も断られ、米トルコ関係における広範な断絶が明らかだ。トルコ政府関係者はアメリカ以外の外国製戦闘機の調達先を探す可能性を示唆していた。ロシアはSu-57を提供し、トルコはユーロファイター・コンソーシアムからのタイフーン購入の承認を得ようとしたが、ドイツにより阻止されたようだ。
だが最近、特にトルコがスウェーデンのNATO加盟を最終的に承認した後、ワシントンとの関係が改善され、バイデン政権はトルコへの新型F-16とアップグレードキットの販売を推進しようとしている。トルコにとってF-35が再び検討対象になる可能性さえ指摘されている。
老朽化したF-4E-2020ターミネーターを置き換える必要があるトルコにとって、新型戦闘機が必要なことは明らかだ。
このような混乱にもかかわらずTF-X計画は推進されているが、試作機の動力源であるF110ターボファンを米国が利用可能にするかどうかについては、繰り返し疑問が投げかけられている。F110はトルコのTUSAS Engine Industries(TEI)がライセンス生産しているが、米国の輸出規制の対象となっている。トルコ政府関係者は、新型戦闘機のエンジンを最終的に国産に切り替えたいと表明しているが、どれほどの時間がかかるかはともかく、どこまで現実的なのかは不明だ。
ロシアのパワープラントやイギリスのロールス・ロイスとのエンジン提携の可能性など、他の外国製エンジンのオプションも議論されている。英国との提携については、技術移転と知的財産権の問題で最初の契約は決裂した。一方、ロシアのオプションは、モスクワのウクライナ侵攻以来、構想から外れているようだ。
将来の有人戦闘機の選択肢を検討するだけでなく、トルコは先進的な戦闘ドローンの開発にも余念がない。
最も注目すべき開発中の無人機には、低視認性飛行翼無人戦闘機(UCAV)のANKA-3や、戦闘機のようなBayraktar Kizilelmaがある。これらのうちの1つまたは両方がKaanの補助として使用される可能性がある一方で、これらが成功した場合、アンカラはよりコストのかかる有人戦闘機を犠牲にして無人機の大規模な編成を選択する可能性もある。
The ANKA-3 made its first flight in December 2023. via X
Ground tests of the Bayraktar Kizilelma. This innovative drone took to the air in December 2022. Baykar Baykar
一方、トルコ政府関係者は、カーンについて楽観的な姿勢を崩していない。カーンは今や同国の軍事航空宇宙の旗艦であるだけでなく、国家全体の誇りでもある。
実際、カーンに続く有人戦闘機の議論もある。トルコは現在、人工知能(AI)がもたらす利点を活用した第6世代戦闘機の開発に取り組んでいるとの報道が最近あった。
過去にも述べたように、第6世代戦闘機を追求することは、カーンに多くの焦点と投資が吸収されている現時点では、途方もない到達点のように思える。
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The Kaan taxis to the runway ahead of its first flight today. @halukgorgun/via X
輸出の可能性もある。カーンは、低視認性と先進的なエイビオニクスを特徴とする中量級戦闘機に加わる。中国のFC-31や韓国のKF-21がここに含まれる。これらの機体が国際的な戦闘機市場を破壊する可能性があるとして注目されている。自慢の戦闘機を輸出するというトルコの野望については、現時点では明確になっていない。
新型戦闘機の実戦投入はトルコにとって非常に大きな問題であることは明らかだが、この先に多くの試験やハードルが待ち受けている。2030年ごろの就役目標まで、カまだ長い道のりがある。
報道によれば、トルコは3機の試作機を完成させ、その後さまざまな改良を加えながら250機の量産機を完成させる計画だという。
カーンが飛行試験を開始した今、その性能と能力、そして将来のトルコ空軍にどう適合するかで、多くが今後判明するはずである。■
Turkey’s Kaan Next-Generation Fighter Has Flown | The War Zone
BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED FEB 21, 2024 12:19 PM EST
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