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米空軍が中国との戦闘を念頭に大幅な組織改編を検討中。

 


組織とは時流の変化に対応し自らも変化していくべきものであり、伝統や過去にしがみついていては対応力を失います。米空軍が大幅な機構改革をめざしているのも、このままでは中国に対抗できないと判断しているからでしょう。この通りに実現するかはわかりませんが、空軍から分離した宇宙軍創設からの流れが続いていることがわかります。こういう動きが非常に苦手な日本でも触発されて自衛隊の(航空自衛隊だけではありません)組織改編を迫られるかもしれません。

空軍は、中国の軍備増強に対応する国防総省の取り組みの一環として、大規模な構造改革に向け最終的な詰めを行っている。

 計画に詳しい関係者6人によると、空軍は今後数週間以内に、主要司令部一部を統合し、戦闘機と爆撃機を単一部隊に統合し、予算と計画部門を強化する発表をするという。

 狙いは、空軍内の官僚機構にメスを入れ、中国に真っ向から対抗することだという。この大改革は、空軍が新型航空機を計画、予算化、設計する方法を再編成するもので、国防予算が微増もしくは比較的横ばいになる予想の時代に、新しい無人機や戦闘機プロジェクトを始動させる可能性が高い。

 フランク・ケンドール空軍長官は、「大国間競争のための再最適化」“Reoptimizing for Great Power Competition”と呼ぶ同計画に9月から取り組んでいる。本誌取材に応じたのは、宇宙軍関係者、議会補佐官3名、空軍顧問2名で、未公表計画について話すために匿名が認められた。全員がこのプロジェクトについて説明を受けている。

 空軍は2月12日、コロラド州で開催される航空宇宙軍協会(AFA)主催の戦争シンポジウムで計画を発表する予定だ。顧問2名によれば、複雑な基地問題が解決され、一部司令部を運営する文民と制服将校の間の緊張が解消されるが、詳細の多くは流動的なままという。

 ケンドール自身は、9月のAFA年次総会で、戦争に備えるため空軍を「再最適化」する空軍即応性の「抜本的」”sweeping”見直しに取り組んでいると語り、再編成計画に言及していた。彼はその時点で、計画は1月までに準備できると述べた。

 空軍の広報担当2人は、変更が進行中であることは認めたものの、詳細について明言を避けた。「戦略的環境における重大かつ危険な変化」のため再編成が必要であり、空軍は「空軍省を再最適化する大規模な取り組み」を開始するに至った、と関係者が提供してくれた声明にある。

 宇宙システム司令部の司令官マイケル・ゲトライン宇宙軍中将Space Force Lt. Gen. Michael Guetleinは、12月13日の会議でのスピーチで、今後の変化を一部予告した。中将は、ケンドールの計画の下で、空軍は「主要なコマンド構造を取り除くつもりだ」と述べた。

 「今日の我々の戦い方にとって、また、我々が空軍について常に考えてきた方法にとって、これがいかに根本的なものかを考えてみてほしい。「私たちが知っているメジャーコム構造から離れることになる。大きな変化になるだろう」。

 ただ数時間のうちに、ゲトラインは最終決定はしていないと後退した。

 しかし、同中将の示した大まかなアウトラインは、議会スタッフおよび空軍アドバイザーが本誌に説明したものと一致している。

 ケンドールの計画は、空軍をよりスリムにするために、何十年にもわたり空軍が構成してきた方法の核心に切り込むものだ。

この構想は、通常は国防総省のスタッフによって行われている文民による計画と予算分析を空軍が強化することを意味する。この変更は、空軍が何を買いたいのか、どのようにそれを買う余裕があるのかを洗練させる効果を生むだろう。同計画に詳しい一人によれば、作業の多くは民間人によって行われているため、空軍内で「民間人と青い制服組との間に大きな緊張関係」が生まれているという。

 「宇宙軍の創設よりはるかに複雑だ」とその人物は付け加えた。


司令部と航空団はこうなる

 空軍の作戦構造は、3つ星と4つ星の将官が運営する主要司令部9個によって構築されており、空軍の任務を機能別または地域別に組織している。例えば、航空機動司令部Air Mobility Commandは空輸と補給を監督し、太平洋空軍は米インド太平洋司令部U.S. Indo-Pacific Commandに部隊を提供する。

 計画の作業バージョンの詳細は確定していないものの、これらの責任の一部を統合することを求めている。

 例えば、ケンドールの計画では、統合能力開発司令部Integrated Capabilities Development Commandの設立を求めており、航空教育訓練司令部に代わって、航空要員開発司令部Airman Development Commandがすべての学校と教育構想を監督することになる。ある議会補佐官によれば、空軍は、空軍戦闘司令部Air Combat Commandが即応性に重点を置くのに対して、飛行士をキャリアにわたって教育する必要から司令部名称を変更するとのことである。新司令部の名称はまだ変わる可能性がある。

 空軍宇宙司令部が宇宙軍の暫定司令部として再指定された2019年12月以来、同軍が主要な司令部構造を変更するのは初めてとなる。

 飛行場レベルでは、現在、航空団は航空機の種類ごとに編成されているが、出回っている計画によれば、これが変わる可能性がある。戦闘機で構成される飛行隊と爆撃機で構成される飛行隊が混在するのではなく、一つの飛行隊で戦闘機、爆撃機、タンカーを保有できるようになる、と議会スタッフの2人とアドバイザーの1人が言っている。

 空軍のスポークスマンは、航空団再編の構想は「上級指導者」の間では議論されていないと述べた。

 構想は、1990年代に空軍がアイダホ州マウンテンホーム空軍基地の第366戦闘航空団を「混合航空団」 “composite wing”

に再編したモデルに戻ることになる。

 混合航空団とは、敵防空網を破壊し、空対空戦闘に参加し、燃料を補給することができる航空機を、すべて単一の指揮系統のもとに飛行させるものだ。別機種のクルーが定期的に訓練することで、調整が容易になり、時間も短縮化できるという考え方だ。

 だが混合航空団は結局、予算問題から戦闘機のみの構成の航空団に戻った。今日の空軍で、異なるタイプの航空機が一堂に会するのは演習のときだけだ。

 ある議会補佐官は、「前回はうまくいかなかったが、新しい航空団ができれば、異なる機種を同じ部隊に統合し、全体像を念頭に置いた作戦要件が作成できる」語った。「爆撃機のプランナーが戦闘機のプランナーと机を並べれば、要件の重複箇所がわかる」。


議会の反応は

 議会や空軍関係者の反応は不透明だ。ケンドールの動きは、議会を通過し実行に移されるまで数年とは言わないまでも、数カ月はかかるだろう。

 中国を視野に入れた軍の再編は初めてではない。2020年、当時のデビッド・バーガー海兵隊司令官は、戦車や伝統的な牽引砲を全廃し、トラック搭載ロケット、ドローン、精密弾薬に切り替えるという急進的な再編成「フォース・デザイン2030」構想を発表した。その目的は、海兵隊をより軽く、より速く、そして太平洋での島嶼戦ができるようにすることだった。

 この計画は、海兵隊で尊敬を集める退役海兵隊将兵たちによって全面的に拒否され、議会の一部も憤慨した。バーガーは痛烈な批判を浴びた。しかし、議会は予算案の採決でバーガー改革を支持し、最終的にバーガーのやり方を正当化し、軍団を作り直した。

 「ケンドールが長い間考えてきたことであることは確かだ。今がそのような変化を起こすのに適切な時期だろう」。この計画に詳しい空軍顧問も同意見で、ここ数十年、空軍で「ここまでの規模の構想はなかった」と付け加えた。■


Air Force preps for mega overhaul with an eye toward China - POLITICO

By PAUL MCLEARY and LEE HUDSON

02/02/2024 12:10 PM EST


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