Russian's next-generation bomber takes shape
09:00 15 Oct 2012Source:
.ロシア空軍創立100周年式典(今年8月)の席上、空軍司令官ヴィクトル・ボンダレフ中将 Lt Gen Victor Bondarevが新型戦略爆撃機PAK-DAの開発が始まっていると明らかにした。この名称はロシア語で「未来型長距離航空機」を意味し、現有ツボレフTu-160、Tu-95MS、Tu-22M3で構成されるロシアの戦略爆撃部隊の後継機種となる見込みだ。
【政府は全面支援】.同 中将は直近のウラジミール・プーチン大統領との会談内容を紹介し、空軍が調達希望を優先採択してもらえる立場だと確認できたことに満足しているという。大 統領から空軍は希望をなんでも言えば手に入ること、PAK-DAプロジェクトでも大統領が支援することの確約を得ている。「国防省はPAK-DA関連の要 求内容すべてで作業中で、内容が固まれば産業界は同機の技術像を練り上げるだろう。」(ボンダレフ中将) ロシアは「戦略級無人機UAVs」も開発中で、 「第六世代機」のひとつにするといい、ボンダレフによると「知能を埋め込んだ」無人機が第六世代の中心となるという。
【2020年代に登場か】 アナトリ・ジカレフ中将Lt Gen Anatoly Zhikharev(長距離航空軍司令官)はPAK-DAの戦闘テストは2022年開始だという。初期設計は完成しており、納品済みでロシア航空産業は現在、同機の開発に取り組んでいるところだ。
まだ新型爆撃機関連の情報はわずかしかない。超音速機なのか亜音速機なのか、有人機なのか無人機なのかも不明だ。ただロシアがこのような機体開発に取り組 んでいるのは驚くべきことではない。これまでの歴史をひもとくと最悪の時でさえツボレフ設計局は新しい設計概念や技術の研究を続けていたし、その成果が同 社展示館に行くと極超音速攻撃機、宇宙機、Tu-500大型無人攻撃機などの例で見ることができる。これらはTu-160(ブラジャックジャック)爆撃機 の生産が始まった後に開発されたものだ。
その他ロシアの科学研究機関としてツアギTsAGI (中央航空流体力学研究所)がPAK-DA設計に技術協力しており、ツアギでは大規模な風洞試験をSova将来型極超音速機(マッハ5飛行可能)で行い、 ロシア以外にもヨーロッパが今後は衣鉢を狙う超音速ビジネスジェット等でも協力をとくにソニックブーム抑制と抗力の削減に重点を置いて行っている。
.【PAK-DAの開発はいつ始まったのか】ロ シア国内報道を総合するとPAK-DA開発は2010年早々に始まっている。初期研究は2007年にさかのぼり、ロシア空軍がツポレフに将来の長距離爆撃 機の想定で技術要求書を手渡したことがきっかけらしい。開発予算は2008年国防予算に計上されており、2009年に国防省からツボレフへ三ヵ年の研究開 発契約が交付され、概念研究調査が開始され、同機の空力特性とシステム構造の具体化をめざした。
そして本年8月に空軍はPAK-DAの初期設計案を承認し、産業界は同設計を「各種戦術上および技術上の要求内容」にあわせ調整できるようになった。技術 実証機の金属素材削り出し、または試作機の開発は2015年の予想で、量産化は2020年ごろだろう。最初の飛行隊編成は2025年より早まるかもしれな い。ただし、業界筋によると新型爆撃機の生産は現実的には2025年以降で開発サイクルには最低15年から20年必要という。
.PAK- DのA概念設計案も性能達成目標水準も未公表のまま。空軍はまだ性能要求最終案を出していないのかもしれない。ただ明らかにPAK-DAには核、非核両面 で精密誘導兵器を運用した作戦が期待されている。ロシア国防相がいみじくも言うように新次元の戦闘能力による新しい抑止力になることが期待される。
【搭載兵器開発にも要注目】 新型爆撃機には複合材など新素材もつかわれステルス機として設計される。搭載兵器は同機専用に新設計開発されるだろう。
ロ シア国内で議論されているのが「第二世代極音速兵器」の開発で、これが計画中の新型爆撃機と関連していると思われる。第一世代は現有のオニックスOnix 地上攻撃ミサイルとそのインド版ブラモスBrahMos PJ-10を指す。ただ、この種の兵器の性格上、燃料消費が激しく、抗力がどうしても高くなる。
【現在運用中の戦略爆撃機の現状】 2012年現在、ロシア空軍は実戦配備の大陸間爆撃機を66機運用中で、これ以外に補修中、改装中、訓練用の機材がある。66機はTu-160が11機、 Tu-95MSが55機で、核爆弾200発を配備している。Tu-95MSは近代化改装中で新型長距離亜音速巡航ミサイルの搭載を可能とする。機材は大部 分が80年代90年代製造で飛行時間は比較的少ない。したがって各機が2030年、2040年代にも稼動している可能性がある。そうなるとPAK-DAが 時間通りに運用可能となる段階でTu-95MSやTu-160のミッションとちがう役割を担うことになるかもしれない。ロシア空軍としては探知されにくい 爆撃機により敵領土内深く進攻し、新鋭防空網を突破制圧するミッションを期待しているのだろう。
ロシアとアメリカの戦略爆撃機では類似性が見られる。B-52HとTu-95MSが大型機で巡航ミサイル多数を搭載し、スタンドオフ攻撃を想定している。 B-2とTu-160は敵防空網を突破する作戦を想定。B-1B とTu-22M3は可変翼超音速爆撃機だ。ただ機材の戦闘投入では相当の変化があり、今日では戦略的よりも戦術的な運用が多くなっている。
【LRS-Bとは異なる機体になるのか】 米 国は長距離打撃爆撃機Long-Range Strike-Bomber (LRS-B)開発に取り組んでいるが、ロシアはそのコピーはしないだろう。むしろ、ロシアはより安価だが戦略抑止力として十分な機能を実現する可能性が 高い。PAK-DA開発予算は国防省内の反対派や他省庁の批判から守られているものの、弾道ミサイル原潜と陸上配備大陸間弾道弾でより効果的で経済的な抑 止手段になり、PAK-DAは不要との批判は根強い。原油価格水準が高止まりであれば、石油収入によりPAK-DAはじめ高額の国防装備調達をまかなえる だろうが、軍・産業界ともに高い期待を実現できるかが課題だ。
【PAK-FAは開発難航】. そのほかの主要航空機開発事業にPAK-FA第五世代戦闘機があるが、技術上の問題を解決していない。発動機と搭載システムに問題があり、サトゥルン 117エンジンが同機用に開発されたが飛行中にフレームアウトする事故が発生している。空軍は改良型129エンジンの開発をメーカーにすでに求めており、 結果がよいとPAK-DAにも搭載の可能性が開ける。
【エンジンが問題】.いずれにせよ発動機が大きな課題で、運用中の爆撃機もクズネツォフ製エンジンの信頼性の低さに悩まされており、その他部品不足もあり稼働率は50-60 %に低迷している。
. ロシアはTu-160のエンジン再生産をしようとしており、改良版NK-32Mエンジンは稼働率が向上し、燃費でも改善があるという。ただ生産型エンジン は2016年以降に装備となる見込みだ。一方で、NK-12ターボプロップエンジンの生産再開は難航しており、Tu-95の発動機である同エンジンの入手 に困難があるため、かわりにイヴェチェンコ・プログレスD-27エンジン(アントノフAn-70用に開発)に換装する案が検討されている。
. 電子装備、エイビオニクスでも状況は同様である。Tu-160機内のシステム各種は故障が多く、20年かけてチップ、コンピュータ基板を交換する作業が続 いてきた。最後の近代化改修が完了すれば各機の耐用年数が延長される。Tu-160の場合は30年になろう。さらに、同型のうち10機を選び第二期近代化 改修が2016年から始まる。また、30機のTu-22Mがこれから8年間で生産されるが、さらに30機をロシア空軍が発注すると思われる。
【戦略爆撃機も地域紛争に投入するロシア運用思想】 グルジアが北オセチア紛争でTu-22M一機を2008年に撃墜している。ロシア空軍が核運用可能な戦略爆撃機を喪失した初の事例となっている。とくにこの事件でロシア軍が地域紛争にも戦略級機材を投入することが明らかになった。
【長距離航空作戦能力は着実に復活中】.ロシア国防省の公式刊行物である「赤い星」によるとTu-160各機の指揮官クラスの年間飛行時間は100時間程度、Tu-95乗員は200時間、Tu-22Mは300時間だという。こういった数字はロシア長距離航空の飛行時間が着実に伸びていることを示している。
ロシア空軍が老朽化進むツポレフ爆撃機各機の運用を何とか維持するのに懸命な状況にあることは疑いない。一方で、ロシア軍産複合体が現行の各機の性能を上回る新型機を必要な機数生産できるのかはまだ不明だ。■
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