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米空軍 次世代爆弾等の開発状況展望

USAF Focuses On Next-Gen Hard-Target Killer


By Amy Butler
 
aviationweek.com September 17, 2012

暗 い予算環境にも関わらず米空軍は今も新世代の空中発射兵器取得の希望を捨てていない。この新装備はステルス機F-22(配備済み)およびF- 35(2010年代末より配備開始か)の優位性を利用するもの。ただし空軍は必要装備の優先順位付けを迫られており、喫緊の課題である地下深くの堅固な目 標を攻撃できる装備を優先する見込みだ。このような目標は核兵器関連あるいは指揮統制施設として北朝鮮やイランを想定したもの。
  1. 同 時に空軍は長距離スタンドオフ兵器Long-Range Standoff Weaponとして現在配備中の空中発射巡航ミサイルAir-Launched Cruise Missiles (ALCMs) を更改する装備のコンセプトを模索中。年末までに代替策の分析を終え、2014年度事業に乗せる予定だ。
  2. た だし、AIM-120高性能中距離空対空ミサイルAdvanced Medium-Range Air-to-Air Missile (Amraam) に防空体制制圧ミッションを組み合わせる長年の目標は、一度は統合両用航空優勢ミサイルまたは次世代ミサイルとの呼称もあったが、現在は保留扱いと なっている。
  3. より高性能の兵器を求める背景には空軍が過去に下した決定による制約がある。全部の戦闘機をステルス機にすると言う方針だ。ロッキード・マーティンのF- 22とゆくゆくはF-35により敵領空内でのステルスミッションの実施で柔軟度が生まれるものの、その代償は高価なものになる。ステルス機の機内兵装庫に はわずか二箇所の取り付け位置があるだけだ。そこで空軍は兵装メーカー各社に技術成熟化で兵器サイズの縮小と柔軟性の両立を求めてる。爆発効果はそのままで弾頭サイズを半分にするためには爆発物の高度化が必要とされるようになっている。あわせて長年の要望である爆発効果の制御ならびに爆破破片物による攻撃 効果を実現できる信管の実現も期待されるところだ。
  4. 航空戦闘軍団Air Combat Command (ACC) は将来に向けて強固目標用弾薬Hard Target Munition (HTM)開発の検討中。HTMは従来型戦闘機でも搭載できる。「次世代弾薬は目標の種類や状況に応じより柔軟な運用が求められます。また、威力はそのま まで小型化も必要ですね」(ACC性能諸元担当部長サム・ハイノート大佐Col. Sam Hinote, director of requirements at ACC) 「これがあれば第五世代戦闘機の対応も柔軟度が高くなります」
  5. 空軍はステルス兵器となる1,000ポンド級の貫通爆弾の配備をめざしており、早ければ2014年に開発が始まるだろうとケネス・マーチャント少将Maj. Gen. Kenneth Merchant(空軍兵器開発担当最高責任者)は語る。空軍はまだこの新兵器の性能諸元を絞りきっていないが、ロケット噴射による加速性を加えたもの、 動力をつけず5,000ポンドに増やしたものも構想されている。1,000ポンド版の目標は小型化しながら2,000ポンドBLU-109爆弾の威力を発 揮することだ。
  6. 空軍は今もBLU-109(湾岸戦争時に強固目標攻撃に投入された)を運用しているが、スマート信管への移行をめざしており、地中の階層を突破しながら地下での爆発が可能になる。このために爆弾本体の外素材にはコンクリートなどの建材を突破する際に耐久性があることが求められる。
  7. アライアントテックシステムズAlliant Techsystems (ATK)が強化目標用空洞感知信管Hard-Target Void-Sensing Fuzeを開発中で実証実験を2013年度に開始する予定。生産は2014年度年央から開始される。
  8. 空洞感知信管は「聖杯」のような信管だとマーチャントは言う。「信管と強化目標は相性が悪い」のは高速でコンクリートを突破する際の水平方向垂直方向の荷重が原因だ。
  9. 空 軍は大型貫通爆弾Massive Ordnance Penetrator (MOP)を開発済みで配備中だ。総重量30,000ポンドで爆発物5,000ポンドを搭載したMOPは通常型では米軍最大の弾薬兵器であり、B-52お よびB-2で運用する。ただしMOPには地下の空洞の感知能力はない。
  10. MOP を念頭に置きながら新型爆弾では猛烈な衝撃に耐えられる電子回路を搭載することで性能を向上するとマーチャント少将は説明する。またMOPでも改修がおこ なわれ、爆発の状況を指揮官に送信する能力が加えられているという。今後の兵器では自己評価機能が加わるとハイノート大佐は言う。
  11. 一 方で空軍は安全装置と爆発活性化装置を電子化して信管にとり込む。これにより従来の機械部品の低信頼度を克服できる。マーチャントによると予算は確保済み で空軍はFMU-152A/B 共用プログラム可能信管Joint Programmable Fuzeにこの機能を与えるという。同信管はすでに98%以上の信頼度を実証済みで、現在使用中のFMU-139信管を代替する。マーチャント少将は50 ないし75百万ドルの投資で二年以内に電子安全装置・起爆装置は実用化するという。
  12. ただし信管製造の産業基盤は不安定で、生産そのものの性質と低利益性が原因だ。製造メーカーの中にはL-3コミュニケーションズL-3 Communications、ATKやカマンKamanがあるが注文は携帯電話用など民生用がはるかに多いのが現状。そこでペンタゴンは現在利用可能な電子部品の性能向上に苦労している。メーカー各社にとっては旧式な国防総省用部品の製造は発注量がよほど多くなければ利益を出しにくい事業になっている。
  13. そ こでマーチャント少将は2014年度予算要求で予算確保を目指し、F-35が稼働開始する時点で信管の信頼性が問題になっていないよう工夫するという。 F-35がステルス飛行をする際に機内に搭載できる兵装は2から8基でミッション中に不発弾となった場合の影響は大きいからだ。
  14. 現 在利用可能な兵器体系は概ね良好な組み合わせだとマーチャント少将は評価する。その中には一度はトラブル続きだったロッキード・マーティンの共用空対地ス タンドオフミサイルJoint-Air-to-Surface Standoff Missile(Jassm)(ステルス巡航ミサイル)、ボーイングの250ポンド小口径爆弾、各種の共用直接攻撃弾 ( Joint Direct Attack Munition (JDAM) )、レイセオンのAIM-9X短距離空対空ミサイルがある。このうちJassmは配備中で15年間の使用期間となる見込み。JDAMとSDBは20年間と なる予想。BRU-61爆弾取り付け装置でSDB4基をF-22のJDAM取り付け位置で搭載できる。これでF-22が対応できる地上目標の数が4倍にな る。
  15. こ れと対照的にレイセオンのAIM-120DAmrramには問題が生じている。総額20億ドルで数年間の開発が行われ運動学ソフトウェア、データリンク新 型、高性能電子防衛機能を各国で利用中のAIM-120C7に取り組もうとする中、米国専用のD型で日程が計画より遅れている。
  16. ATK製のロケットモーターが欠陥品で空軍は同社の生産を中止させレイセオン宛の621百万ドルの支払いを停止しようとしている。問題になっているのは設計上限界点である165度での発射であることをレイセオンが認めている。
  17. マーチャント少将もATK社内の推進剤製造工程、組立工程で改善策が実施に移されていると認める。また、次の生産バッチにも改良点が盛り込まれるという。一方 で空軍はノルウェーのナンモNammoを第二調達先にする作業中。ナンモは限定生産で同社製の推進剤と炸裂筒をATK製ケーシングに入れ生産中。同社は ゆくゆくは自社製ケーシングに置き換える。
  18. ただATK、ナンモ両社の仕様は本生産前に検定され認証を受ける必要がある。ATK製品の検定結果が今月に発表の見込みだ。
  19. AmraamD ではもうひとつソフトウェアとハードウェアの統合でも問題があり、戦闘機ではミサイルを「再起動」しないと発射できない場合があった。比較検証したところ F-15のほうがF/A-18より発射が容易であることがわかり、根本原因を探ったことで解決策が見つかったとマーチャント少将は解説する。
  20. Amraam Dは運用テストを6月から開始しており、配備は2014年度開始の予定。支払いは十分な数の完全版が納入され始める時点で再開するという。
  21. マーチャント少将が指揮する航空兵器センターはレイセオンの小口径爆弾IIの開発状況も詳細に追っており、250ポンドの同爆弾はトライモードのシーカーにより移動陸上目標を昼夜天候を問わず破壊する。
  22. ただし2013年度予算を巡る不確実さには「神経が参る」とマーチャント少将は漏らす。議会では2013年度予算の通過が不発に終わっており、政府は 2012年度に承認された予算規模での運営を迫られよう。国防装備の生産は「予算以内の購入」が原則であるので、マーチャント少将は調達規模を増やすことができないという。これでは大量購入の経済効果がなくなり、単価はあがることになる。■


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