B-52とならび長寿のTu-95ですが、比較的最近にも新規製造があった点が異なります。B-52も当初はターボプロップ搭載案があったようですが、ジェットかターボプロップかで比較検討されていたのでしょうね。長距離スタンドオフ攻撃はやっかいな作戦になりそうですが、数千キロというのはロシア流の誇張では。航法衛星や支援装備がなければ無用の長物ですね。
Tu-95はロシア空軍で最古参の機体である。プロペラ反転式ターボプロップエンジンを搭載し、現役爆撃機として世界唯一のプロペラ推進機だ。退役の兆候もなく、ロシア空軍は逆にTu-95MSM近代化改修を実施し性能を向上させている。
ロシア戦略爆撃機部隊の中心がTu-95MSである。空対地ミサイル新型の搭載を狙った同型はこれまでの流れを継承している。ソ連時代から空対地ミサイル実験は1950年代に始まり、Tu-95Kが生まれた。冷戦時もこの流れは続き、Tu-95MSが1981年に登場した。同型はTu-95原型を近代化し、機関銃やレーダーに至るまで当初の装備を廃止した。ねらいは長距離から空対地ミサイルを発射することだった。旧型機材では近代化に耐えられないため、生産ラインが1980年に再開され新造のTu-95MSが生まれた。このため供用中の同機は一部NATO機材より機齢が若い。
Tu-95MSの主要兵装はKh-55空中発射式巡航ミサイル(ALCM)で、亜音速で2,500キロの飛翔距離がある。現在は核弾頭付きKh-55SMとして、射程が3,500キロに伸びた。その通常型はKh-555で2,000キロ先を攻撃できる。Kh-555はシリア戦線でTu-95MSから発射された。通常のTu-95MS6は機内に6発搭載する他、主翼下パイロンに最大10発を運用することで16発の発射が可能。2018年版の核兵器ノートブック(原子力科学者年報編)によればロシア空軍はTu-95MS6を25機、Tu-95MS16を30機運用中だ。ただしTu-95MSM近代化改修の対象機数の言及がなく、「おそらく44機」としている。
Tu-95MSM近代化改修の狙いはKh-101、Kh-102巡航ミサイル運用能力をTu-95MSに付与することにある。全長が伸びたKh-10(X)はTu-95MSの機内回転式弾倉に入らない。このためTu-95MSMではパイロン4つを追加し、同ミサイル4発を搭載する。パイロンは新型ミサイル、Kh-55ミサイル双方に対応する。Kh-101、Kh-102は有効射程が5,000キロまで伸び、レーダー探知されにくくなり性能が相当向上している。Kh-101もシリアで実戦投入済みで、2015年11月17日にTu-160が発射しており、その後も使用が続いている。
Tu-95MSMは機体構造の改良により主翼が強化されたことで新型ミサイル搭載が可能となった。その他筋によればエンジン、プロペラの改良も含まれ、飛行性能が向上しているという。Tu-95MSのエンジンは生産が終了しており、今後は予備部品と整備の確保が課題だ。新型レーダーとデータ表示システムも近代化された。
Tu-95MSMで興味深い点はロシア戦略爆撃部隊の規模縮小の一端がわかる点だ。前記年報やロシア筋によればMSM改修はTu-95MS全機が対象ではない。Tu-160生産が細々と進む中で、ロシア爆撃機部隊は新型PAK-DA爆撃機が登場するまで規模縮小となる。並行して陸上配備ICBMの重視が進んでおり、ICBMサイロにはアクティブ防御装備が導入されていることに注意が必要だ。MSM改修では通常兵器運用能力の向上もねらい、部隊は運用訓練を重ねている。Kh-101がスタンドオフ性能や精密攻撃能力で大きな兵力増強手段となる。■
Charlie Gao studied political and computer science at Grinnell College and is a frequent commentator on defense and national-security issues.
Russia Is Upgrading Its Old, Propeller-Driven Tu-95 Bombers
Why?
by Charlie Gao
January 4, 2020 Topic: Security Region: Europe Blog Brand: The Buzz Tags: RussiaMoscowPutinMilitaryTechnologyBomberAir Force
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