軍用装備では実績が物を言うので、日本製品はそれだけ不利なのですが、それとは別に前から指摘しているように政府が乗り出せば良い、という殿様商売では成約は無理でしょう。経験を金で買う、アプローチで民間のたくましい力を政府が積極的に使う意思がないのなら、紙の上の話で終わってしまいますね。またオーストラリア潜水艦案件で実は民間企業は不成約に安堵したともいわれていますが、防衛省需要を超える規模の生産基盤を整備しても民間企業に十分利益が生まれる構造にしないとお上頼みの体質は変わりませんね。ただしold企業はそんな簡単に変容しないでしょう。Dual technologyの時代ですので、意外なところから新しい防衛産業企業が生まれるかもしれませんね。
日本政府が武器輸出制限を撤廃し5年たったが、日本の防衛産業は輸出で大きな成果を上げていない。日本で初めて開催された総合防衛産業展示会 DSEI Japan のカンファレンスで関係者、専門家が指摘した。
防衛装備庁(ATLA)の防衛技監外園博一は「安全保障環境が急速に変化中」と中国がクロスドメイン技術を導入し、日本も対応を迫られている状況を指摘。防衛省は陸海空に加えサイバー、電磁スペクトラム、宇宙空間を次の武力衝突場面と想定している。
防衛装備庁の研究開発は優先分野を6つと外園は紹介。サイバー、水中技術、電子戦、極超音速、広域情報収集監視偵察、ネットワーク運用だ。
目指すのは自衛隊を「マルチドメイン防衛部隊」に変え、日米同盟の強化で抑止効果を高めて外部脅威に対応することだ。防衛研究開発活動では従来の機材中心から「機能志向」に変える必要があると指摘した。
日本の高度技術では素材科学やロボット工学が有名で大部分は民生分野に源を発している。外園は新技術を軍事転用する必要があるとも指摘。
中国は軍事力を急速に拡充中だ。日本がペースに合わせられないと、日本の優位性が失われることになりかねない。「最重要なのは各技術を防衛装備に統合していくこと」(外園)で、産官学に加え同盟国交えた協力を高める必要があるという。
展示会には米、欧州、中東、豪州の企業多数が参加し、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、コリンズアエロスペース、レオナルドDRS、ジェネラルアトミックス・エアロノーティカル、レイセオンといった米国企業が出展していた
だが日本企業は自社製品の米国内販路開拓に文化の壁に直面し、米企業も自衛隊向け装備の販売で壁にぶつかっている。
「日本には少規模ながらハイテク航空宇宙関連の商機がありますが、日本はこれに慣れていないようです」とレイセオン・ジャパン社長のロバート・モリッセイが述べる。レイセオンは日本側ベンダー企業60社を招き、各社技術が有益か判断する場を設けた。「単独サプライヤーより、サプライヤーは多いほどいいのです。そこで日本の防衛産業に積極的に働きかけているところです」という。
日本には民生用途で開発され軍事装備に転用可能な技術が多数ある。ロボット工学以外に、機械学習、マシンビジョン、人工知能、素材工学、バッテリーで知見が豊かだ。極超音速機に活用され、5Gネットワークでもノウハウが活かせるはずと専門家は見ている。
GARアソシエイツのグレッグ・ルビンステインは米政府内、防衛産業、コンサルタントの経験を1974年から積んできた。最近の米国と日本の共同開発の成果にスタンダードミサイル3(SM-3)があり、両国政府とレイセオン、三菱重工による協力の優れた例だという。
「以前も米日共同案件はありましたが、相互の要求内容をもとに研究を進め共同開発に至った例として初です。現在は生産に入っており、調達サイクルが動いています」 同事業は先行事例として重要で、協力しながらの調達で大きな一歩となったと指摘する。
こじれた場面もあったとモリッセイは述べる。「政府と民間で意思疎通がうまくいかず、予算確保が危うくなりました。だが、最終的に成功に至った。次回の共同案件では双方の距離は縮まるでしょう」
今後は企業間の契約も必要とモリッセイは見る。日本の技術で問題となるのが価格と指摘する。顧客が日本の防衛当局のみのため少数調達・少量生産となり高価格を生む。だがそれ以外に競争関係が不在だ。「単一調達先で原価上乗せ方式の契約が日本で普通のようだ」「監督官がナット類の重量、長さ、厚みを測定する光景を目にしたことがある」といい、表面的な検査だが、要求水準を超えた部分まで検査されるため、「高コストになってしまう」のだという。
防衛省は固定価格契約を多数交付すべきという。「各社に利益を生む機会を与えるべきです。防衛案件で利益率が6-7%では足りません」
SRC副社長で国際事業を担当するジム・ダニエルズは日本市場で35年の経験がある。同社はレーダーや電子戦技術が専門で、事業は米国が中心だったが、4年前から国際進出を模索し始めた。アジア太平洋に注目している。
SRCではアジア太平洋を南北に分け、進出先を2つとしている。南部ではシンガポールで、東南アジアの技術ハブであり、最良の製品を調達できる。北部では日本に注目している。
「日本でSRCの知名度は低いです。そこで展示会で当社の紹介をめざしています」といい、日本で提携先を模索し、米国へ技術移転を実現したいという。
文化と言語の壁のため、各社は日本側提携先の案内で市場参入したいとする。提携先も複数とする。
「だれ聞いたことがない日本企業が防衛産業を話題にしています。市場はこれから開くところです。日本政府も市場拡大に動いており、各社が参入を目指しています」
米国にとって日本は最長の実績をもち、最も忠実な同盟国だと指摘する。製造業は「強力」だが経済性が高い製造が課題という。「設計を製造に移し実現させる能力には魅力を感じる」という。
自衛隊も米軍同様に国内企業からの調達を好む傾向があるが、「市場は今や海外企業にも開かれています」とダニエルズは言う。
「同盟国にはミッションの重要点や技術を共用してもらいたいものです」とし、「設計、開発、製造、サポート、運用の各面つまりcon-opsチェーン全体で協力が深まれば、それだけ双方に良い結果が生まれます」
日本企業の米国市場参入が実現すればハードルが低くなるとルビンステインは指摘し、第一段階は認知度を上げることだという。日本の大手企業でワシントンDCに事務所を置く例は多いが、駐在員数名が政策の動向を追っているだけで不十分と指摘する。
「日本企業も米国でのプレイヤーと認知してもらわないといけませんね」とし、事務所を強化して米国事情に詳しい人材を加え、自社製品を担当部局にプレゼンし、研究開発機関に売り込む必要があるとする。
一つ成功事例がある。日本のリチウムイオン電池メーカーで米国製を上回る性能で軍民両用に使える製品だ。同社は米国事務所を開設し、コンサルタントを雇いマーケティングを開始した。数年かかったが、米陸軍の関心を集めることに成功し、その後海軍も続いた。
「はじめは大変ですが、数年間粘り強く活動し、米側の調達担当者や政府関係者の関心を勝ち取りました。バッテリーの優秀さが理解され、米国防調達で優位性を発揮しています」(ルビンステイン)
米国市場参入を目指す日本企業には米企業とウェポンシステム部品を共同研究プロジェクトとして小さく始めたらよいという。
日本政府も防衛調達ミッションを派遣し日本企業の存在感を海外で強めるべきと指摘する。ミッションは官民合同でもよいが、現地で専門家を使うのがよいとルビンステインは述べている。
専門家は「現地ルールを熟知しており、問題が発生しても誰に頼ったらよいかがわかっており、解決が早くなるだけでなく意思疎通も上手くいくはずです」という。■
この記事は以下を参考にしました。
U.S.-Japan Defense Tech Cooperation Stymied by Cultural Hurdles
1/17/2020
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