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英空母の米国貸し出し構想は実現可能なのか

国防予算の先細り傾向が続けば、当然ながら新しい運用方法をひねり出す必要があります。仏独やNATOで高価な装備の共有が現実に始まっており、超大国以外の「普通の」一国で全て保有し運用することに限界が生まれつつあるのかもしれません。▶以前、ディーゼル電気推進方式攻撃型潜水艦を日米共同運用する構想を考えたことがありますが、空母で艦の貸し借りは可能でしょうか▶そもそも英国が空母二隻を建造してしまったことで全体戦力構造にしわ寄せが生まれている気がするのですが。▶また強襲揚陸艦がこれからの「空母」の標準になりそうですね。日本ではいずも級は「習作」の位置づけになると見ていますが、そうなると次の「本格的」空母に期待が集まりそうです。


国で空母一隻を米国にリースする案が検討に入ったと英メディアが伝えている。
かつては空母運用で世界をリードしていた英国だが、2016年以来空母がない状態になっていた。だがHMSクイーン・エリザベスが就役し、2021年に戦力化され、HMSプリンスオブウェールズも加わる。80億ドルを投じた各艦は最大36機のF-35Bを搭載可能で排水量は65千トンと米国最新鋭のフォード級原子力空母の100千トンに及ばないが、自動化が進んでいる。英国空母の乗組員は800名ほどでフォード級の2千600名より少ない。ただしここには航空部隊要員は含まない。
英海軍は新型空母を米空母部隊に統合しようと懸命になっている。「英米混合空母打撃群の運用構想は実証済み」と海軍幕僚長トニー・ラダキン大将がHMSクイーン・エリザベスの米東海岸来訪時に語っている。「構想を進めて、部隊の交換運用まで持っていきたい」
だが装備が異なるだけでなく、運用方針や伝統も異なる米海軍で英国空母は運用可能なのか。「米海軍で他国海軍から戦闘艦艇をリース運用した実績があるか。補給維持活動がまったく違う国同士だと艦艇の維持だけで課題だ」と話すのはシンクタンクRAND Corp.の海軍専門家ブラッドレイ・マーティンだ。「空母運用の支援・維持は米英で共通でも、艦艇は別だ。乗組員の配置そのものがちがう。米国のNCA(国家統帥権)で英国民に下令し危険な状況に対応させられるだろうか。リース案は実現するとは思えないし、米乗組員が英艦を運用するのも大変だ」
「米海軍の視点ではこの構想はまともに見えない」とワシントンに本拠を置くシンクタンク戦略予算評価センターの海軍専門家ブライアン・クラークは述べる。「米国には大型空母10隻以外に10隻の空母つまりLHA、LHD強襲揚陸艦がある。後者はクィーンエリザベス級よりわずかに小さい。米海軍ではLHA/LHDを対テロ作戦で中東投入が増えており、大型CVN(原子力空母)の負担を減らしつつF-35Bに対応させている。ただ米海軍では艦艇の維持費が課題で、別の艦をリースしてまで使える予算を減らす選択は考えにくい」
リースすれば英海軍に運用可能な空母がなくなる。「当初は英海軍は空母一隻を常時運用し、乗組員も一組で艦を交代する構想だった。一隻が補修に入ればもう一隻を配置し乗組員がやってくるはずだった。この方法では空母二隻分の運用維持経費は節約できないものの人員面で節減効果が生まれる。英海軍では人件費が大きな負担項目となっている。そこで空母を米海軍に貸し出せば、経費を賄う収入が生まれるものの英海軍の空母運用構想は実施不可能となり、運用可能な空母がない状態が一年続く状況が生まれる」(クラーク)
英米で艦艇貸し出しに前例がある。第二次大戦中に英国はレンド・リース方式で多額の援助をうけ、その中には米駆逐艦50隻の英海軍への貸与もあり、見返りに英海外領土に米海軍基地が設けられた。駆逐艦は旧式でナチUボート対応には非力だったが、単独でヒトラーに対抗していた1940年の英国には救いの神に写っただろう。
クラークは英空母に米海軍・海兵隊の機材・乗員が乗り込む方式を想定した。「英海軍は運用人員を削減し、米側も自国艦艇の整備中でも人員を有効活用し相互運用能力が向上する効果も期待できる」という。
マーティンも英空母リース案に一定のメリットはあるものの、そんなに大きなメリットではないという。「米側から見れば英空母の性能はCVNより劣るが、シナリオによっては有効活用できるだろう。たしかにリースのほうが新規建造より安価だ。だがそのまま実施が継続できるとは思えない」■


この記事は以下を参考に作成しました。

America Needs More Aircraft Carriers, And Britain's Royal Navy Has An Idea

Is leasing an option?

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